それは、ある冬の日の出来事だった。
人気のない真っ白な道に少女が一人、ぽつりと寂しそうに歩いていた。
少女の名前はリラ。
両親を亡くし、親戚も居ないため、天涯孤独となってしまった悲劇のヒロインである。
ふわりと雪がリラの頬に舞い落ちる。
とその時、石に躓きどてんと転んでしまった。
『 … いたい』
可哀想にリラは薄着なもので雪の冷たさが直に肌に伝わってきた。
雪に埋もれたまま喋ると、口に土混じりの雪が入ってきた。
昨日から何も食べていないリラにとっては、じゃりじゃりとした不味い土、それすらも美味しく思えてしまう。
そして、冷たい雪に体温を少しずつ奪われていくのを感じながら、リラはこう思った。
このまま死ねたらどんなにいいだろう、と。
『まま、ぱぱ、りらもそっちにいくよ』
リラは悴む指を押さえながらにこりと笑い、そして目を閉じた。
しゃく、しゃく
雪が踏まれる音がリラの耳に入ってきた。
しかし、リラには動く気力がもうなくなってしまっている。
じっと動かないでいると、声が聞こえた。
「大丈夫なのか」
低い、男性の声。
目を開けると目の前には知らないおじいさんが立っていた。
この状態で大丈夫に見えたらおかしいだろうと内心逆ギレするリラだが、口を開けても掠れた声しか出ない。
諦めて何もせずにいると、リラのお腹から元気にぐぅと声が辺りに響いた。
おじいさんはそれを聞き、またもやリラに問いかけた。
「腹が減ってるのか」
もしかしたらこの人は自分に食べ物をくれるのかもしれない、と思うと俄然やる気が出てきたリラは、
最後の力を振り絞って立ち上がった。
立ったのを返答と見たおじいさんはついてこい、とでも言うようにくるりと踵を返した。
老人のくせに動作が若々しいのは気のせいということにしておこう。
やはり大人と子供では歩幅が違うようで、リラはあっという間におじいさんと差をつけられた。
しかしリラにはもう走れるほどの力は残っていない。
どうしたものかと困っているとおじいさんが急に立ち止まった。
「入れ」
どうやらおじいさんの家についたようだ。
暖かい空気が流れ出てきてほっとしたリラは、途端に魂が抜けるかのように倒れてしまったのだった。
はじめまして、作者の波瑠といいます。
親子愛満載の【雪降る街】をどうぞご愛読よろしくお願いします。
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