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🎧短編「言わなくても分かる」
朝。
部屋。
カーテンの隙間から、光が入る。
ソファ。
そのまま、寝てた。
気づいたら。
隣。
近い。
いや。
近いどころじゃない。
完全に、くっついてる。
(……は)
一瞬で思い出す。
昨日のこと。
“お前じゃないと嫌”
言った。
言ってしまった。
(……やば)
でも。
離れない。
むしろ。
少しだけ、動く。
その瞬間。
腕が、引かれる。
冬星「……起きてる」
低い声。
(……気づいてたのかよ)
琉夏「今起きた」
嘘じゃない。
でも。
少しだけ、視線を逸らす。
沈黙。
気まずい、はずなのに。
前みたいな“距離の探り合い”はない。
ただ。
ちょっとだけ、意識してる。
それだけ。
冬星「……帰るか」
ぽつりと言う。
琉夏「どこに」
冬星「ベッド」
一瞬。
(あー、そっちか)
変な意味じゃない。
でも。
少しだけ、間ができる。
琉夏「……お前が行けよ」
軽く返す。
でも。
体、どかない。
冬星が、少しだけ息を吐く。
それから。
腕が、少し強くなる。
(……は)
そのまま。
ぐっと、引き寄せられる。
距離、完全にゼロ。
冬星「……じゃあこのまま」
低く言う。
(いやいやいや)
ツッコみたいのに。
声が出ない。
でも。
拒否もしない。
むしろ。
そのまま、目を閉じる。
(……もういいか)
思う。
ここまで来たら。
わざわざ戻る理由もない。
しばらくして。
琉夏「……なあ」
冬星「なに」
少しだけ間。
琉夏「昨日の」
言いかけて、止まる。
“嫌なんだよ”
あれのこと。
でも。
言い直す。
琉夏「……なんでもねえ」
飲み込む。
その代わり。
少しだけ、体を寄せる。
それで、十分。
冬星は、何も言わない。
でも。
腕は、離さない。
むしろ。
少しだけ、指が動く。
軽く、背中に触れる。
(……やめろよそれ)
心臓が、うるさい。
でも。
嫌じゃない。
冬星「……分かってる」
ぽつりと呟く。
(……は)
何を、とは言わない。
でも。
全部、分かってる。
それでいい。
言葉にしなくても。
もう、分かってるから。
朝の光が、少し強くなる。
それでも。
誰も、離れない。