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お待たせいたしました
第二話です
⚠️
鳴海が苦しそう
軽い吐血表現があります
それでもいいという方はどうぞ👋
数学と理科は好きだったが、国語はどうにも苦手だった。
とはいえ、成績が悪かったわけではない。持ち前の器用さで、それなりにこなしていた。
どちらが正解か悩んでいたら、実はどちらも不正解だった――そんな問題ばかりで。
登場人物の心情を考えるくらいなら、もっと他にやるべきことがあるだろうとも思っていた。
それでも、そういう問題に向き合うたび、自分には何かが欠けている気がしていた。
そんなボクが、今になって「恋」をしているらしい。
誰に、と聞かれても思い当たる相手はいない。
「なら、他の誰にも感じたことのない、説明できへん感情を抱いた相手……とかは?」
説明できない感情。
真っ先に浮かんだのは、あのおかっぱ頭だった。
顔を合わせるたびにイライラする。
ボクの誘いを断ったからか。
会えば喧嘩ばかりしているからか。
どれも違う気がした。
よく分からない。
ただ、会うたびに胸の奥で生まれる得体の知れない感情を、ずっと「いけすかない」の一言で片づけていた。
まともに話した回数なんて片手で足りるほどしかない。
それでも会話のテンポは悪くなかった。気を遣わなくていいから楽だ、と感じていたのも事実だ。
けれど、それは恋なのだろうか。
「……長谷川」
「どうした? 心当たりでもあるのか?」
「いや、ない。本当に分からない」
「……そうか」
あの目だ。
たまに功さんが向けてきた目。
何かを伝えたいのに言葉にできないような、どこか切なげな目。
何が言いたいんだ。
ボクはどうすればいい。
戦力が減るのが嫌なのか?
まあ、ボク最強だし?
「とにかく今は休め。何か分かったらすぐ言うように」
長谷川に続き、医務員たちも部屋を出ていく。
静寂が戻った病室で、ボクは天井を見上げた。
……保科か。
よく考えれば、あいつはかなりモテそうだ。
周囲に長身ばかりいるせいで小柄に見えるが、実際はそんなことはない。
オーバーサイズの隊服の下には、鍛え上げられた綺麗な逆三角形の体がある。
それだけじゃない。
上からは信頼され、下からは慕われる。
周囲への気配りも上手い。
……たぶん。
この前だって、ボクが貧血で少しふらついた時、飲み物を買ってきてくれた上に隊長室まで送ってくれた。
その時のボクは、長谷川や他の隊員に体調不良を悟られないようにするので精一杯で、
「おかっぱは立ち入り禁止だ!」
なんて言う余裕もなかった。
「どうして長谷川ですら気づかなかったのに分かったんだ?」
そう聞くと、保科は少し困ったように笑った。
「重心が少しブレてました。左に傾いてたような……?」
「えぇ……よく分かったな」
「まあ、鳴海隊長のことはいつも見てるんで」
「お前、もしかして暇なのか?」
少し引きながら聞くと、またあの目をされた。
そんな目を向けられても、ボクにはどうしようもない。
でも――。
あいつは亜白のことが好きなんじゃないのか。
ボクの誘いを断ってまで第三部隊に入ったんだし。
ずきり、と胸が痛んだ。
……あれ?
いつもなら腹が立つはずなのに。
今感じたのは、苛立ちではなく痛みだった。
どこかまだ怪我でもしているのだろうか。
検査では異常なしだったはずだが。
でも、もし。
百歩譲って、ボクが保科を好きだったとして。
普通に無理じゃないか。
今までの態度を思い返せば、保科がボクを好きになる理由なんて一つもない。
むしろ嫌われていて当然だ。
宗一郎みたいに完全無視されていないだけ奇跡かもしれない。
それに、あいつに恋人がいるかどうかも知らない。
たぶん亜白が好きだし。
――ゲホッ。
あ、まただ。
喉の奥から何かがせり上がってくる。
必死に耐えながら吐き出す。
生理的な涙まで滲んできた。
最強のボクが、こんなことで――。
ーー
暗い。
寒い。
まるで水の中に沈んでいるみたいだ。
遠くに光が見える。
動かない体を引きずるようにして近づくと、バカ弟子たちが楽しそうに話していた。
どれだけ叫んでも声が届かない。
いや、違う。
ボクが声を出せていないんだ。
なんで。
ボクもそっちに行きたいのに。
光の中にいたいのに。
もがいても動けない。
ふと視線を上げると、そこに保科がいた。
心底嫌そうな顔で。
「気持ち悪い」
――ヒュッ。
やめろ。
聞きたくない。
別に好きになりたくてなったわけじゃない。
そう叫びたいのに、口からは花ばかり溢れてくる。
