テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#ご本人様には関係ありません
@Somi. 👻🍼
235
53
このお話は本人様とはまったく関係のない小説となっています。体調不良表現が多く出てきますので、理解した上でお読みください。
誤字とかあれば指摘してください!!初めての体調不良小説、、、!!最後まで読んでね🫶
鼓膜を激しく揺らす大歓声と、眩しいほどのスポットライト。ツアー最終日のステージは、間違いなく最高潮を迎えていた。
「ラストーー! 駆け抜けるぞ、お前ら!」
hltの歪んだギターリフが炸裂し、rykの鮮やかなキーボードの旋律がそれに重なる。フロアの熱気は一気に爆発した。
だが、ステージの真ん中に立つmtkの視界は、さっきから不自然に歪んでいた。
(……あともう少し。あと1曲だけ……)
ここ数ヶ月、バンドの躍進に伴ってスケジュールは過密を極めていた。連日の移動、深夜に及ぶレコーディング、そしてこの全国ツアー。蓄積した疲労は、確実にmtkの身体を蝕んでいた。限界などとうに超えている。
マイクを握る指先が、自分のものとは思えないほど冷たい。激しい動悸が胸を突き上げ、肺が酸素を拒絶するように縮み上がっていく。
「っ……、は……」
hltが不穏な空気を感じ取り、演奏しながらmtkの背中に視線を走らせた。いつもならイントロで飛び跳ねるはずのフロントマンが、マイクスタンドにしがみついたまま微動だにしない。
「mtk……?」
その呟きがマイクに拾われるより早く、mtkの膝がガクリと崩れた。
「mtk……っ!?」
hltの叫びと同時に、ステージの照明が暗転する。しかし、客席のどよめきを遮断するように閉まっていく幕の向こう側で、mtkを襲う苦痛はすでに限界を迎えていた。
「っ、ひゅう、……が、あ……っ!」
倒れ込んだmtkの意識は、すでに深い闇の底に落ちていた。それなのに、肉体だけが強烈な酸素飢餓にパニックを起こしている。意識がないまま、拒絶するように喉がひうひうと鳴り、浅く激しい呼吸が異常な速さで繰り返される。
「mtk、しっかりしろ! 目を開けろ!」
駆け寄ったhltが肩を揺さぶるが、mtkの瞳はきつく閉じられたままだ。ただ、苦痛のあまり眉間には深く皺が刻まれ、その顔はみるみるうちに血の気が引き、土気色へと変わっていく。
「hlt、動かさないで! 完全に意識が飛んでる、過呼吸のせいで過換気症候群の硬直が始まってるんだ!」
rykが鋭い声を上げ、mtkの身体に触れて息をのんだ。
mtkの指先は内側へ異常に巻き込まれるように硬直を始め、全身がガタガタと小刻みに震えている。完全に自分の意思では呼吸をコントロールできていない。
「はっ、ひゅ……っ、けほっ、あ、……う、呼吸、が……っ」
mtkの胸が、壊れた機械のように不自然に、激しく上下する。空気を吸い込みすぎているせいで胸がパンパンに膨らみ、吐き出すことができない。喉の奥から、乾いた、獣のような喘鳴が漏れ出す。
意識がないはずの目尻から、生理的な苦痛の涙が止めどなく溢れ、こめかみを伝って床に落ちた。
「クソッ、呼吸が早すぎる……っ! 酸素が回ってない!」
hltがmtkの冷え切った手を握りしめるが、その手は死人のように冷たく、硬く強張っている。爪の先は酸素不足で紫色に変色するチアノーゼを起こしていた。
「救急車! 早く救急車呼んで!!」
普段は冷静なrykが、舞台袖のスタッフに向かって声を荒らげた。
「mtk、聞こえるか? 吸うな、吐け……! 頼むから息を吐いてくれ……!」
rykはmtkの胸元を緩め、少しでも楽になるよう祈りながら、その激しく波打つ胸を手で優しく押さえた。mtkの呼吸のペースを無理にでも落とそうと、自分の呼吸をわざと大きく、深く繰り返して耳元で聞かせる。
