私と百合明さんはスタートラインに立った。シーナがフィールドの設定をしてくれてた。
設定が終わると、私たちの目の前にメニューボードが出た。メニューボードは、ガラスのような見た目をしており、対象者以外の操作は、すり抜ける。
ボードに使用する武器を選択し、決定ボタンを押した。
両者の決定ボタンが押され、カウントダウンが始まった。
十、九、八、、、
背中の鞘から剣を抜いた。
沈黙が、余計緊張感を増加させている。
相手は、格上。だけど、後悔しないように戦うんだ。
そして、「DUEL START」という、アナウンスで、試合は始まった。
私はアナウンスと同時に地面を強く蹴り宙へと、飛び上がった。
そして、脳内でスキルを構築し、高らかに叫んだ。
「サンダーストライク!」
私の右手から電気矢が飛び出し、百合明さん目掛けて飛んだ。
それを見逃さない百合明さん。
「スキル名を叫ぶとは、相手に対策してくれと言っているようなものだぞ」
刀で、軽く軌道をずらされ、矢は地面に刺さった。
滞空時間に限界が来た私は、そのまま落下した。落下する途中で、技の構えを作り、片手剣範囲技〈花火〉で落下の衝撃を完全に殺した。
異世界とはいえ、落下して地面に落ちれば、足は痛いし、ダメージも受ける。
〈花火〉は、文字通り剣で大きな衝撃を放ち、花火の様な形を作り出す技である。
私は、夜に照明みたいに使うことが多い技だ。使い方間違ってるけどね。
「そう簡単には、くらってくれないんだね」
「当たり前だ、私は強さを求める。剣の道を歩む者として、私は正々堂々とこれだけで勝負してやろう!」
それは、つまり。
一切魔法などを使わないと言うことか。
流石に剣技を使ってくるのは間違いないけど、刀技をこの世界で受けたことはないから実際の動きは分からない。
「さぁかかってこい、滴!」
「なら、お言葉に甘えて!」
私は、剣を振りかぶり、そのまま突進した。これは、片手剣単発技〈スラッシュ〉の基本の構え。ここから、剣技をどう使うかは、使う当人次第。
正面から突進してくる私を見て百合明さんは、微笑。
「そんな正直に正面から来るとは!舐められたものだ!」
正面にとんできた刀単発技〈一閃〉の斬撃は、この構えなら避けることは不可能。しかし、これが来ることを想定して私は、片足で突進していたのだ。もう片方の足は、そう。回避のための予備。そのまま蹴り出し、横へととんだ。
そのまま突進し続け、剣を右上から左下に振り下ろした。
「〈スラッシュ〉ッ!!」
百合明さんは私の技を軽く流すと、すぐに技の構えを作り、刀単発技〈一閃〉をすぐさま放ってきた。
(嘘ッ!そんなに速く技を!?)
私はすぐに守りの構えを作ったが、少し遅く、まともにくらってしまった。目線を左上に向けるとHPゲージは四割ほど削れていた。マズイ、、、次同じのをくらったら終わりだ。ここからは、もっと注意してかからなきゃ。
そして、私が百合明さんの方向に目線を向けると、そこに姿はなかった。
どこに行った!?
辺りを見ても居ない、ということは上!
上に視線を向けるとそこには彼女の姿があった。愛刀アメノウズメを上に振り上げ、技を放つ構えを整えていた。
「これで終わりだ、滴!!」
あの構えは、刀七連撃技〈龍閃光〉。これをまともにくらったら間違いなく終わりだ。どうするどうする、そうか!元のゲームと仕様が同じなら、刀連撃技は初撃の後に僅かなラグがある。それを突ければ、勝機はあるかも。
ブォンという図太い音とともに、刃が私目掛けて振り下ろされた。
(今だ!)
私は、片手剣単発技〈火影〉を使った。
〈火影〉は、今のような状況にうってつけの技なのだ。壁に追いやられている今、私の真下には影がある。この技は影から影へ移動することができ、移動した先で、一撃だけ、火属性が付与された攻撃ができる。私は、百合明さんの攻撃が当たるギリギリを狙って、顔面スレスレで真下の影へ移動した。そして、百合明さんの足元の影へと移動し、彼女の背後を取った。
「負けるかぁ!!!」
黒鉄の剣に赤いエフェクトが付与され、剣が真紅の炎を纏った。確実に一撃いれることだけに集中し、百合明の背中にクリティカルヒットを叩き込んだ。状態異常《火傷》の表示が彼女のHPゲージの横に付与され、微々的なものではあるが、永続ダメージを与えることが出来た。そして、彼女のHPゲージは七割削れている。もう、勝敗は、分からなくなった。ここからは、紙一重の戦いだ。私が後ろに下がろうとした瞬間、百合明さんがこっちに斬りかかってきた。そうだ!さっき放たれたのは、一撃。あと六撃が残っている。とにかく、今はこれを防ぎきらなきゃ。
私と彼女の武器の刃がぶつかった。ガキンッ!という金属の音が鳴り響き、お互いに地面を踏みしめた。元々筋力差が出たのか、私の方がやや押され気味である。
押されきる前に手を打たなきゃ、さっきから、百合明さんは、どうやって私の攻撃を。そうか、受け流す!
