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4 - 試作④ ____が人間じゃなくても

♥

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2025年11月07日

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■____が人間じゃなくても(仮)



こんにちは、こんぶです。


本作品は『No,I’m not a Human.』というゲームをオマージュしており、その世界×現実をぐちさんがどう生きるのか書きました。未プレイながらに書いてみましたが、少しでも嫌だと思ったら読むのを中断して下さいね!ここでの注意喚起は毎回省いていますので、諸々注意とだけ言っておきます。ちなみに、続きがありそうな雰囲気を出してますが、これは読み切りです。沢山の方を登場させて面白く出来そう、5話までの短編シリーズに出来そう、とは思ったのですが勉強量とんでもなくなりそうなので諦めました。

(個人的には大分気に入っている世界観なので、続きは他力本願したいくらいです。)

特に設定とかは言及しないので、思うまま捉えて下さい!それでは行ってらっしゃいませ✩.*˚








悪夢を見たような気がした。額には冷や汗が滲み、止めたはずのアラームが頭の中で木霊する。スマホの画面には[20:07]とあり、ぼーっとし過ぎたことを後悔した。お腹は空いていないが、何か口に入れた方が身のためだ。そう思い立った俺は、脇に置いていた眼鏡をかけキッチンへと向かう。試しに冷蔵庫を開けてみると、冷たい光に当てられ思わず目を逸らす。浮ついた意識とぼやけた視界が定まった時、そこに見えたのはビールのみだった。


「空きっ腹に酒は流石に良くねぇか。」


ため息をつきながら扉を閉めると、上から何かがガサッと落ちてきた。痛くも痒くもないそれは、1枚だけ入った食パンの袋。寝起きで食べるには丁度いい、俺が探していたお目当てのものだった。食パンはトースターに入れてスイッチを押し、常備してあるマーガリンと蜂蜜は空いているスペースに出し置く。鼻歌交じりでその時を待ち、タイミングの良いところで指パッチンなんかをしてみる。先ほど見た悪夢を忘れたいのか、自分の本能なのか調子はすこぶる良かった。きつね色に焼けたパンにマーガリンを塗り、ある程度染み込んだ頃に蜂蜜をかける。このあまじょっぱさが、やけに贅沢に思えた。

(やっぱ酒も飲んじゃおっかな。)

こんな中途半端な時間は、配信をつけるなり誰かとゲームでもやればいいのに、もう半ば諦めている。この食べ物がそうさせている、と強引な他責をして自分に言い聞かせた。




いつもなら無限に飲めるビール、今日は何故か1缶で限界を迎えた。その原因を探す余裕すらない、ほとんど回っていない頭で見たのは、しょぼすけからのdiscordだった。


『不在着信』

『不在着信』

『不在着信』

『ぐちつぼ大丈夫?ろくにニュースなんか見てないだろうからここで言うけど、今の日本異常なんだよ。なんか昼間はめっちゃ暑くて、夜しかまともに出歩けない。しかも、人ならざる者が地中から這い出てきてるらしい。そいつらに会ったら殺されるから、マジで気をつけて。あと、1人で家に籠るのもやめとけ。そいつらに襲われるから、誰かしら家に入れるんだぞ。検査の方法とか色々書いてあるサイトのリンクも貼っとくから、ちゃんと確認して。今度そっち行くから、絶対生きてろよ。』

『あ、縺ゅ€√≠縺ィ縺昴�莠コ縺ェ繧峨*繧玖€��”譚・險ェ閠�”縺ィ繧ょ他縺ー繧後※縺�k縲ゆソコ繧峨∩縺溘>縺ェ莠コ髢薙↓蛹悶¢縺ヲ………ごめん縺ェ繧薙°誰か来たみたいだから、また後で。』


