テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「最原ちゃん最原ちゃん!」
「……どうしたの?」
「最原ちゃんってさ、自分の持ち物をなくしたことある?」
昼休み。
オレがそう尋ねると、最原ちゃんは机の上でノートを整理していた手を止めた。
「……急にどうしたの?」
「いやー、探偵って観察力がすごいんでしょ? だったら、自分の物がなくなるなんてこともないのかなーって!」
「そんなことないよ。探偵だって人間なんだから」
「えーっ! じゃあ最原ちゃんも、うっかり物をなくしちゃうんだ?」
「……王馬くん、何が言いたいの?」
「べっつにー?」
にししっ。
最原ちゃんは疑わしそうにオレを見たけど、それ以上は何も言わなかった。
「じゃあさ、もし大切な物がなくなったらどうする?」
「探すよ」
「どこに?」
「なくした場所を思い出して、そこから順番に」
「ふーん。じゃあ、誰かが隠した場合は?」
「……その人を探す」
「わあ、怖い!」
オレは大げさに肩をすくめた。
「最原ちゃんにだけは、絶対に悪いことできないね!」
「王馬くんは、僕に何か悪いことをしたの?」
「えー? なんでそうなるの!?」
あははっ!
ほんっと、いい反応。
――だから、つい。
*
放課後。
「……ない」
最原ちゃんが、自分の鞄をひっくり返していた。
いつも使っている小さな手帳が、見当たらないらしい。
「おかしいな……朝は確かにあったのに」
「えーっ!? 大変じゃん、最原ちゃん!」
オレは隣から、いかにも心配そうに顔をのぞき込んだ。
「その手帳って、そんなに大事なの?」
「うん。調べたことをまとめてあるから」
「へえー! じゃあ、なくしたら困っちゃうね!」
「……そうだね」
最原ちゃんは机の中を確認し、鞄のポケットを調べ、朝に立ち寄った場所を思い返している。
いつもなら、ここでオレに疑いの目を向けるはずなのに。
今日は、何も言わない。
「ねえ、最原ちゃん」
「何?」
「もしかして、オレが隠したと思ってる?」
「……どうして?」
「だって最原ちゃん、いつもオレのこと疑ってくるよね? オレ、そんなに信用ないの?」
「それは自分の日頃の行いを考えてみなよ……」
最原ちゃんは小さく息を吐いた。
「でも、証拠もないのに疑うのは違うと思うから」
「へえー? 最原ちゃんってば、探偵のくせにずいぶん優しいんだね!」
「王馬くんは探偵のことをなんだと思ってるんだよ…」
最原ちゃんはそう言って、また手帳を探し始めた。
……ふうん。
まあ、いいや。
どこまで気づかずにいられるか、見てみようじゃん。
*
「……あった」
しばらくして、最原ちゃんが教室の窓際で声を上げた。
手に持っているのは、なくなったはずの手帳。
しいな
193
#イラスト
@0:31
6,336
#WT
シャケ握り
217
「えっ、どこにあったの!?」
オレはすかさず尋ねた。
「窓際の棚。普段は使わない場所だから、最初は見ていなかったんだ」
「へえー! よかったじゃん! うんうん! これで一安心だね!」
最原ちゃんは手帳を鞄にしまった。
……なんだ。
思ったより、あっさり見つかっちゃった。
「ねえ、最原ちゃん」
「何?」
「その手帳、誰かが隠したとは思わないの?」
「……可能性はあるね」
「じゃあ、犯人は誰だと思う?」
最原ちゃんは少しだけ黙った。
そして、オレの目をまっすぐ見た。
「王馬くん」
「えー?」
「君が隠したんでしょ?」
教室が、妙に静かになった。
……へえ。
「ちょっとちょっと! 証拠もないのに犯人扱い!? 最原ちゃんってばひどいよーー!!」
「うん。決定的な証拠はないよ」
「じゃあ、どうしてオレなのさ!」
「君が、朝から何度も僕の持ち物について聞いてきたから」
「えー? それだけ?」
「それだけじゃないよ」
最原ちゃんは、少し困ったように言った。
「王馬くんって、何かを隠しているときほど、わざとそれに関係する話をすることがあるから」
「…………」
「それに、僕が探している間、ずっと近くで様子を伺ってたでしょ?」
「えーっ! それは偶然だよ!」
「そうかもしれないね」
最原ちゃんはあっさりとうなずいた。
「だから、これは推理。確信はあったけど、最後まで確認したかったんだ」
……ああ。
そういうこと。
やっぱ最初から疑ってたんだ。
「にししっ! 最原ちゃんってば、オレのこと大好きじゃん! そんなにオレのこと観察してるなんてさ!」
「王馬くんがわかりやすいだけだよ」
「はー!?」
最原ちゃんは笑った。
いつもみたいな、困ったような笑顔だった。
「でも、ありがとう」
「……は?」
「手帳を見つけるきっかけになったから」
「えー!? 最原ちゃん、ついに遂に頭までおかしくなっちゃったの!?」
「はいはい。そういうことにしておくよ」
……なんだそれ。
まるで、全部わかっているみたいな言い方。
「最原ちゃんって、ほんっと性格悪いよね!」
「王馬くんにだけは言われたくないな」
「にししっ!」
オレは笑った。
いつもどおりに。
*
帰り道。
別に、悔しくなんてなかった。
最原ちゃんがオレの仕掛けを見抜いた。
ただ、それだけ。
探偵なんだから、むしろ当然でしょ?
なのに。
『王馬くんって、何かを隠しているときほど、わざとそれに関係する話をすることがあるから』
その言葉が、頭から離れなかった。
オレの癖。
….
「ま、次はもっと難しい問題にしてあげるよ!」
誰もいない廊下で、ひとりごとのようにつぶやいた。
次は絶対、見抜けないような嘘をついてやる。
最原ちゃんがどんな顔をするか、今から楽しみだ。
――ただ。
次に何かを隠すときも、最原ちゃんに見つけてほしいと思ったのは。
最原ちゃんとずっと遊んでいたいと思ったのは。
きっと、もっと面白い反応が見たいから。
そうに決まっている。
コメント
1件
第2話読了〜!!🥺💕 王馬くんと最原ちゃんのこの“探り合い”というか、ちょっとした心理戦みたいな掛け合い、めっちゃ好きだよ…!王馬くんの「見抜かれたいけど見抜かれたくない」みたいな複雑な気持ちがだんだん透けて見えてくるところがエモすぎる…あと「次はもっと難しい問題にしてあげるよ!」って言いながらも「最原ちゃんに見つけてほしい」って思ってるの、完全に恋の予感じゃん…!!💘 最原ちゃんの「王馬くんって、何かを隠しているときほどわざと関係する話をする」って観察力もカッコよすぎだし、それに「ありがとう」って言っちゃう優しさ…もう尊い…😭✨ 次も絶対読みます!!