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古流斬
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#鬱展開
Mist-404
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(…)
(…ゃん)
(…兄ちゃん。)
(大丈夫か?兄ちゃん!)
「兄ちゃん!大丈夫か!おお!目ェ開けはったわ!!」
…ん?なん…だ?どうしたんだ?
「…えと、僕は…イタ!!」
左足首に激痛が走る。
見ると包帯が巻かれている。
「ええから!ゆっくりしとき!!」
男は起き上がろうとした僕を介助して寝かせた。なんだかやたらとでかくて色黒で…岩みたいな人だ。
「あの、…ありがとうございます。」
岩のような男は笑った。
「いやいや、困ったときはお互い様や。もともと人間なんて迷惑かける生き物や。」
…悪い人ではなさそうだ。話し方から西とか南日本の人なのかな?
「は、はぁ。とにかくありがとうございます。でも僕はどうして…。」
男はまったく、と両膝を手で叩いてから説明してくれた。
「あんな、兄ちゃん。兄ちゃんは俺らの目の前で、”みんなデータ”やとかなんとか喚き散らしながら暴れて、最後に気絶したんや。多分あれやな、ARGOの”制裁ワード”にでも引っ掛かったんやろ。…あかんで、おおっぴらに”ここが現実やない”みたいな事言うたら。気付いても口にチャックしとかんと。」
…な、なんだって?僕以外にもこの事を知っている人が居るなんて!
僕は思わず叫んだ。
「な、なぜあなたがそのことを知ってるのですか?ここが実際はアルファ…」
岩男は人差し指を口の前に立てて顔をしかめた。
「シィー!!アカン!大きな声出したら!誰が聞いとるかわからんへんやろ!? 」
岩男はすぐにちゃらけた感じで笑った。
「…なーんちゃって 。まぁここやったらええわ。大丈夫大丈夫 。」
いったいなんなんだ?結局言っていいのか悪いのか…。
岩男は立ち上がった。
「まぁ詳しい話は晩メシでも食べながらしようや。そろそろ出来てる頃や…動けるか?…肩貸すわ。」
僕はゆっくりと支えられて立ち上がった。
歩き始めてぐるっと見回してみると、ここは洞窟みたいだった。
「あの…ここは?」
男はデカい図体でおどけた。
「何処やろな〜。内緒!!まぁ兄ちゃんはちゃーんと元の場所に送り返したるさかいに…そやから早よ治しぃな。」
…なんかはぐらかされてしまったような。
…広い洞窟だなぁ。結構奥に進んだけど…ん? なんだ?
あの装置は。
「あの…あれは?」
「あぁ、あれ?あれは日焼けマシンや。 ここお日さん届かんからな。
…日焼けしてんと、健康ちゃうやろ?」
あまり追求するのはやめた。
…それにしてもこの人の白と赤の横縞シャツ、どこかで見たような…。
そうだ! ARGOに逆らうテロ組織「”日体大”ー日進体育大計画」の服じゃないか! 突然現れてはARGOのサーバーを破壊してまわる世界的な狂団だ!!
これは…僕はいったいどうなるのか。
岩男は僕の方を見た。
「ん?なんや、兄ちゃん。
…俺等のことわかったんか?」
僕は恐る恐る聞いた。
「…日体大の方…ですか?」
男は目を見開いて笑った。
「うおっ、当たり!! 。よお知ってるなぁ。」
…なんか軽いなぁ。
DUPAガキといい、体制に従属しないのってみんなそうなのか?
岩男は素性バレしたことを意に介さずに歩き続けた。相変わらず愛想もいい。
「…今日は兄ちゃんはお客さんや。仲良うしよな。」
こうなったらもう素直に行くしかない。
「…僕、ユウって言います。」
岩男は僕を見て笑顔になった。
「ユウくんか 。…そんな固ならんでええ。 ただみんなで”鍋”つつけばいいんや。大勢でひとつの飯を囲む、これが”絆”っちゅうもんや。」
僕達は先に進んでいき、ついに同じユニフォームの人達と合流した。
「ほら、お客さん目ぇ覚まさはったで!」
という岩男の声掛けに皆返事を返す。
…やっぱり彼らも皆、岩のような大男だった。
…ゴツい。
「ちーす!」
「お疲れっす」
「どもっす」
「SACRIFIっす!」
ドゴッ(殴られる)
「なんやねんそれ 笑」
「笑」
…これって時代劇の”タイイクカイ系”っていうのにちょっと似てるなぁ。
ひと通り僕は挨拶をしたあとに席に通された。と言っても地べたに座布団のシンプルな広間だった。
「ほら、兄ちゃんはここ座って、うん。そう。…ほな食べましょか。」
僕を誘導してくれた岩…リーダー、なんだかリーダーっぽいのでそう呼ぶことにする。
リーダーが、音頭を取って食べ始めるようだ。
「!」
リーダーは話し始めようとしたが、すでに食べ始めていた仲間がいたようだ。
すると彼はすくっと立ち上がり、ズカズカとその仲間に近づいて行った。
”ゴッ!”