「……すぅ、……はぁー。mtk、この音に合わせて。吐くんだ、吐いて……」
「……っ、が、……は、あ……っ」
しかし、mtkの身体は深く苦しい絶望のなかに閉じ込められたままだ。激しい過呼吸のせいで、今度は全身の筋肉が硬直に耐えかね、弓なりにしなるようにビクンと大きく跳ねた。
「mtk!!」
hltが思わずその身体を強く抱きとめる。腕のなかのmtkは、驚くほど冷たく、ただただ苦しそうに、浅い呼吸を刻み続けている。その胸の音は、壊れる寸前の時計の針のように速く、不規則だった。
ピーポー、ピーポーと、けたたましいサイレンがステージ裏の搬入口に響き渡る。
ストレッチャーが運び込まれると同時に、救急隊員の鋭い声が飛び交った。
「20代男性、ライブ中に意識消失、過換気症候群による全身硬直およびチアノーゼあり! 酸素投与行います!」
手際よくmtkの口元に酸素マスクが当てられ、そのままストレッチャーごと救急車の車内へと運び込まれていく。
「俺が乗る! ryk、お前は――」
hltが叫ぶと、背後で機材やスタッフの対応に追われていたrykが、苦渋に満ちた表情のまま力強く頷いた。
「わかってる、ここは俺が引き受ける。スタッフと客席へのアナウンス、全部説明して後から追うから。……mtkを頼んだぞ、hlt!」
「応!」
ガタン、と救急車の重い扉が閉まり、激しい加速と共に車体が走り出す。
車内は、狭く、無機質で、不気味なほど緊迫していた。
モニターの電子音が規則正しく鳴り響く中で、mtkの身体はなおも苦痛に震えていた。
「っ、ひゅう、……が、あ、……っ」
酸素マスクのプラスチックの奥で、mtkの唇は紫色に変色したままだ。意識がないというのに、喉を鳴らすような痛々しい呼吸音は一向に収まらない。吸い込みすぎた酸素を身体が拒絶し、胸が張り裂けんばかりに激しく上下している。
救急隊員がバイタルを確認しながら、「落ち着いて、息を吐いて」と何度も声をかけるが、mtkの耳には届かない。
「mtk……、mtk……っ」
hltはストレッチャーの脇にへたり込み、mtkの硬直した右手を両手で包み込むように握りしめた。
指先は氷のように冷たく、まるで行き場のない苦しみを訴えるように、内側へきつく巻き込まれたままピクリとも動かない。
いつも、ステージの真ん中で誰よりも眩しい笑顔を見せていた相棒。
どんなに過酷なスケジュールでも、「みんなが待ってるから」と笑ってマイクを握っていた、俺たちの最高のボーカル。
そのmtkが、いま、目の前で死に物狂いで呼吸を貪り、意識のないまま涙を流して苦しんでいる。
その姿を見ていたら、hltの胸の奥から、堰を切ったように恐怖が押し寄せてきた。
「ごめん、……ごめん、mtk……っ」
ぽろぽろと、大粒の涙がhltの目から溢れ、mtkの冷え切った手の甲にボタボタと落ちた。
「俺、お前がしんどいの気づいてたのに……っ、昨日も顔色悪いって思ったのに、なんで止めなかったんだよ……っ。……なぁ、目開けてくれよ、mtk……!」
声を押し殺して泣くhltの肩を、救急隊員が静かに叩く。
「同乗者の方、しっかりしてください。お仲間を安心させるために、声をかけ続けてあげてください」
「っ、……あ、……はい、……っ」
hltは袖で乱暴に涙を拭ったが、溢れる涙は止まらない。それでも、震える声で、mtkの耳元へ必死に言葉を紡いだ。
「mtk、怖くないからな。俺がいる、ずっとここにいるから。もう歌わなくていい、頑張らなくていいから……。ゆっくり、息吐いて……。お願いだから、戻ってきてくれよ……っ」
hltの涙がmtkの手に触れ、必死の祈りの声が響く中、救急車は夜の街を猛スピードで病院へとひた走る。
