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都内某所、レコーディングスタジオのロビー。
白い壁と観葉植物が並ぶ無機質な空間で僕たちミセスはどこか落ち着かない様子で時間を待っていた。
「……今日、来るんだよね…。 」
若井が小さく頷いて言った。
手元のスマホを何度見ては、画面をスリープモードに戻す。
「マネージャーから連絡来てた。予定通り11時集合。 」
この時僕の声は少し震えていただろう。
「なんか…緊張するね」
涼ちゃんは苦笑いしながら言った。
「顔も本名も知らない相手とコラボするの初めてだし」
「っていうか、本当に仮面被って来るのかなぁ?だってメディアに取られる訳じゃないんだし 」
若井が少し茶化すように言ったが表情には本気の困惑があった。
僕の中には違和感が漂っていた。
ここに来るまで、何度も白鬼の仮歌を聞き返していた。
そして聞く度に湧き上がる”ある違和感”が、心の中でザワザワと揺れていた。
(……この声。やっぱり何処かで…)
その時だった。
「失礼します。」
ロビーの自動ドアが開き、スーツ姿のスタッフ達が一斉に入ってきた。
その数、およそ8人
イヤモニや資料を持っている様子からして、
白鬼のスタッフ。
「多くない?」
若井が小さく頷く。
僕も無意識に立ち上がる。
そしてーーその”人”がスタッフの中央から姿を
現した。
白鬼。
角があり、口元には複雑な模様が入った白い鬼のお面をを被っている。黒いマントを着ていて体型もあまりわからなかった。
その佇まいでわかる。
異質だった。
まるでこの空間だけ、違う時間軸ご流れているような空気をまとっていた。
僕たちの前にたって、一言も発さず、軽く頭を下げた。
深く丁寧に。まるで演者が舞台に立つように
ぼく達へ言葉を失った。
「……本物だ。」
涼ちゃんが小さく頷く。
その声がきっかけとなったかのように白鬼のマネージャーが話し始めた。
「こちらが白鬼です。
本日はどうぞよろしくお願いします。 」
白鬼は再び頷く。
その所作は、緊張でも不安でもなく何処か儀式のような落ち着きがあった。
━━胸が一瞬だけ強く引き締められた。
(1度あったことあるような…)
けれど、仮面の奥のその目は見えない。
声もまだ発されていない。
本当の答えはまだなかった。
「……よろしくお願いします」
一歩前にでて、そう声をかけた。
白鬼は、仮面越しに僕を見つめて頷いた。
言葉は交わさなくても、何かが始まろうとしていた。
音楽がその沈黙を繋ぎ始めていた。
投稿遅れてしまいすみません
この物語は私の中でしっかり書きたいので頻度が少ないと思いますがよろしくお願いします!
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