「途中まで読めてたのに何だこれ。とりあえずリンクは開けそうだな……。」


最初は、某RP鯖のやり過ぎかと思ったが、文の端的さが全てを物語っている。お互い急を要するらしい。早速、貼られたリンクをタップすると、非政府組織(?)が運営するサイトに飛ばされた。しょぼすけの言う日本の異常、人ならざる者、検査方法など各項目ごと詳細に書かれている。こんなものを読んでいけば自然と酔いも冷めた。むしろ、いつの間にか寝落ちして酷い悪夢を見ている、と錯覚したかった。自分は今何をすればいいのか、最初に思い浮かんだのは冷蔵庫にあるのがビールだけ、という悲惨な現実。思わず頭を抱えたが、PCとスマホで各方面に連絡をしてみた。その最中、スマホの録音アプリにいくつか保存済みデータがあることに気付く。2スクロールに渡るほどの録音履歴を見て、ひとまず1番古いものを聞こうと再生した。


『あーあー、聞こえてるか?……よし録音は出来るな。えっと1日目、何人か知らないやつが訪ねてくる。結構個性的で覚えやすかったけど、誰が来るかは日によってランダムだ。この録音は手短にしたいから詳しい説明は省く。で、伝えたいのはこれだ。だいぶ遅い時間帯、朝方に近いくらい───が来る。初日、俺は普通に家に入れたけど、絶対─────めだ。───だからって思ったのが良くなかったよ。もう一度言う、──────。』


(俺の声……?とはちょっと違うような。てか、1番大事な所が全く聞き取れねぇ。)

その後、何度も再生し直すも同じ部分が聞こえない。別の履歴を聞こうとしたが、余計に酷く音声がバグっていた。情報過多になった脳はショート寸前で、一旦寝ようと枕に顔を埋めた瞬間。


(ピンポーン)

インターホンが鳴った。








「一体全体、何人来んだ。こんなド深夜に。」


非常事態だからと言って、見知らぬ人をホイホイ家に上げるほど今の俺は穏やかじゃない。しょぼすけが1人で籠るな、と言っていたのは覚えている。だが、初対面の他人と1つ屋根の下で暮らすなんて、俺には到底無理な話だった。何人かと話すことで知り得たのは、この世界の異常と得体の知れない何かに怯える生活、未知から来る膨大な不安感。明るい未来へ皆を導く勇者なんていない。誰もが自分の未来のために、他人を蹴落とすしか生きる術がないのだ。そんな廃れた世界で、俺はたった数人にさえ優しく出来ず、ぽつんと家に籠っている。

(勇者になろうなんて最初から思っていなかったけど、なんかどうしようもなく情けないな。)

せめて、友人が1人でも居てくれればどうにか出来たかもしれない。小さな勇気を振り絞って、水くらいなら飲ませてあげられたかもしれない。過去の自分に今更後悔が押し寄せ、その場でしゃがみ込んでしまう。そうして、目いっぱいに溜まった涙が溢れそうになる頃。

(ピンポーン)

インターホンが鳴った。驚いて情けない声が出てしまうが、インターホンの画面を見るとそこに居たのはらっだぁ、俺が求めていた友人だった。


『ぐちつぼ〜?大丈夫?生きてる?』

「……(安堵して流した涙を拭う)らっだぁじゃん、どしたの。」

『どしたのじゃないでしょ(笑)良かった、生きてた。なんか世界変になっちゃったから、心配で来てみたんだよね。』

「……ね。変らしいね。俺なんかさっき知ったばっかだから何が何だか分からんくて。知らん人もいっぱい来たからさ。」

『あ〜いっぱい来たんだ…。もしかして、ぐちつぼ今家に1人?』

「うん。他人を家に入れるの怖くて、どうしようってなってて。」

『そっか(笑)じゃあ、俺入れてよ。ちょうど食いもんとか買ってきたからさ。』

「マジで助かる。ビールしかなかった。」

『ビールだけ!?ふははっ、終わってます。』


そう言ってドアを開けると、そこには慣れ親しんだ姿の彼がいた。いや、多少肌は青白かったし足取りがおぼつかない。それでも、らっだぁに間違いなかった。渡されたビニール袋には、俺の好きなラムネとか追加のビールとか、無難におにぎりとかパンとか本当に色々あった。らっだぁにお礼を言おうとすると、我が家にいるかの如く広間のソファにどんと座っている。その状況に呆れつつ、なんだか日常に戻った気がして、俺は満更でもなかった。




