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自創作BLキャラ「ピンクレッドストロベリー」の過去回想メイン、誕生日小説です!
〜あなたしかいない〜
僕は王の座を継ぐための器でしかなかった
太陽が水色の空に白く光っている。
朝、日当たりのよい金色の装飾が散りばめられた部屋で重たいまぶたを上げると、とたんに今日の公務の予定がドッと土砂崩れのように脳内に流れこんできて、気分が重くなった。
もし、今、隣にブルーが寝ていたとしたらどれほど幸せだっただろう
そんな妄想をしながら眩しいほどの照明で照らされた洗面器で顔を洗い、いつも通りメイクをする。
シルク生地の寝巻きを脱いで、シンプルなスーツに着替え終えて部屋を出ると侍従が今日の予定を伝えてくれる。
公務の予定を再び脳に流されて、まだ仕事が始まっていないのに疲れてしまいそうだ。
※侍従(じじゅう)…国王や天皇に側近として仕え、身の回りのお世話や補助をする人
侍従
「陛下、おはようございます。今朝はいいお目覚めでしたでしょうか。そして、誕生日おめでとうございます」
レッド
「おはよう。いい目覚めでしたよ。ありがとう」
もう嘘をつくのも慣れたものになってしまった自分に呆れてしまう。
今日は城の中がいつもに比べてより一層慌ただしく人が移動している。それに伴って、外もトランペットやシンバル、サックスに小太鼓が歓声を上げるように鳴り響き、深緑のペンキで塗られた街灯には国の国旗を連ねた飾りが賑やかに飾られている。
耳を凝らすと高々と鳴る楽器の音に混じって人々の話し声や歌声が聞こえ、すっかりお祝いモードだ。
そんなことを考えても仕事がなくなることはない。いちご数個の軽い朝食を済ませ、たくさんの勲章がついた服に着替えるとあっという間に外に出る時間だ。
コーラルストロベリー(レッドの妹)
「お兄様、お誕生日おめでとうございます!今日はこれからパレードで馬車に乗るのでしょう?とっても楽しみ✨️」
スカーレットストロベリー(レッドの弟)
「お兄様!!見てください!新しいスーツを着せてもらいました!かっこいいでしょう?」
朝から妹弟たちは相変わらず元気がいい。
レッド
「コーラル、ありがとう。馬車に乗るのは久しぶりですもんね。」
「スカーレット、ネクタイも新しくなっていますね。似合っていますよ。」
そんな雑談を交えながら愛想笑いをする。
いつからか、心の底から笑顔になることができなくなった。
〜〜
「王室に恥じぬ王になりなさい」
小さなころからよく言われてきた。
父上はそれなりに厳格な人で、僕にはたくさんの教育を真面目に受けるよう、指示をしていた。別にそれ自体はそこまで苦痛ではない。
レッド(16歳)
「父上!今回のテスト、すべて満点をとることができました!」
マルーンストロベリー(レッドの父親)
「そうか、よくやった。将来、王の座を継ぐときも、これなら心配いらないですね」
レッド
「……」
なにかが違う。
褒められているのに、褒められている感覚がしなかった。何が違うのだろう。数年間考え続けたが、分からなかった。
考えれば考えるほど辛くなるので、やることがたくさんあった僕は考えることをやめて、将来立派な王になれるよう、努力することに専念した。
マルーン(レッドの父親)
「立派だ」
カーマインストロベリー(レッドの母親)
「よく頑張りました」
コーラル(レッドの妹)
「お兄様はすごいですね!」
スカーレット(レッドの弟)
「お兄様かっこいいです!」
いくらたくさん勉強をしても、たくさん褒めてもらえても、いつも何かがちがっていて、心にぽっかりと穴が空いているような感覚だった。
『将来は立派な王になれる』
みんな最後は必ず口を揃えてこう言う。
父上の持病のせいもあり、僕が若いうちに王の座を受け継ぐ可能性がある関係もあったのだろう
とても嬉しいこと。ありがたいこと。
僕のことをしっかり認めてくれている。
…なのに、僕は何歳になってもそんな親切心を受け止めきれずにいた。
