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これを朝に投稿する奇行
─『もし部屋の外から人間と考えられない音がしたら、絶対に見えていると気付かれるな。』
私の住む村には変な教えがある。人間と思えない音がしたら、見えていると気付かれるなというのだ。どう考えても、人間とは思えない音なんてなる筈がない、私はそう思っていた。
ある夜、私は本を読んでいた。其の時、ぺたと音がした。小さな音だったが、夜という静寂の中では大きな音に思えた。
私は音が耳に入った時、誰かの悪戯かと思った。其の直ぐ後、窓から声がした。
「あけて」
はっきりと聴こえた。低音で、決して人間が出せるとは思えない声で。私は必死に気付いていない振りをした、必死に本を読んだ、冷静さを保とうとした。
「みえてるでしょ」
「あけて」
私の焦りを他所に、窓からは変わらず声がする。この出来事は10分続いた、永劫に思えた時間だった。
今私はその村から引っ越して暮らしている。隣人も善い人ばかりで幸せだ。ここまで長く語ったが、もう夜更けだ、語るのはここまでにする。私は本を読んでくる、また今度出会えたら。─
「いれて」