いつもと変わらぬ雑談をしてくれたおかげで、身も心も、そしてお腹も満たされた。酒類は何本か冷蔵庫に入れ、こんなご時世だし、とお互い1缶ずつ開ける。酒を飲んだ後特有のおっさんみたいな声が聞こえ、何故かそれがツボに入った。おかしくなった世界に早くも疲れがきたらしく、その笑いは中々止められない。

(らっだぁが来てくれて本当に良かった。多分、さっきの連絡見てくれたんだな。)


「笑いすぎ笑いすぎ、どうしちゃったの(笑)」

「いや、分かんないけど(笑)マジで良かったわ、らっだぁが来てくれて。」

「嬉しいこと言ってくれるね。」

「連絡して良かった、にしても来るの早かったな。」

「連絡?誰に?」

「え、らっだぁに?なんだまだ見てないのかよ(笑)さっきさ、俺色んな人にLINEとかdiscordで…。」


ふと気がついた。


「らっだぁ、お前誕生日いつだっけ。」

「え?11月11日だけど…。」

「じゃあ、俺の好きな動画は?」

「え〜替え歌のやつと実績進捗……更新まだ?」

「…俺が昨日食べた飯は?」

「…いや分かる訳ない!?」


ひとしきり笑って、また聞いてみる。


「お前、そんな歯白かったっけ。」

「…はい?黄ばんでたって言いたい訳?」

「違う違う(笑)あと、爪は土で汚れてるし目は充血してるしさ〜。」

「……。」

「……そこに付いてる血なんて、誰のやつだよ。」


動揺したナニカは、俺の指す場所を念入りに見ている。しかし、俺のカマかけだと気づいたのかこちらに目線を戻した。その目はいつものらっだぁではない、知らないナニカのものだった。ちゃんと検査方法の項目に目を通しておいて良かった、と思うが家に入れてしまった以上もう遅い。不思議とすぐそこにある死に焦りはなく、残った時間のことを冷静に考えられた。いつから俺は気づいていたのか、いや既に受け入れる準備をしていたのかもしれない。一抹の日常、幸せ、友人との時間は、俺の最期に相応しい。途中からそう思ってしまったんだ。


「ばれた?」

「……うん。」

「死ぬのは怖い?」

「……いや別に。」

「なんでか、聞いても良い?」

「友達に殺られるなら、良いかなって。」


俺はビールを一滴残らず飲み干し、ナニカと対面になるよう座り直す。でかいため息をつきながら、ナニカは服を捲り上げ腹を見せてきた。すると、青白い皮膚が徐々に裂けていき、ゲームでしか見たことがないようなグロテスクが広がる。死から逃げるのではなく、受け入れるかのように、俺は静かに目を閉ざした。


「ごめんね、ぐちつぼ。」


(お前が人間じゃなくても良い…ただ、)

こんな時くらい、化け物であって欲しかったな。








悪夢を見た。額には冷や汗が滲み、スマホのアラームが部屋中に響き渡る。画面には[20:01]とあり、何故か夢の内容は鮮明に覚えていた。

(昼間の異常気象、人ならざる者が世界に蔓延り、俺はらっだぁに似たナニカに殺される…。)

手は驚くほど震えていた。自分の血肉が裂かれ、プツンと息が絶えるあの感覚。残るはずのない死という体験が、俺の脳みそと体に刻み込まれてしまっていた。何故生き返ったのか、そもそも世界自体の時間が巻き戻っているのか、色々と分からないし考えたくもない。ただ、もしあの悪夢をもう1度やり直しているのなら、変えられることは沢山ある。味わってしまった死への恐怖が皮肉にも、明るい未来へ連れて行こうとしているのだ。


「とりあえず、あの時と変わってるものを探そう。俺が記憶を持ってるように色々と違いがあるはず……。」


引き返すことすら許されない世界で、俺の勘は冴え渡っていた。だてにゲームばかりしてる訳じゃない、今置かれた状況もすぐに把握出来る。そう、試しに鏡を見た俺は全てを把握したのだ。





たとえ、俺が人間じゃなくても。



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