でも、だからといって僕には国王の座を継ぐこと以外にやることも道も見つからなかったので、王になることを目指すほかなかった。
そうやって自分の気持ちを放置していたら、
いつの間にか笑えなくなっていた
そんな僕に手を差し伸べるように現れたのが
ブルー。君なんだよ。
いつも冷たく僕に接する君は、隠しているつもりなのだろうけど、本心がだだ漏れで、精神状態が不安定ながらも楽しそうに研究をしていた。いつだって人生の道は一本のただの直線にしか見えなかった僕にとって、思うがままに分からないことを研究して、解明していくブルーの姿はまるで光のように見えた。
早く会いたい。早くブルーに会って抱きしめたい。そうしたら君はいつものように「暑い」とか言って離れようとするんだろう。今は1月なのに。
〜〜
太陽が青空の真ん中で統治するように輝いている。
約数時間のパレードが終わった後、午後からは様々な王室メンバーや貴族が集まるパーティーが開かれる。
城の一階。奥の方にある広いパーティー場にはそれぞれ深みのある赤と鮮やかなピンク、新鮮な緑色をした長い生地で壁やテーブルが飾られていて、昼からたくさんの王族や貴族がワインを片手に話をしているのが聞こえる。
とある女性王族
「陛下、こんにちは」
レッドが前にいるのを見ると丁寧にカーテシーをする女性貴族
※カーテシー…伝統的な女性の挨拶。片足を後ろに引いて膝を折り曲げるお辞儀
レッド
「こんにちは」
やめてくれ。カーテシーなんかしなくていい。
僕はカーテシーで挨拶をされるほど偉い存在じゃない。ただ、運命のままに父上の座を継いだだけの凡人なのだ。
とある女性王族
「お誕生日おめでとうございます。先ほどのパレードは____」
様々な種族の匂いと強いワインの匂いが混ざって頭がくらくらして話が入ってこない。
とりあえず失礼にならないような返事をしながら愛想笑いをする。
本来ならこのようなパーティーが開かれるのは今までの王室の歴史上珍しい。しかし、僕が国王になってからは毎年開催されている。
理由は、僕がまだ結婚していないからだ
いわゆる、このパーティーを開催する理由は僕の誕生日を祝うためというのが表向きの理由。本当の理由は僕の結婚相手を見つけるためのもので、どんな公務よりも、この、パーティーに参加することが、吐き気がするほど嫌いだ。
王座の受け継ぎを特に重要視しているフルーツ国の王室は、できるだけ早く次期国王の受け継ぎを生むことを望んでいるのだろう。
つまり、今この女性が僕に話しかけてきているのも……まぁ、そういうことだ。
そう意識するとより吐き気が増してくる。
気を紛らわそうとワインをひと口飲むが、なにも味がしない。
視界はだんだん濁るようにぼやけてきて、コツコツとたくさんの人がヒールで移動する音が途切れずに聞こえる。
カーンカーン…カーンカーン
数時間経った頃、ようやくパーティーを終わらせる合図の鐘が鳴る。やっと解放される。
足早にパーティー場を離れてシャツに着替える。
早くブルーに会いたい。
早く、早く、必要とされたい
来客室の扉を開けてもらうと、そこには少し身を縮こませたブルーが立っていた。
ブルー
「…!レッド…」
レッド
「ッッ!!ブルーー!!」
僕は勢いよくブルーに抱きついた。
ブルー
「おい…相変わらず勢いが強すぎなんだよッ…」
そうやって嫌がりながらも満更でもなさそうな表情をするブルー。なんて可愛いんだろう。
ブルー
「…レッド、誕生日おめでとう。
……これ…プレゼント…」
そう言って小さな紙袋を照れ恥ずかしそうに渡してくるブルー
レッド
「…これ…ブルーが僕のために用意してくれたの…?」
ブルー
「まあ……な…」
目線をずらし、口籠りながらも小さく答えてくれるブルー
2人でソファに座り、小さな紙袋のなかを覗くと、また小さく長細い小箱が入っていた。
レッド
「この形…リップ…?」
ブルー
「あぁ…この前…真っ赤で奥行きのある、オシャレな色のリップが好きだって言ってたから…」
レッド
「…!あのときのこと、ブルー覚えててくれたの…?」
ブルー