う…痛そうなゲンコツの音だ。
リーダーが怒鳴った。
「お前っ、お客さんが”先”やろがい!!」
「う、うす!」
頭を押さえながら殴られた男は力ない返事をした。
僕は慌てて言った。
「あ、いや、良いですよ。そんな…。」
リーダーは僕を制止した。
「あきまへん!コイツのためになりません!!」
「うす!…どもっす!!サーセンした!!」
ゲンコツを貰った彼は僕の前に来て深々とお辞儀をした。
それらを終えたリーダーは改めて乾杯の音頭を取り、食事は始まった。
僕も恐る恐る皆の食べ方を真似て鍋”というものを食べようとしていた時、僕の隣に戻ってきたリーダーは彼らを指さして言った。
「ほんますみませんでした。…でも、あいつらはこうやって世間の事覚えていくんです。
ーあのね、僕はやっぱり最後はどうしてもぶん殴らないとわからん奴っておると思っとるんですわ。」
僕は黙って聞くしかない。
「は、はい。」
「そうやって育って、ここ出た後、社会で成功しとる者もおるんです。
.. 個人の権利やら尊重やら言うて放ったらかしにした結果が、こんなアホばっかの世の中になったと思ってます。
ーなぁ!!そやよなぁ!お前ら!!」
「はい!!」
そこらから頷いたり、同意の返事が聞こえてくる。
とんでもない場所に来てしまった。
熱くなってきたリーダーは僕にジョッキを見せた。
「今日は飲みニケーションでしっかり盛り上がり、語り合いましょう!!」
まったくついて行けていない僕。酒なんて…。
「え、えと」
「まず見本!誰か!!」
リーダーは近くの仲間の襟首をぐいと掴んだ。
「一お前でええわ。ジョッキ持て!みんな、ええか!?
ほな、乾杯ーー!!
それイッキイッキイッキ…」
…凄まじい同調圧力。
だけど確かに今まで感じたことのない連帯感も感じた。
全員(僕以外)
「ぶはぁ〜!!」
ご、豪快すぎる。
全員でジョッキを空けて、生身の鍛え上げた胸板でぶつかり合ってる。
…さっきゲンコツをもらった彼もその事などすっかり忘れて端でTシャツを破いて赤い顔で仲間にタックルを決めてる。
…なんて頭が悪くて非効率で、
…でも清々しくもあった。
彼らはただの暴徒でもサイコでもなく、共に食べ、寝て、競って絶妙なバランスで団結している。
こんな家族とか絆みたいな曖昧な言葉で集まった集団を、ARGOは理解できるんだろうか。
…なんて事を考えているとリーダーがそばに来た。
「食べてまっか?兄ちゃんは無理せんでええで。さっきまで倒れとったんやからなぁ。
…ハッハ、見てみ、あそこのフル○ン 笑 。良うやるわ。
ん…おい、お前!ハッ◯やめ!服臭なるわ!
…あぁ、すんません。
で、結構あんな奴《フル○ン》らが1番最初に、大事なもんのために命投げ出しよるんですわ。」
「…え?」
ー僕はリーダーの視線の先にいる男を見た。…確かに見てられない。低俗過ぎてこっちが恥ずかしい。ただ…
なんだよ。
クソ…。
…彼…なんかが結構凄いだって?
確かに僕は…ただ…まだ何もしてないのに勝手に打ちのめされて…
…そうか。
まだ何もしてないんだったな。
ーフル○ンが頭突きをされて床で股間を広げて悶えている。
怒…クソッ!なら、
僕にだって、
僕にだってさ!
僕はリーダーの傍に置いてあった2Lのジョッキを掴み、左足を引き摺りながら皆の真ん中に行った。
大男たち
「?」
ーそして…
思いっきり、吠えた。
僕
「えー!えー僕は”ヒトミ ユウ”って言います!!今日は助けていただいてありがとうございました!!僕は…僕はこれからARGOをブッ壊します!約束します!!そして、
その前に!!
皆さんの盃!!
あおらせていただきまーーす!!
大男たち
「ウオーーー!!!」
揺れる洞窟。
(もうどうにでもなれ!!)
リーダー
「行げ〜!!」
僕
「行きまーーーす!!!!」
(ゴクッ ゴクッ ゴクッ ゴクッ)
(ゴクッ ゴクッ ゴクッ ゴクッ)
(ゴクッ ゴクッ ゴクッ ゴクッ)
僕
「(ぶはぁ〜)うおーーー!!!」
その叫び声で右腕は金色に輝き、その輝きがどんどん上がっていき洞窟中を金色に染め上げた。
大男たち
「ウオーーーー!!」
驚きと歓びで洞窟が唸る。
皆が僕に向かって走ってくる。
ー胴上げされていた気がする。
こうして僕は今日2回目の気絶をした。
(続く)
コメント
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第10話、読ませていただきました! 「日体大」の皆さん、めちゃくちゃ個性的で圧倒されましたが(笑)、あの豪快な連帯感と「まだ何もしてない」と気づくユウくんの覚醒シーン、胸が熱くなりました。2Lジョッキを掲げる姿、カッコよかったです。続きがすごく気になります!