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太宰の言葉が静かに夜の空気に溶けていった。


「美琴……その、ずっと前から好きでした」


美琴は一瞬、呼吸を忘れたように目を見開いた。蝉の声も止んだように、世界がふたりきりになった。


太宰の目は、真っ直ぐに美琴を見ている。いつもの軽い冗談や飄々とした態度はそこになくて、ただ、真剣で、不器用で、心からの想いがこもっていた。


美琴はそっと唇を噛んだ。


(本当に……太宰くんが、私を……?)


彼の言葉が胸の奥にじんわりと染み込んでくる。鼓動が高鳴る。小さな手が膝の上でぎゅっと握られていた。


「……私も、ね」


小さく、でも確かに声を出す。


「最初は、ただ一緒にいるのが楽しくて。太宰くんの話を聞くのも、バカみたいな冗談に笑うのも……全部、普通のことみたいに思ってたけど」


彼の目が少し見開かれ、息をのむのがわかる。


「でも、ある日気づいたの。太宰くんがいないと、なんだか寂しくて。目が合うだけで、嬉しくて。……そういうのって、たぶん、好きってことなんだよね」


太宰の目が、静かに揺れる。口を開こうとして、何も言えず、ただ美琴を見ていた。


「だから……私も、好き。太宰くんのこと」


そう言ったとき、頬がじんわりと熱くなった。恥ずかしくて目をそらしたけど、次の瞬間、太宰が小さく笑ったのがわかった。


「……ありがとう、美琴」


その声は震えていて、けれどどこか、今まで聞いたことがないほど優しかった。


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