「覚えてたっていうか…もともと誕生日にあげるために聞いたし…こんなものしかあげられなくて申し訳ないけど…」
レッド
「「こんなもの」なんかじゃないよ!!それに、そんな前から僕の誕生日のために用意してくれていたなんて……大好き!!♡」
ブルー
「いちいち抱きつくなッ暑い……なぁ…レッド」
少しブルーの表情が落ち着く
レッド
「ん?なに?」
ブルー
「なんか…レッド、今日、いつもに比べて…疲れてる…?」
レッド
「え」
突然のブルーの発言に僕は思わず固まってしまった。
レッド
「な、なんでそう思ったの…?」
震えそうな声を抑えてたずねる
ブルー
「え…だって…いつもなら抱きついたあとキスしてくるのに今日はしてこないし…普段より声のトーン低いし……あ、べ、別にキスしてほしいとか、そういうのじゃないからな…!?」
焦った様子で弁明をするブルー
レッド
「……」
ブルーはこういうときだけ勘が鋭いということを知らされた気がした
レッド
「き、気のせいだよ〜!少し公務が大変だっただけ!」
ブルー
「……誤魔化すの下手だぞ」
普段の僕なら「誤魔化すのが下手なのはブルーもでしょ〜?」と返していただろう。でも、少し限界だったみたいだ
レッド
「…別に大したことじゃないよ…ただ…僕…本当に国王として立派なのかなって…ちゃんとしないと…僕の代わりはいくらでもいるからなおさら……」
こんなことを誰かに話すのは生まれて初めてで、自分でもなにを言っているのか分からなくなってくる
ブルー
「…は?……レッド…それ…本心で言ってるのか…?」
レッド
「え…?ま、まぁ、嘘を言っているわけではないけど…」
そう答えるとブルーは僕の顔に手を添えて無理矢理目線を合わせたと思うと、少し声を荒げて言った
ブルー
「『僕の代わりはいくらでもいる』だなんてもう二度と言うなよ…!!」
レッド
「え…ど、どうして…?」
こんなに怒っているブルーを見るのは初めてで、驚いて手に力が入らない
ブルー
「どうしてって……国王の代わりはいるのかもしれないけど、俺の恋人の代わりなんか居ないんだよ!!俺にはレッドしかいないんだよ…!!」
レッド
「ッ…!!」
そうだ。僕にもブルーしかいない。
国王としての責任に囚われすぎて、こんなにも大事なことを忘れてしまっていた。
ブルー
「もし…レッドがいなくなったりなんかしたらッ…俺…生きていけないッ…」
ブルーの手が僕の頬から肩にするりと落ちたと思うと、先ほどまで声を荒げていたブルーはまるで親をなくしてしまうところだった子供かのように泣き始めた
ブルー
「ずっとそんなこと思ってたなんて知らなかったッ…俺もよくレッドに迷惑かけてしまってるし…レッドもなにかあったならちゃんと
話せよなぁッ…」
レッド
「ッ…ごめんッ……そうだよね…僕にもブルーしかいないッ…」
そうだ。やっとわかった。僕が十数年ずっと分からなかったこと。心にぽっかりと穴が空いた感覚だった理由。「国王」という身分じゃなくて、「僕」自身を見てほしかったんだ。
ブルーは”僕のこと”をちゃんと見てくれている。
いつだって僕のことを受け止めてくれて、「僕」に話をしてくれる。
目頭が熱くなって泣きそうになるのを口を強く閉じて耐えた
ブルー
「レッド…こんなときくらい我慢しないで思いっきり泣けよ……じゃないとお互いすっきりしないだろ…?」
涙を拭きながら笑顔で言うブルー
レッド
「ッ……ありがとう…」
僕はブルーに抱きついて、顔をうずめてから久しぶりに涙を流して泣いた
ブルー
「……やっぱり泣き顔は見せてくれないんだな…w」
レッド
「化粧落ちるのッ…!!いいじゃんッ…別にッ…顔隠したって…!」
ブルー
「ふははっ…wはいはい、分かったよ…」
軽く笑って僕がいつもブルーの頭を撫でてあげるように、ブルーが僕の頭を撫でてくれる。僕はそんなブルーを_
レッド
「…愛してる」
ブルー
「……知ってる」
ブルーがくれたリップの小箱には、
一本の青いバラの模様がしるされていた。
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