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「くすぐってもいいですか?」
夜の22時過ぎ、寝るにはまだ少し早い時間。
目の前にある俺のベッドの上で寝転びながら漫画雑誌を見ていたどぬちゃんに、ふと思い立って声をかけてみた。
「へ?」
突然のお伺いに間抜けな声がして、弾かれたようにこちらを見上げてくる。
「え?ごめん、なに?」
「だから、くすぐってみてもいい?」
「なんで?」
当然の反応だ。
俺だって急にこんなこと言われたら戸惑うだろう。
好奇心と不信感が入り交じったような顔でじーっと見つめられ、こほんと咳払いを挟む。
「前から思ってたんだけど─、」
「うん」
「どぬちゃんさあ、くすぐり耐性低すぎない?」
「えぇ~?そんなことぉ─」
「ある。思い出してみ?」
ほわほわふんわりのいつものペースには今日は乗せられてあげない。前々からちょっとこれはどうかと思っていたんだ。
「この前のイベントのクイズ研究部…」
「うぇっ、、、」
ついこの間に起きた事案にどぬの目が泳ぐ。
「ぁれは、エアーじゃん、フリだよフリ!」
「あんな高い声でキャーって鳴いて?もう完全にくすぐったくなってんじゃん」
「えへへ、、、」
不利を悟ったどぬが体を起こしてこっちに向き直る。
「あと、去年の焼き肉配信も」
「ナニソレ、そんな昔のこと覚えてない─」
「たっつんのエアくすぐりルンバ責め…」
「???、、、、あっ、」
思い至ったのか目を逸らしだした。
バツが悪いのか、手近にあった俺の枕を抱え込んで顔を隠して見上げてくる。
そんな可愛い上目遣いしても今日は見逃してあげないからな。
「実際に触られてもないのに、可愛い声で鳴き過ぎじゃない?」
「可愛くないし、泣いてないでしょ?」
「いーや、あれは完全に鳴き声だった」
「違いますぅ、、、」
「じゃあ何?鳴き声じゃないならなんなの?まさか、喘─」
「笑っちゃっただけでしょっ!!」
思わず少し低くなってしまった俺の声を遮るようにどぬが慌ててかぶせてくる。
へー、ただの笑い声には聞こえませんでしたけどね。
不満を一切隠さずじとーっと見下ろしてたら、枕に隠れた口で「ちがう、ちがうんだよぉ~」ってぼそぼそ聞こえてくる。
「なんかさぁ、きっとくすぐったいんだろうなぁって考えたらもう可笑しくなっちゃうんだよね」
「想像で気持ちよくなっちゃう、と」
「ち~が~うぅ!」
「喜んでるようにしか見えないんですけど?」
「もぉ~」
そうは言っても、焼き肉配信でもイベントでもエアくすぐりとは思えないくらい高い声で鳴いたり、俺以外のヤツに触られそうになって身を捩らせて悶えてる恋人のあられもない姿を見せられて、俺の我慢もそろそろ限界なんだけど?
「俺も、、、してみていい?」
「ふぇ?」
決してどぬだけが悪いわけではないのかもしれないけど、恋人である自分がちょっとぐらいくすぐってみても許されるんじゃなかろうか。
「失礼します」
静かに申告して、ベッドに乗り上げる。
「え、ちょ、マジ?、、、えっ」
ゆっくりと近づき、ジリジリと体を寄せる。
見下ろしながら、手を伸ばした時、
「ひぅ、、きゃっ、、あはは」
触れる前に目の前のどぬが高い声をあげた。
「まだ服にも触ってないんだけど」
目の前で俺の枕にしがみつきながら身を捩る姿に思わずじと目になる。
「待って、待ってって!あっははっ」
両手をわきわきと動かしながら近づけたらひーって叫びながら後退りだしたのでどんどん追い詰める。
壁際でいよいよ逃げ場がなくなって枕で応戦し始めたのでべりっと奪い取ってにじり寄る。
「ひいっ、ぅふっ、あっははっ、やめてよぉ」
まだ全然直接触れてもないのに涙目になってるし顔も真っ赤だ。
触れたらどうなっちゃうんだろう。
ここまで来たら引けないしもちろん引く気もない。そのまま手を伸ばして脇に触れてみた。
「きゃっっ」
想像通りの高く細い声が響いた。
「これでもくすぐり耐性があると?」
「ぅぅ~、、、」
もう顔真っ赤じゃん。
お酒飲んだ時くらい頬も鼻の頭も赤く染まって涙目になって見上げてくる姿は、ナニがとは言わないが正直ちょっとクるものがある。
「ま、止めないけどね」
脇のあたりで指を動かした後、お腹の方に徐々にずらしていく。
あんなに高い声で叫んでたのに、実際に触ってからはずっと「ぅぅ~」とか「ぁぅ~」とかくぐもった声で呻いてる。
ちょっと強くしてみよっかな。
「ひゃ─っ、ふ、ぁっははは」
肋骨あたりをわしわしっと掴んでみたらバタバタと脚を振って背にした壁からずり落ちていった。
「ねぇ、やだよぉ~」
「他のヤツにはヤらせたのに俺はダメなの?」
完全にずり落ちてベッドの上で仰向けになってるどぬの上に覆い被さって見下ろす。
散々暴れまわったからかどぬのTシャツがめくれあがってお臍が丸見えになってる。
何も知らない第三者にこの状況を見られたら完全に誤解されるだろうな。
「俺にもヤらせてよ」
自分でも引くくらい低いマジな声が出て、どぬの抵抗が止んだ。
不安に揺れる視界を覆うように両手を広げて見せ、ゆっくりじわじわと首もとに近づけていく。
さあ、あと少し、俺が動いたら肌に触れちゃうよ?
すっかり楽しくなって、さあ、擽るぞ!って力を込めたその時─、
「もふくーん、ちょっと打ち合わせしたいことがあって─っえーーーーーっ!!???」
扉がバーンっ!と開いて騒々しい音とともに入ってきたじゃっぴの絶叫が響き渡った。
もふ「あ、終わったわ」
うん、どう考えても言い逃れできないな!
コメント
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あ 〜 〜 神 ! じ ゃ ぱ ぱ さ ん 気 ま ず い ね ぇ !