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ニコニコ超会議でガッチマンと出会ってからキヨの生活は劇的に変わったと言えよう。それもそのはず、ガッチマンはキヨを弟のように可愛がり蝶よ花よと実況者としてのキヨを育てあげたのだから。だがそんなキヨにも問題点がある。キヨは比較的謙虚で褒められてもそんな事ないと自分を遜てるのだが、とある1点においては有り得ないほど自己肯定感が高いのだ。というのも、先述の通りキヨはガッチマンからそれはそれは可愛がられ姫のように扱われて来たのだ。故に”ガッチマンは俺のことが一番好き”と言う点においては他の追随を許さない程信じ切っているのである。キヨもキヨでガッチマンを兄のように慕い懐いているのでなにかの比較対象もガッチマンである。例を挙げるなれば、実況者としての理想像、実況者としての時間配分、編集技術、トーク、ゲームスキル…、ゲーム実況者という職においてキヨの全ての比較対象はガッチマンなのだ。そして当の本人であるガッチマンもゲーム実況者として完璧だったのだからキヨの理想像も必然的に爆上がりした。因むとこれほどガッチマンに侵されたキヨはそんな自覚が全く無いのである。迷惑な話だ。少しした集まりの時にやはりガッチマン然り他の人のビジュアルや要領の良さ、人柄についての話題が上がる。その時キヨはさして興味を示さないが”ガッチマンよりも”という言葉が聞こえた途端足を止め、対象の相手を視界に入れてみたりして首を傾げ、こう思う。”ガッチさんよりもかっこよくないなぁ”。なんと失礼な話だろう。当の本人であるキヨは単なる疑問なので悪気なんて全くない。ただ単純に不思議です、分かりません、なんて顔をしているものだから周りの人は言葉に困るのは常。
そして今回もそのようなことが起こったパーティー会場。一人の女性がキヨに話し掛けた。
「こんにちは、キヨさん…ですよね?」
「…はい、なんですか?」
人との接触をあまり好まないキヨは少し背を丸め俯き気味に相手を伺う。相手の女性は気が強そうで香水の匂いがキツい。はっきり言ってキヨの苦手な部類である。
「キヨさんってガッチマンさんと仲良いですよね?」
「まぁ、そうですね」
「でも、はっきり言ってあなたのこと鬱陶しいと思ってると思うんですよね、」
「…えっ?」
キヨは思わず腑抜けた声を上げた。その様子が愉快だったのか女は高々と続ける。
「いやぁ、あんなに可愛がられてたのにって思う気持ちも分かりますよ、ただ普段の様子からしてあまりキヨさんを好んでないと思うの。」
「そんなことないですよ」
「…え?」
「いや、だってガッチさんが俺の事嫌いとか有り得ないですし…誰かと勘違いしてるのでは?」
「は??」
「ガッチさんの話で合ってますよね?」
「え、えぇ…」
「同姓同名なら頷けますが、ホラゲ王のガッチさんの話なら有り得ないですよ」
「随分と…調子がいいですね、?」
「いえ、事実なので。」
「っ、この…!」
女の顔が引き攣り始めた所でキヨは思わず身構える。振り上げられた手を見て目を瞑る___が、思っていた衝撃は来ないし、なんなら女の呻き声が聞こえる。
「…、あぁ、ガッチさん。」
「もう、また変なこと言ったの?」
「言ってないよ、聞かれたことに答えてただけ。」
「じゃあなんでこの人は殴ろうとしてるの」
「分かんない、俺の何かが気に障ったんじゃない?」
「はぁ、でもまぁ…うちの可愛いキヨに傷をつけられるのは困るからね、」
「ひっ、」
「だから…、早く帰ってもらってもいいかな?」
女は悔しそうに唇を噛めばハイヒールを鳴らしてその場を後にした。
「まったく…何言ったの。」
「いや、あの人が”ガッチさんはキヨのことが嫌い”なんて言うから。そんなことないよって言っただけ。」
走り去る女の背を見ながらキヨはそう言う。その言葉にガッチマンは片眉をひょいと持ち上げ首を少し傾げる。
「随分と俺に懐いてるね?」
「…違った?」
少し目を伏せこちらに顔を向ければ上目遣い気味にガッチマンを見やるキヨは言ってしまえば扇情的。雌が雄を誘惑するソレのような仕草にガッチマンの口角はひくりと引き攣られる。
「違わないよ、俺の姫。」
「ふふ、それ何?」
「キヨは俺の姫なんだよ。だからこんなに可愛がってる。」
「はぁー?意味分かんない。」
「そのうち分かるよ、ほら帰ろ。家まで送るよ。」
そうっと差し出したガッチマンの手をなんの躊躇もなく掴むキヨはもう既にガッチマンに教え込まれていた事を知らない。
コメント
2件
あ〜〜……ありがたい……🥹🥹🥹🥹🥰🥰🥰🥰
いやあ・・・好きです。 姫扱いされてるキヨも好きだし、それをわかってるガッチさんもまた・・・ 好きです。声を大にして言いたい。