コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「…起きてんのー?」
インターホン越しの声に、キルシュトルテは眉をひそめながら、片目だけ開けた。
スマホの通知には、すでに「飯いこ?」のLINEが数件。
10時、13時、そして16時過ぎ。さっき送られてきたばかりのもの。
「……寝かせろよ……クソ……」
スウェット姿で毛布にくるまり、キルはベッドに沈んだ。
寝たのは朝の9時。生活リズムなんて、とうに崩壊している。
しばらくすると、部屋のドアが「カチャ」と静かに開いた。
勝手に鍵を開けられることにも、もう驚かない。
渡したのは自分だ。渡した記憶は曖昧でも──その結果は、毎日のようにやって来る。
「おーい、起きた?」
「……っ、寝てたわ……。つーか、お前……何勝手に入っとんねん……」
「ピザ頼んだ。あと15分くらいで届くって」
鼻歌まじりに部屋に入ってきた弐十は、コンビニのレジ袋をテーブルに置いた。
その中には──コーラのペットボトル、モンスターエナジー、そして──キルの好きなコンビニプリン。
「……いや、ひとりで飯食ってきても良かっただろ」
「うん。でも、お前と食いたかったからさ」
サラッと、まるで「コンビニ寄ってきた」くらいの気軽さで言われて、キルは目を逸らす──
心臓が、ほんの少しだけ、バカみたいに跳ねた。
「……おま…しんど……」
「あ、買ってきたやつ、冷蔵庫入れるなー」
レジ袋を手に取りながら呟く弐十に、キルは鼻を鳴らした。
もぞもぞと毛布の中に潜り直す。
「……あとでプリン食うわ。」
「はーいよ」
弐十はそう言って、冷蔵庫の前で振り返り、小さく笑っていた。
なぁ、弐十。俺は寂しいのなんて、慣れてるよ。誰かに気にされることも、心配されることも、今まで期待なんてしてこなかった。
なのに──お前は毎日、当たり前みたいに連絡を送ってきて。しつこいくらいに「飯いこ」って言ってくる。
俺が出られなかったら、代わりに買ってきて、わざわざ届けに来て。
何も言わずに、ただそこにいてくれる。
その優しさが、あったかすぎて、たまにバカみたいに痛ぇ…。
嬉しいくせに、素直になれなくて。
茶化すようにしか返せなくて。
こんな自分が、時々ほんとにムカつく。
だから──せめて…
「……ありがとな」
聞こえるか聞こえないかの声で、毛布の中から小さく呟いた。