マスクの奥のmtkの呼吸は、なおも「ひゅう、ひゅう」と、悲しい悲鳴を上げ続けていた。
「間もなく病院に到着します! 搬入準備!」
救急車のバックドアが開いた瞬間、夜の冷気と共にストレッチャーが滑り出す。
「20代男性、過換気症候群から昏睡、重度のテタニー(筋肉の硬直痙攣)あり! 酸素10リットル投与中ですが、呼吸が全くコントロールできていません!」
救急隊員がストレッチャーを押し、走る。hltはmtkの手を握ったまま、死に物狂いで並走した。
救急救命センターの自動ドアが開き、眩しい蛍光灯の光がmtkの顔を照らす。
その姿は、目を背けたくなるほどリアルな苦痛に満ちていた。
「っ、ひゅう、……がっ、……あ、っ……!」
意識がないにもかかわらず、mtkの喉からは肉体が引き裂かれるような喘鳴が絶え間なく漏れている。
過呼吸が長引きすぎたせいで、血液中の二酸化炭素が排出され尽くし、pHバランスが異常にアルカリ性に傾いていた(呼吸性アルカローシス)。その結果、全身の末梢神経が異常興奮を起こしている。
mtkの指先は、まるで木炭のように硬く、内側へカギ爪のようにねじ曲がっていた(助産師手様の手硬直)。前腕の筋肉は岩のように強張り、ピクピクと不規則に波打っている。
それだけではない。顔面の筋肉まで痙攣し、唇が不自然に引き攣れ、口元から白い泡混じりの唾液が溢れ出ていた。
「mtk……! 嘘だろ、おい……っ!」
hltの知る相棒の面影はどこにもない。肉体が生きるために拒絶反応を起こし、ただただ壊れていくような恐怖。
「胸郭の動きが異常です! 息を吸い込みすぎて肺が過膨張(エア・トラップ)を起こしてる! 呼吸筋が疲労して、これ以上自力での換気は不可能です!」
医師の声が響く。
mtkの胸は、もう限界までパンパンに膨らみきり、痙攣するように細かく震えるだけで、空気を出せていない。
チアノーゼはさらに悪化し、顔だけでなく、耳たぶや爪先までどす黒い紫色に変色していく。
「動脈血ガス分析急いで! 気管挿管の準備、鎮静剤用意して!」
医師や看護師たちがmtkの身体を囲み、衣服がハサミで切り裂かれ、胸に何本もの電極パッドが貼られていく。
「mtk! がんばれ、mtk……っ!」
hltは看護師に押し出されそうになりながらも、叫び続けた。
その時だった。
「は、……が、っ…………」
mtkの喉の奥から、ひときわ大きく、乾いた音が漏れた。
それを最後に、あれほど激しく狂ったように動いていたmtkの胸の上下が、ピタ、と嘘のように止まった。
「……mtk?」
hltの頭が真っ白になる。過呼吸が治まったのか、と一瞬思った。
だが、そうではなかった。
mtkの身体から完全に力が抜け、ねじ曲がっていた指先が、だらりとベッドの横に垂れ下がった。
直後。
頭上から、鼓膜を突き刺すような「ピーーーーーーー」という平坦な電子音が鳴り響いた。
心電図の緑色の波形が、完全な一本の直線(フラットライン)に変わる。
「心停止(CPA)!!」
医師の鋭い怒号が響いた。
「脈拍触知不可! 心室細動、いや、静止です! すぐに胸骨圧迫開始!!」
「1、2、3、4、5……!」
看護師がmtkの胸の上に飛び乗り、骨が軋むような音を立てて全力で胸を押し始める。
「嘘だ……、おい、待てよ……」
hltは腰が抜け、その場に崩れ落ちた。
「嘘だろmtk!!! 目を開けろ!!! mtkーーーーーー!!!」
処置室の重い扉が閉まり、hltは白々しい廊下へとはじき出された。
扉の向こうからは、人工呼吸のバッグを押す音と、心臓マッサージを刻む規則正しい、残酷なカウントだけが響いていた。
「hlt……っ! mtkは、どこ……?」
