『四角関係なんて好きじゃない』〜この気持ちに嘘はつけない〜
番外編 『あくねこ学園VS白猫学園』後編
華道室。
『随分綺麗な華道室だな。』
『管理してるのは私ですから。部長として。』
私は華道用の着物に着替える。
『花澄さん…綺麗だな…。』
『あぁ。見慣れてるはずなのに、いつもより綺麗に見えるな。』
『頑張って下さい、花澄さん。』
『では、最後の勝負ですね。紬会長と花澄さんの華道の生け花の勝負です。テーマは夏です。テーマに相応しい生け花をお願いします。 』
『『はい。』』
『制限時間は1時間。初めっ!』
それぞれ花をとり、生けていく。
パチンっ。パチンっ。
『なぁ、ユーハン。俺、花澄さんの部活の姿知らないから聞いてもいいか?』
『えぇ。なんですか?』
『あんな不規則に茎を切るものなのか?
生け花って。』
『本来なら、生ける時に必要な長さしか切りません。でも彼女はそれすらも芸術に変えてしまいますから。あの茎も後ほど使うので見ていれば分かります。』
『お、おう。』
『花澄さんの華道での異名は…『清廉なる蝶』蝶が花を求めるように花もまた蝶を求める…そんな生け花をすることからそう呼ばれています。』
『部長の生け花はいつみても綺麗…いいえ。
麗しいという言葉がお似合いだわ。』
(ふん、花澄の奴、あんなに茎を残して…
何に使うつもりだ?)
『会長の生け花…凄く綺麗。』
『えぇ。会長は幼い時から生け花をやっているのよ。花澄より少し早く。それなのに花澄が現れてからは一度も賞は取れなかったそうよ。』
『会長が負けたらもう私たち…』
『バカ言うな。会長が負けるわけないだろ。』
『……。』
パチンっ。
『出来ました。』
『これが俺の今の出せる全てをかけた夏です。』
『嘘…これが生け花なの…?』
『芸術作品だわ……。』
『美しいだろう?ふん、俺の勝ちは確定だな。』
パチッ!
ハサミの切れる音が静寂を呼び起こす。
『…出来ました。』
『これが私の作品です。』
『……っ!』
『なんて綺麗なの…?』
『美しいという感想は不要です。そうでなければ生け花とはいいません。』
『先生。公平な判断をお願いしますよ。』
『えぇ。分かっています。贔屓など致しませんわ。』
(紬さんのは夏らしいイメージを全て取り込んでいる…。この向日葵といい、百合といい…色合いを考えてるわ。だけど、花澄さんのはそれ以上の、驚きがある。まさか、夏を思わせる涼し気な色しか使わないなんて。朝顔に、クチナシ…夏といえば向日葵が1番先に思い浮かぶ。それを根本から覆すなんて…。)
『決まりました。私が夏らしいと思ったのは――。』
『花澄さんの作品ですわ。』
『なっ…!何故です!華道の師である貴方がどうして花澄の…!』
『お黙りなさい。花澄さんの作品をよく見ましたか?』
『え…?』
『気付きましたか?ロノさん。』
『え?』
『花澄さんの、作品…全て無駄がないんです。』
『!』
『さっき切った茎は形を変えて植え込まれてるでしょう?』
『あ…っ。』
『紬さんも気付いたようね。そうよ。彼女は
切った茎も再利用して根っこにしたの。これから来る秋に向けて…緑がねぶくように。』
『だけど、でも、テーマは夏ですよ!?こんな、単調的な色しか使わない花澄の作品に俺が劣るなんて…!』
『確かにあなたの作品も美しいわ。凛とした向日葵を基調とした素晴らしい作品です。だけどね。勝ちたいというあなたの心根が花にも伝わると……それはもう生け花ではないのよ。』
『そんな…。俺が、また負けるなんて。』
『……ふぅ。』
私は息を吐く。
『これで私の勝ちですね。紬会長。
もう二度とうちの敷居は跨がせない。それと
私の大好きな学園を馬鹿にすることは絶対に許しません!』
『く…っ!』
『…だけど。勝負の世界ならいつでも私はいる。かるたでも囲碁でも将棋でもなんでも掛かってきてください。いつでも御相手しますから。』
『『『『『かっこいい……。』』』』』
『は?』
『花澄さん!もう一度私とかるたして!』
『俺と将棋をやってくれ!』
『私とも囲碁を!』
『私とぜひもう一度手合わせを…』
『花澄!俺にもっと生け花を教えてくれ!』
『え?は?あの、困ります…。』
『なんなんだこいつら…急に態度変えやがった。』
『最後の言葉に胸打たれたみたいだね……』
こうして勝負は幕を閉じてあっという間に夕方になっていた。
私は着替えてバスティンとデートに向かう。
『やっと二人きりだ。』
『え?』
グイッ!
バスティンは私の手を取る。
『ここからの時間は誰にも邪魔させない。』
バスティンは私の手を取って走り出す。
次回
第14頁 独占したいというワガママ。
コメント
1件
主ちゃんおめでとう! まあ勝つの知ってたけど! ( *¯ ꒳¯*) 主ちゃんが作った生け花見てみたい!絶対綺麗じゃん! 僕もこの学校行きたいって思っちゃうほどこの作品好き!