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あなた達は前世を信じるだろうか。
この出だしでこれから説明することが分かる人もいるだろう。そう、私には前世がある。
前世って言っても特にスキルを持っていたわけでもなく、かといってこの世界のことがわかる、というわけでもない。いたって平凡な人生を送り、ちょっとばかし特殊な死に方をしただけのただの一般人なのだ。
まあ特殊っていっても私の前世の世界ではわりと珍しくない死に方だったかな?銃で撃たれて死ぬ人間なんて今考えてみればほぼほぼいないでしょ。まあここにいるんだけど。
閑話休題。まずは私のいる世界について説明をしようか。今の世界は前の世界に負けず劣らずクセが強い。
個性、というものが存在し、様々な能力をもった人々が世界中に溢れている、それが今の世界だ。
この世に生を受けてから驚いたよ。お母さんは髪が自在に動くし、お父さんはなんか力が強くなるらしいし。周りの人は動物のような人間もいたりしてそれはもうびっくりした。
でもここで順応しちゃうのが私なんです。前世で積み重ねた鋼の精神力、ここで役に立つとは。
ちなみにこの世界はヒーローという存在があるらしく、お父さんもヒーローなのだとか。なんかもうすげえよ。
と、いうわけで伝わったかな?私の今いる現状は。誰に説明してるのかって?まあそれはおいておこうか。
そしてわたしは15歳。受験の時期だ。正直ここまできつかった。子どもの擬態は疲れる。高校生ともなるとそれももう必要ないだろう。進路先だが、父も母も雄英高校出身だからか、私にも通ってほしいらしい。偏差値ばか高いのに正気か?私は今世でも平凡ぞ?それに私には進みたい道がある。警察官だ。
ここの世界では疎まれている職業らしいがそんなの関係ねえ。だって私前世は警察官だったし。志半ばで死んでしまったのだからもう一度目指したっていいだろう。
このことに両親は難色を示したが、雄英高校に進学する、という条件でこれから先の警察官への道を保証するということになった。くそう。雄英は確定かよっっっ…
そうと決まってからは鬼のように勉強をした。前世の頭脳は私の同期ほどでなくとも人よりはいいほうであったし、それにプラスで勉強しているのだから判定はAが続いている。やったね。
そういえば私の個性なのだがなぜか私が前世得意であった柔道が活かされた個性ではなく、かつて一番大切だった人の特技、狙撃が私の個性となった。
発動は簡単。手を銃のように見立て、撃て、と脳内で指令するだけで指から銃弾のようなものが発射される、というなんとも恐ろしい個性である。ちなみに目はズーム可能。
これは個性2つ持ちなのか?と思うこともあるが銃の形にした手を構えているときにしかズーム機能は発動しないのでギリ一つのみだろう。2つ持ちとか最強かよ。転生したら最強だった件とかお呼びじゃない。
そして時は流れ4月。雄英高校入学式。
試験も色々あったなあ。接近戦ができないから、オブジェクトのビルの上から仮想ヴィランロボの心臓部分を撃ち抜くという地味なことしかできなかったのに次席で合格。気づいて評価してくれる人がいてよかったよ…てか次席って何ぞ?まあここまで頑張ったし正当評価ということで受け止めているけどこんなに成績がだせるなんて少しびっくりした。
前世は同期二人がツートップで順位に入る隙もなかったからね。とくに一位の方はやばい。人間の皮を被ったゴリラだ。せめて人であってほしかった。
まあそれはおいておき。私が配属されたのは1A。………………………なんで?
いやまあなんとなく気づいてはいたよ。進路に有利だからといってヒーロー科を受けたけども。1Bか最悪普通科かなって思ってたんだよ。でもまさかの次席。そりゃ1Aですわ。大丈夫なんかな?ついていける気がしない。南無。
それでも警察になるための布石だと思えば!やけくそだ!やってやんよヒーロー科!
その意気込みでどうにかなる訳もなく。絶賛扉の前でチキリ中です。
いや扉デカくね?バリアフリー?ユニバーサルデザイン?よくわからんけどこれ以上の扉を日常生活でみたことがない。ええ、こんぐらいのデカさじゃないと通れない人もいるの?逆にそれ扉はくぐれても教室で授業受けれるの?
