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「夏休み明けてもあっちぃなぁ」
「分かる〜!その上プール無いしな!」
9月半ばのとあるお昼休みに、クラスの男子が窓辺で下敷きで扇ぎながら話している。
田んぼにはトンボが飛ぶようになったのにも関わらず暑い日が続き、昨今の地球温暖化には度肝を抜かれる思いだ。
「なぁ、轟。お前の氷で冷やしてくれよ」
轟「個性使っちゃダメなんじゃないのか?」
「少しなら平気だって!な?」
男子達の思いに渋々了承しながら轟は左から氷を出す。
途端にクラスに居た全員が涼しい〜!と声を漏らし、教室内には初夏のような爽やかさが広がる。
「やっぱ轟すげぇわ…」
「てかさ、これ授業中もやってくれよ~」
ダメに決まってるだろ、と呆れ顔の轟に男子たちは笑いながら肩を叩く。
そんな中、教室の端で静かに寝ていた──がふと窓の外に目をやった。
青空の中を、ひときわ大きな赤とんぼが横切っていく。
『……秋、来る気あるのかな』
思わず呟いた声は誰にも届かず、冷えた空気の中に溶けていった。