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第6話:「裁かれる側」
《The End Talk – 最終ステージ 配信会場》
「では次のスピーカー、小林悠斗さん、登壇をお願いします。」
アナウンスとともに、ステージに静かに現れたのは、
整ったスーツ姿の男――小林悠斗だった。
会場にはざわめきが走った。
「……あいつが、悠斗?」
「蒼の“親友”って言ってた男だろ?」
「どんな爆弾が来るんだ……」
ステージ脇で見つめる蒼の目は、怒りとも悲しみとも言えない、複雑な色を宿していた。
悠斗はマイクの前に立つと、ゆっくりと語り始めた。
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《回想:三年前》
悠斗の口から語られたのは、意外な“視点”だった。
「俺は、最初から悪人だったわけじゃない。
でも、“翔”を羨んでた。
あいつは馬鹿正直で、でも人を惹きつける。
女子にもモテたし、先生にも可愛がられた。
俺が何をやっても、あいつには敵わなかった」
その嫉妬は、いつしか蒼に向かった。
「でも、俺が唯一勝てたのが“蒼との距離”だった。
翔は蒼にとって“面倒見のいい奴”でしかなかった。
俺は“理解者”だった。そう思ってた」
だが、翔が“録音データ”を持ち出し、
裏取引を告発しようとし始めたとき、悠斗は焦った。
「あいつは、俺を“蹴落とす”気だったんだと勘違いした。
だから俺は、“事故に見せかける方法”を考えたんだよ」
静寂。
会場全体が息を呑んだ。
蒼が、息を詰めてステージを見つめる。
悠斗は続けた。
「けどな……“殺すつもり”はなかった。
ただ、あいつがもう出てこられないように、“場所”を提供しただけだ。
翔は、そこで自分で――落ちたんだ」
「お前、ふざけるなよ……!」
蒼が立ち上がる。
「それを“事故”って言うのか?!」
悠斗の表情は冷たい。
「じゃあ、蒼。お前はどうなんだ?
あの日、翔から録音を受け取っただろ?
お前が黙ってなきゃ、全部防げたんじゃないのか?」
会場に再び緊張が走る。
「お前は、“見殺しにした”んだよ、俺と同じようにな」
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《暴露の代償》
画面には、蒼と悠斗――かつて“親友”と呼び合った二人の顔が並んでいた。
投げ銭は止まらない。
視聴者は、怒りと涙と共感とを交錯させながら、配信を見守っている。
そこに、狐面の男が一言。
「“告白”とは、自分の罪に自ら火をつける行為です。
あとは――燃え尽きるのを待つだけ」
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《その夜》
配信が終わったあと、蒼は配信会場を出た。
背後から、声がかかる。
「蒼。……本当に、あの話、出すつもりだったのか?」
そこにいたのは――加藤翔だった。