うだうだ扉の前で考えているとおめでたそうな色合いをしたひとがこちらを一瞬見て訝しげな顔をした後になんでもないかのように入っていった。
…おお、イケメンだ。イケメンは扉に入る姿もイケメンなのか。なんて思っていると急に自分の目前の悩みがひどくつまらないものに感じた。ゴリラでももっとマシなことで悩んでるわ。
意を決して教室へ入る。一瞬の注目ののち、興味はそれぞれ別の方へ離れていく。
教室のすこしざわついた雰囲気に懐かしさを感じる。前世は、問題児だったけど頼れる同期が5人もいた。
今はもういないけど、それでもあのときの青は今でも胸を焦がすものがある。
指定された自分の席に着いてぼんやりしていると、燃えるような赤が視界に写った。
「よお!俺は切島鋭児郎。個性は硬化で好きなモンは漢らしいものと肉だ!よろしくな!」
目があった瞬間に怒涛の自己紹介。私じゃなきゃ聞き逃してたね。しかしすごいコミュ力だ。見習ったほうがいいんだと思うけど私には一生むりそうだなあ。
「えと、わたしは御上瑠衣。個性は狙撃。よろしくね、切島くん。」
「おう!てか個性狙撃?なのすげーな!おれ近接戦しかできねえから遠距離できるの尊敬する!」
ファーストコンタクトはばっちりじゃないか?当たり障りのない、いたって普通な自己紹介だったと思う。のになぜかそれに食いついてくる切島くん。まあでも褒められるのは悪くないな。
「あ、ありがとう…!切島くんこそ私にはない近接ができるの尊敬するよ…!」
「そ、そうか?嬉しい…!」
照れながらも嬉しいといってくれる。なんだ君は?ワンコか?
お互いにニマニマしながらおしゃべりしているとこのクラスの担任である、という相澤先生が現れた。現れたって言うとなんかモンスター出現、みたいな感じだけど本当にそうなのだ。ぬるっと出てきた。
相澤先生、前世の教官と似たような圧があるな。でもその本質は教官と同じように優しいのだろう。
切島くんも、やさしげな雰囲気と情熱が彼に似ているところがある。どうしてだろう、声も顔も全然似てないのに。
ああ、だめだ。思い出すと悲しくなる。もう二度と出会えない人たちなのに、会いたいと願ってしまう。
私はこの世界の中でまた、大切な人と出会えるのかな?
ねえ、景光。
御上瑠衣
前世は警察官。所属は公安。日本のヨハネスブルグと言われるところのとある組織の潜入捜査中に同じく潜入捜査をしていた同期をかばい死亡。
その同期には淡い思いを抱いていたが自覚することなく亡くなった。
警察学校時代の同期5人を自分の命より大切に思っていた。
油断で死にかけた長髪の尻を蹴り、独断行動をする天パの足をひっかけ、勘違いで引き金を引こうとした猫目をひっぱたき、浮ついていた彼女持ちに喝をいれ、抱え込むゴリラの荷をいっしょに背負った。
亡くなった原因は猫目をかばってのこと。大切な人を守れたのでオールオッケー。でも寂しい。
「体が勝手に動いたんだよ…って、テンプレすぎるかな?…出会えて…良かったっ…!」
猫目
二度も彼女に助けられた人。一度目は自決をしようとした自分を泣いて止めてくれた。 眼の前で赤色が散るのを目の当たりにしてSAN値ごりごりに削られ、腕に抱きしめた彼女の体温が下がっていくのを感じて発狂。最初で最後の口付けは冷たく、鉄の味がした。
「俺は!君に何度も助けられたのに…!…なあ、好きだ、好き、愛してる、目を、開けてくれ…」
ゴリラ
幼馴染も、大切な同期も、自分も救ってくれた彼女のことをとてもとても大切に思っていた。幼馴染が思いを寄せていたのは知っていたため、自分は身を引いたが、こんなことになるのなら伝えておけばよかったと一生の後悔をした。
「僕は君に大事なものを守ってもらったのに僕は、僕は…眼の前にいる一人すら守れないのか…!」
天パ
警察学校を卒業してすぐに連絡が取れなくなった彼女にまた会えたかと思いきや会った場所は爆弾との密室。こいつとなら心中もありかもな、なんて思うくらいには好きだし、心を許していた。また再開できたらプロポーズも考えていた矢先に訃報。荒れる、どころじゃすまなかった。
「てめえはいつもいつも!ぱっと現れてぱっと消える…!夢幻でいいから…もう一度、呼んでくれよ…」
長髪
こちらも天パと同じく彼女に好意を寄せていた。自分の油断で彼女を庇いきれず、彼女に傷が残った時は絶望したが、彼女が、守ってくれた証、として大切そうに見つめるもんだから好意天元突破。訃報を聞き、自分も死んでしまおうか、と割と本気で思った。が、自分の傷も彼女を守った証だと思うと消したくなかった。
「君を守ってついた傷も、君を失ってついた傷に比べちゃ軽いけど、消したく、ないんだよなぁ…」
彼女持ち
自分や自分の仲間を大切に思ってくれるので恋愛感情ではないにしろ、好きだった。自分と間接的に自分の一番大切な人を守ってくれた矢先に訃報。助けてくれたお礼に、と恋人と一緒に色々計画していた中での報せだった。憔悴した同期を慰めるが自分も限界。でも同期たちの方が気持ちを知ってた分辛いってわかってる。
「俺の未来を守ってくれた、俺のヒーロー…ゆっくり、休んでくれ…」
切島鋭児郎
なにもしらない。瑠衣のことはやさしそうでいいやつだなっておもってる。
おめでたい頭
なにもしらない。たぶん性格が合う。
続かない