コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
ここでも、音楽帝国のBGMが流れている。さわやかな、達成感に満たされたサウンドだ。
「ありがとうございます。でも俺は、いつでも、俺の場所にいます。
これからも、俺は俺の道を歩きますよ」
バルドゥビーダさんは俺を正面からじっと凝視したあと、静かにうなずいた。
「俺達は似ているよ」と彼は言った。
BGMが曲の継ぎ目にきて、消えた。
「共にオリジナルだ。
俺は流れをつくるために、君は流れに踏みとどまって、逆らい続けるために。どちらの人生が豊かかは、神のみが知ってる」
俺の目尻から、勝手に一粒のしずくが勝手に落ちた。これまでは、人前では涙を見せないことにしていた。
皇帝一行が、ゲートの向こうに消えていった。
「おい健太。そろそろ行くぞ」
卓の声が背中から聴こえる。彼は、俺までも飛行機に乗るものだと思っているのか。
彼らが遠い国で生み出す流れが、いつの日か、俺が立っているこの足元までやってくる日が、本当に来るかもしれない。
「いい加減、もういいだろう。先行ってるぞ」と卓が言う。
「行っててくれ」
俺はここに踏みとどまりながら、見えなくなった源流に向かって、心の中でお辞儀をした。
気づくと、身体もそれにあわせてお辞儀をしていた。