私は、ぶつかっている刃を少しずらし、攻撃をなんとか受け流した。その勢いのまま、私は百合明さんを蹴り飛ばそうとした。百合明さんは、私のように飛ばされることはなく踏みとどまり、次の技の構えを作った。私は、片手で魔法の構築、剣を持っている手で技を構築した。
「させるか!これで終わらせる!」
「こちらもだ!」
「ライジングストライク!!」
「〈龍閃光〉!!」
私の放った電気の矢は、百合明さんに僅かにかすったが、直撃はしなかった。そして、百合明さんは突進からの龍閃光の七連続攻撃。ただでさえ速い攻撃を軌道を複雑にし七連続で飛ばすだなんて、普通じゃない。こっちは、完全にアドリブで対抗した。これがハマらなかったら、こちらの負けだ。剣は技の構築で、防御に使えない。地面を強く蹴り、私は斬撃に向かってダッシュした。
「何をするつもりだ、自暴自棄になったのか」
「そうはならないよ、〈火影〉!」
「なっ!?」
次の瞬間、彼女の背後に出た私はそのまま火属性が付与された一撃を叩き込んだ。
そして、ジリジリと減り続ける百合明さんのHPゲージが一割になった瞬間、、、。
『GAME SET』のアナウンスが鳴り響き、終わったことによる安心感から、私は倒れ込んだ。同じく、大ダメージをくらった百合明さんも倒れた。
過呼吸気味の百合明さんは、不思議そうに私に聞いてきた。
「滴、、、教えてくれ。最後の、、、〈火影〉、どうやって私に命中させたんだ。あの場所には影なん、、てなかった筈だ」
「いや、影はあったよ。私が入ったのは、あなたが飛ばしてきた斬撃の僅かな影だよ。正直、賭けだったんだ。あそこに入れなかったら、私の負けだったよ」
「運の差という訳か」
「くすっ、、、う、うん。そうだね」
「何がおかしい滴」
「いや、こんな紙一重の勝負をできるなんて思わなかったからさ」
「そうだな、私はもっと強くなる理由ができた。ありがとう、滴」
「こちらこそ、ありがとうね百合明さん」
決闘エリアのHP自動回復システムが、私達のHPを全回復させた。私が百合明さんにつけた傷も消えたみたいだ。よかったよ、あんな傷残しちゃまずいからね、剣士的にも、女の子的にも。
立ち上がった私達は、握手を交わした。
「そうだ、忘れかけていたよ。これ、依頼報酬の五万ユピルだ」
「ああ、そうだったね。ありがとう」
私は、満面の笑みで答えた。報酬を受け取った私は二人でしばらく話した後、桜ノ園へと戻った。
「いや〜、勝っちゃった」
「ほんとだよ、まさか勝っちゃうとはね」
私とシーナは二人して驚いていた。
私は正直勝てると思っていなかったが、僅かな運の差で勝った、という結果になった。
「はてさて、これからどうするかねぇ」
「ん?旅にでも出るんじゃないの?滴」
「いやさ、百合明さんに勝ったとはいえ、私より強い人がめっちゃいるのは、これで分かった訳だしさ」
「それがなんだって言うのよ、ここ、初級クラスの街だよ」
「まぁね、、、だからさ、仲間集めをしようかなって」
「それは、つまりギルドを作るってこと?」
シーナが不思議そうに聞いてきた。
それに対して、私は答えた。
「うん、これからはやっぱり大人数で戦おうと思うんだ。敵も強くなってくるだろうし。だからさシーナ」
「んー?なーに?」
「私のギルド、入ってよ」
「嫌よ」
「じゃあ、家泊まらせてよ」
「嫌よ」
こうして、私のギルド立ち上げが始まった。ソロの戦いにもおさらばするんだ。
だけど、仲間本当に集まるんだろうか。
それに、本格的にアキの事を探さなきゃ。
絶対に見つけるんだ。待ってて、アキ。
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