第二話 今日は雨が降った
「ねえ桃子ちゃん、」
今まで大して話したことはなかった筈なのに、隣の席になった途端に頻繁に話しかけてくる様になった。席替えをしてから今日で一週間、私の隣の席の彼女、泉流花は今日もクラスで孤立している。
二週間前、担任から私に話があった。次の席替えのことで、内容は、私が泉流花の面倒を見てくれとの事だった。
「泉さんはクラスの加藤さん達から目をつけられてるらしくて、本田さんならしっかりしてるし、」担任から理由を聞かされても納得できない。学級委員という立場からなのか、担任やその他の先生からの信頼は厚い自覚はある。でも、私に押し付けるのは違うだろう。
うちのクラスの担任は生徒に自分達から行動できるようになってほしいと言い聞かせているが、実際に自分の仕事を減らしたいだけのように思える。「いじめを止めるのは貴方達の仕事です。」と言うのも、面倒ごとを避けたいからだろう。
そんな感じで泉流花の席の隣になり、彼女からよく話掛けられるようになったのだ。もちろん話を無視したりなどはしないが、適当に返事をしている。変に仲良くなって、いじめに巻き込まれても嫌なのだ、私はいじめなどとは無縁に生活し、優秀な成績を収め、周りが望むように医者にならないといけないのだ。
「窓を見て、雨がやんできたよ。」
そうだった。私は今、彼女に話しかけられていたのだった。雨が止んだのは知っていた。なのに、なぜそんな事を話すのだろう。窓から差し込む太陽の光に照らされる彼女は何とも綺麗で、同時に近寄り難くもあった。そして私は彼女が纏う独特な雰囲気が近寄り難く、苦手であった。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!