保科は蔑むような目を向けたまま、光の方へ歩いていく。
その先には亜白もいた。
なんで。
なんでみんなボクを置いていくんだ。
隣では幼い頃の自分が泣いている。
ボクのせいなのか。
普通じゃないからか。
苦しい。
花が喉を塞いで息ができない。
――カヒュッ。
寝ている間にも花を吐いていたらしい。
目を覚ますと、服は汗でぐっしょり濡れていた。
重い体を引きずってシャワーを浴び、そのまま再びベッドへ倒れ込む。
翌日
― 保科視点 ―
長谷川にいつもより気遣われながらも引きずられて行った会議を終えた帰り。
「鳴海隊長」
「なんだ? ……チッ、なんだ。とっとと帰れ。おかっぱと細目は立ち入り禁止だと言っただろう」
「ほんまに悪口のレパートリー少ないですね。見た目いじりしかないんですか?」
「はぁ?」
案の定、嫌そうな顔をされる。
けれど今日は、どこか覇気がない。
「昨日の討伐、だいぶ大変やったみたいですし。疲れてるんちゃいます?」
「別に」
「僕まだ本部に用事あるんですよ。昼食べてから行こうと思ってて」
だから何だ、という顔。
「一緒にどうです? 食堂のおすすめ教えてくださいよ」
「なんでボクがお前と飯を食わなきゃいけないんだ」
「え〜、冷たないですか?」
「そもそもボクに聞いても分からないと思うが」
「何がです?」
「食堂で食べたことほとんどない」
「え?」
「食堂のおばちゃんに聞け。それじゃ」
歩き出した背中を慌てて追う。
「じゃあ普段何食べてるんです?」
「ゼリーとかカロリーメイトとか」
「それ食事ちゃいますよ。体壊しますって」
文句を言いながらも、鳴海はちゃんと答えてくれる。
「はぁ……お前、長谷川みたいだな。ボクは人と食べるのが苦手なんだ。諦めろ」
その声が、少しだけ寂しそうに聞こえた。
「……鳴海隊長」
「……っ、う」
突然、鳴海の膝が崩れた。
「えっ、どうしたんですか!?」
支えるが返事はない。
体が小刻みに震えている。
「誰か呼びましょうか? 長谷川さんとか――」
端末を取り出した手を掴まれる。
「……みる、な……」
「っ」
この人はどこまでも隠そうとする。
苦しくても、誰にも頼らない。
「一回、隊長室入りますね」
軽い体を抱き上げ、ベッドへ寝かせる。
「……ほんまに誰も呼ばんで大丈夫なんですか?」
背中をさすっていると、鳴海がゆっくり顔を上げた。
紅玉の瞳に涙が滲んでいる。
「なんで」
そう言ったように見えた。
次の瞬間。
――ゴホッ。
白いものが口から零れ落ちる。
花弁だった。
ところどころ赤く染まっている。
― 鳴海視点 ―
「っ……う、っ……」
涙が止まらない。
誰にも見られたくないのに。
頼りたくないのに。
それでも、背中をさする保科の手に安心してしまう。
その温もりが本来は自分に向けられるものではないと思うと、胸が痛んだ。
気づいてしまった。
ボクは、この男が好きだ。
最初から分かっていた。
ただ、その感情に名前をつけられなかっただけだ。
――ゴホッ。
最後の花を吐き出す。
ようやく呼吸が戻る。
「っ……ほ、しな……」
意識が遠のく。
最後に見えたのは、焦った保科の顔だった。
― 保科視点 ―
腕の中で意識を失った鳴海を見下ろし、保科は戸惑っていた。
何が起きているのか分からない。
ただ、この人がひどく苦しんでいることだけは伝わってくる。
「長谷川さん、呼ばな……」
そう思い、寝かせようとした時だった。
隊服の裾が掴まれていることに気づく。
その弱い力に、胸の奥へ説明のつかない感情が落ちた。
保科はそっと布団をかける。
そして静かに長谷川を呼びに向かった。
お疲れ様でした
長くかかった割には短いですね、、、
すみません
♡とコメント励みになります
待ってくださった方本当にありがとうございます
コメント
2件
やばい好きすぎる... なんかこっちの心臓が持たないって言うか...? 素晴らしい作品、ありがとうございました!
うわあ……第2話、めちゃくちゃ重くて切なかったです。鳴海隊長の「気づいてしまった」が胸に刺さりました。保科のことを好きだと自覚した瞬間に、花を吐くって……もうその対比が辛すぎる。しかも夢の中で保科に「気持ち悪い」って言われるシーン、あれ現実の不安がそのまま出てる感じでぞっとしました。保科が優しくて、でも鳴海は「亜白が好きなんだ」って思い込んでるのがまた切ない……。二人の視点が交互に入る構成、すごく好きです。続きが気になりすぎます!
つき☽*·̩͙
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