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高校生になるまで飲めなかった珈琲を飲めるようになったとき、自分の中で何かが変わったような気がした。
あれだけ好きだった「かわいい」を手放したときと、同じ感覚だった。
「似合わない」とよく言われたものだ。
こんな顔に似合わず、可愛いものが好きだった。
自分の目つきの悪さと言えば周りの人の中でも秀逸で、睨んでないのにも関わらず怖がられたり、2個上のガタイの良い先輩に喧嘩を売られたり。
仲のいい人もできなかったから、この顔を疎ましく思っていた。
可愛いものに包まれていても、僕は、僕の顔は、変わってくれやしない。
次第に、可愛いを避けるようになっていた。
なんで、こうなったんだろう
って、今でも思ってしまう。
可愛いを具現化したような後輩が、
隣で一緒に寝ていた事実。
自分は彼に、好かれている……
愛されているようで。
緑色の髪が朝日に照らされて光るたび、
僕もまた、彼を愛おしく思えた。
寝癖のついた髪をぐしゃっと撫でると彼は不機嫌そうに起きて、
ぼんさんおはよう、と一言。
仕返しのように、彼は僕の頬にキスをすると、眼鏡をかけて顔を洗いに行く。
顔が熱くなった僕の顔を見て、「可愛い」と言葉を残して。
俺はいつから、
かわいいに転身したんだろうか。
かわいいと思えるのも、
かわいいと言ってくれるのも、
今では彼だけしかいなくて、
彼からの僕に対しての言葉は、
まるで魔法みたいに不思議で、
疎ましく思っていたはずの顔が、
少しきらきらして見えた。