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第7話:「生きていた男」
《都内某所・廃ビル裏通路》
ネオンがまだらに照らす、夜の都市の陰。
蒼の背後に現れたその男は、
確かに――三年前に死んだはずの、加藤翔だった。
「……お前、どうして」
言葉を失う蒼に、翔はただ静かに笑った。
「久しぶり、蒼。元気してた?」
その姿に嘘はなかった。やつれてはいたが、間違いなく“本人”だった。
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《カフェ・深夜》
薄暗い店内、二人の再会は静かに進んだ。
「死んだって……思ってた。事故だって……いや、あれはお前が……」
「俺はな、“死んだこと”にしたかったんだ。全部から逃げたくて」
翔が語り出す。
「あの夜、悠斗が俺に“取引”を持ちかけた。
俺が持っていた録音――あれを黙っていてくれってな。
代わりにカネをくれるって言ってきた。ふざけてた。
だから俺は、証拠を暴く準備を進めた。でも……あいつ、俺に“仕掛け”てきたんだ」
事故に見せかけた“突き落とし”――
だが翔は、奇跡的に命を取り留めた。
「でもな、蒼……目を覚ました時、
お前のことだけが頭にあった。“蒼が裏切ったんじゃないか”って」
蒼は、目を伏せる。
「……ごめん。俺は、証拠を……消した。
お前が何かに巻き込まれてたって分かってたのに。
でも、悠斗を信じたんだ」
翔はうなずいた。
「分かってたよ。あいつは、言葉が上手いからな。
でもさ……蒼、俺な、あの事故のあと、誰にも信用されなくて、
行方不明扱いにされたまま“ひっそりと生きてた”。」
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《チャンネル管理人・中村颯太の部屋》
その頃、モニターを見つめる中村は一人つぶやいた。
「彼が動いた、か。加藤翔……。やっと“全ての歯車”が回る」
そこに現れたのは、山本蓮。
「全部、予定通りですか?」
「いや……“想定外”だよ。
彼があの場に現れるとはな。
だが、これは新しい“素材”になる。
――次のステージは、“生存者”の暴露だ」
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《カフェ・続き》
翔は蒼にスマホを差し出した。
そこには、ある映像ファイルが保存されていた。
「これが、俺を突き落とした“真犯人”の証拠だ」
「悠斗じゃ、なかったのか?」
翔は首を振る。
「確かに、計画を立てたのは悠斗だ。
でも――最後に手を下したのは、別の誰かだ。
俺を落とした“あの手”は……女だった」
「女……?」
翔は言った。
「俺の元カノ、“港区女子”――山本結衣だ」