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ピコロン⚡
りんね@サブ垢
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文化祭準備は、佳境に入っていた。
生徒会室には資料と段ボールが積まれ、空気は 張りつめている。
ひよりは壁際の机で、最終確認のチェック表を見 ていた。
「小鳥遊さん」
名前を呼ばれて顔を上げると、一ノ瀬が立ってい た。
「少し、時間もらえる?」
周囲が一斉にこちらを見る。
朝比奈が眉をひそめた。
「会長、今–」
「大丈夫。皆は続けてて」
それだけ言って、ひよりに目を向ける。
断れる雰囲気じゃなかった。
廊下に出ると、少しだけ静かになる。 一ノ瀬は歩きながら、前を見たまま言った。
「最近、無理してない?」
「….. してません」
反射的な答えだった。 一ノ瀬は足を止める。
「嘘だね」
責める口調じゃない。 でも、逃げられない。
「噂のことも、仕事の量も。君は全部、一人で抱 えがちだ」
ひよりは視線を落とした。
「私がやりたいことなので」
「それと、限界は別だよ」
一ノ瀬は、ひよりの手元にある資料をそっと取っ た。
「君はもう“手伝い”じゃない」
はっきりした声だった。
「生徒会の中核だ。失ったら困る」
ひよりの胸が、強く脈うつ 。
「だから」
一ノ瀬は、少し間を置いてから続けた。
「俺は、君を優先する」
それは宣言だった。
「何かあれば、まず俺に言って。外の評価も、噂 も、全部俺が処理する」
廊下の向こうから、誰かがこちらを見ている気配 がした。
でも、一ノ瀬は気にしなかった。
「特別扱いだって言われても構わない」
ひよりは、言葉を失った。
「….. どうして、そこまで」
一ノ瀬は少し困ったように笑った。
「理屈じゃない」
それから、真っ直ぐに言う。
「君がここにいるのが、当たり前になった」
その一言で、全部だった。
生徒会室に戻ると、空気が変わる。
一ノ瀬は、全員の前で言った。
「小鳥遊さんの最終判断を、優先する」
朝比奈が一瞬目を見開き、すぐに苦笑した。
「…..了解」
誰も、反対しなかった。
守られている。 選ばれている。
それを、もう隠さなくなっただけ。
ーー次回、最終話