「仕事してないのか?」
「アルバイトを掛け持ちでやっていたのですが、どちらの職場でも上司からパワハラ被害に遭いまして」
「パワハラ? それは許せんな。どんなパワハラだ?」
「どちらの上司も主人づらして偉そうに命令してくるので、わたくしの主人はネロンパトラ様だけだと答えて顔を殴ったらどちらの職場もクビになりました」
その話のどこにパワハラの要素があるのだろう? マコティーに暴行された上司たちこそ被害者だ。今までマコティーを優秀な部下だと思っていたのは大きな勘違いだったのかもしれない。
だとしたら、余の人を見る目のなさは致命的だ。マコティーが余に忠実だったのは余と夜伽したかったからなのに、名君の余に心酔していたからだとずっと思い込んでいたし。実際、前世では大軍の指揮を任せたブラッキーに裏切られて死ぬハメになった。
ため息が出てきたけれど、ここで一ついいことを思いついた。今までの功績に免じて資金を援助してもいいが、マコティーの能力をもう少しだけ試してやろうという気になったのだ。
「マコティー、余のためにまた働く気はないか?」
「ないわけないじゃないですか。陛下のそばにいられるなら、どんな汚れ仕事だってやります。それで今度は無実の人間を何人殺せばいいんですか?」
「いや、痛めつけるのはいいが殺すな。余はこの世界でも王になろうと考えている。横浜デビルという軍隊を組織して、すでに兵士も二千人以上いる。マコティーも余の世界征服に手を貸してくれぬか?」
「このクソみたいな世界も陛下のものに? 手を貸さないわけがないじゃないですか!」
夜伽したいかどうかを抜きにしても、やはりマコティーは名君としての余に心から敬服していたのだ。疑って済まないことをした――
「この世界が滅びて陛下のものになった暁には、わたくしをクビにしたあの生意気な上司たちを真っ先に磔にして火あぶりにしてやりますよ」
もしかしてマコティーが余に手を貸す理由はそれか? 大丈夫か? 一抹の不安がよぎったが、まあなんとかなるだろう。
魔力はもちろんスキルさえ持たないこの世界の無力な人間たちが相手だ。魔国でもっと強力な敵をさんざん相手してきたマコティーがしくじることはあるまい。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!