廊下に響く足音と共に、息を切らしたrykが飛び込んできた。ライブの衣装のまま、髪は乱れ、顔は青ざめている。
崩れ落ちたまま床を凝視していたhltは、ゆっくりと顔を上げた。その目は真っ赤に腫れ、涙でぐしゃぐしゃだった。
「ryk……、俺……、俺……」
「落ち着いて、hlt。何があったの?」
rykがhltの肩にそっと手を添えたその時、処置室の重い扉が開き、疲弊した表情の医師が出てきた。
「……ご友人の方ですね。心マッサージとアドレナリン投与、除細動により、先ほど心拍は再開しました」
「心拍……? 倒れただけじゃ、なかったんですか……?」
rykの頭が、初めて現実を拒絶してフリーズする。過呼吸の悪化による重度の低酸素脳症、そして心停止。医師から告げられた言葉は、あまりにも残酷だった。
「一命は取り留めましたが、脳へのダメージが懸念されます。現在は昏睡状態です。自発呼吸ができないため人工呼吸器に繋いでいます。……今夜が山場です」
昏睡状態。今夜が、山場。
医師が去った後、rykの身体からすうっと力が抜けた。いつも冷静にバンドを裏で支えていた彼が、壁に背中を預けたまま、ずるずると床にへたり込む。
「嘘でしょ……、mtk……。何やってるんだよ……」
rykは顔を覆い、指の隙間から声を押し殺して涙を流した。いつもはメンバーを優しく導くその手が、今は小さく震えている。hltはその隣で、ただただ自分の無力さに拳を握りしめるしかなかった。
数時間後。さまざまな管やモニターに繋がれたmtkは、集中治療室(ICU)の奥へと移された。
感染症のリスクを避けるため、2人に許されたのは、ガラス越しの面会だけだった。
「……ちっさいな、mtk。」
hltがぽつりと言った。
無機質なガラスの向こう、いくつもの機械に囲まれてベッドに横たわるmtkは、ステージの真ん中で輝いていた姿が嘘のように小さく見えた。
口元には太い人工呼吸器の管が挿入され、機械が規則正しく空気を送り込むたび、mtkの胸が不自然に上下する。心電図の音だけが、彼がまだ生きていることを証明していた。
rykがガラスにそっと手を触れる。
「mtk、聞こえる? ……全部僕の責任だ。限界だったのに、スケジュールを詰め込んで、気づいてあげられなくてごめんね。……でもね、ライブの残りの曲、客席のみんなが代わりに歌ってくれたんだよ。mtkのバンドは、最高だってさ」
rykの穏やかで、けれど涙に震える声に、hltもガラスに一歩近づいた。
「mtk。mtkがいないと、俺のギターの居場所がないんだよ。rykの鍵盤も、mtkの声がないと完成しない。……だから、絶対戻ってきて。どれだけ時間がかかっても待ってるから。次は、飽きるまで休ませてやるからさ」
ガラスの向こうのmtkは、ピクリとも動かない。深く、深い眠りの中で、ただ機械の音だけが響いている。
それでも、2人は信じていた。彼の魂が、まだここで戦っていることを。
「……行こう、hlt」
rykが涙を拭い、柔らかく、けれど強い眼差しで言った。
「僕たちには、mtkが戻ってくる場所を守る義務があるからね」
「……うん」
2人はもう一度だけ、眠る相棒の姿を瞳に焼き付けた。そして、互いの震える肩を支え合うようにしながら、静まり返った夜の病院をあとにした。
読んでくれてありがとうございます🙇♀️
初めてかいたけどどうかな??好評だったらこの続きも出すからいいねよろしくね!!
コメント
1件
このお話、すごく引き込まれました…! ライブ中の熱気から一転、mtkさんの体調が急変する緊迫感が生々しくて、読んでいて息が止まるようでした。特にhltさんが「気づいてたのに」と泣きながら謝る場面が胸に刺さります…。初めての体調不良ものとは思えない細かい描写力で、続きがとても気になりました!