テラーノベル
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息が苦しい。
足ももう限界みたいに重いのに、後ろから追ってくる“カース・グミ”は歩みを止めない。
ドロドロした影なのに、動きはやけに速い。
「リンっ……! これ、撒けるの?」
「撒くんじゃない! “逃がす”んだ!」
「ど、どういう――」
言い終わる前に、リンが私の腕を強く引き、光の粒が密集した場所へと飛び込んだ。
すると視界いっぱいに光がはじけ、体がふわっと浮き上がる。
「わっ……!」
「のあ、目を閉じないで。ちゃんと見て」
リンに言われて前を見ると、光の粒が私たちの周りを渦のように回り、通り道を作っていく。
けれど、その輝きの中には――
泣き声、怒鳴り声、誰かの叫びが、かすかに混ざっていた。
「これ……記憶の声?」
「うん。忘れられなかったもの。苦しかったもの。さっきの“カース・グミ”は、その集合体なんだ」
リンの声は走っているのに不思議と落ち着いていて、だけどどこか、決意しているようだった。
「のあ、さっき言おうとした“きみが来た理由”……今言うよ」
「っ……なに?」
「この国は、人間の“忘れたい気持ち”から生まれるって言ったよね?
でもね――“救われたい気持ち”からも生まれるんだ」
「救われたい……?」
リンは頷いた。
「のあ。きみには、その強い“願い”がある。
この国が壊れそうになったとき、きみの心が――呼んだんだよ。ボクを」
「……私が、リンを?」
「そう。ボクは、のあの願いが生んだ…
“ガイド”なんだ」
その言葉が胸に落ちた瞬間、
背後で大きな音が響いた。
ドロッ……!!
カース・グミが、光の渦に手を伸ばすように広がった。
「きゃっ……!」
「のあ、しっかり!」
リンが私を抱き寄せた瞬間、光の渦の中心が急に狭まり――
次の瞬間、空間が裂けた。
白い裂け目が天から落ちてきたみたいに開き、そこからまぶしい光があふれ出す。
「“出口”ができた! いくよ!」
リンは私の手を強く掴み、裂け目へ飛び込んだ。
落ちる、と思った。
でも実際は、ふわりと浮いていた。
光の世界を抜けるまでの一瞬、私はミルの横顔を見ていた。
その瞳は、いつもより深くて、どこか悲しげだった。
(リン……)
声をかけようとした――その瞬間。
ドンッ!!
私たちは光の外へ弾き出された。
着地したのは、さっきとはまったく違う場所。
地面は赤い砂糖の砂で、空には巨大なグミのような赤い月が浮かんでいた。
「ここは……?」
息を整えながらリンが言った。
「“レッドシュガー領域”。
カース・グミの“核”がある場所だよ」
「核……ってことは……」
「うん。ここを壊せば、この国は――」
リンがそこで言葉を止める。
でも私は気づいてしまった。
「リンも……消えちゃうの?」
リンは笑わなかった。
ただ、静かに私の手を握り返した。
「のあが望むなら、この国は残せる。
でも――きみの“願い”次第なんだ」
心臓がドクンと鳴る。
この世界が生まれた理由。
リンが生まれた理由。
私がここに呼ばれた理由。
全部、ひとつにつながっていく感じがした。
「のあ。きみは――どうしたい?」
赤い月の下、リンはゆっくりそう問いかけた。
選ばなきゃいけない。
でも、その選択は……うまく言えないほど重かった。
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コメント
1件
今回も楽しいお話ありがとうございました!!すごすぎて鳥肌たちました笑 この国の真実?がわかったのか…。それに、のあさんの願い次第でこの先の未来が決まるってめちゃくちゃ怖いんだろうな。続き楽しみにしてます!!