テラーノベル
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nmmnです。🐙🌟×👻 🔪となっております。地雷の方、上記の内容のどちらかでも分からない方は、閲覧なさらないようお願いいたします。
ご本人様とは一切関係ありません。
2話以降このワンクッションは挟みません。
『🐙🌟』「👻 🔪」
軽い接触描写有り
短編と言っておきながら、とても長くなってしまいました。
解釈不一致を少しでも感じた際は、無理せずブラウザバックすることを推奨いたします。
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プシュッ。
『じゃあ、新居にかんぱーい』
「かんぱーい」
缶チューハイの中身を流し込めば、レモンの爽やかな香りが鼻を抜け、アルコールが疲れた身体に沁み渡る。
『はあー。疲れた』
「久々に飲むとうまいな。疲れてるから特に」
『ね、酔うの早そう。大丈夫かな俺』
今日は朝から引越し作業に追われていた。目の前にいる彼、小柳くんと2人で住む家だ。今は日も沈み、最低限生活できるところまでの荷解きは終わったため、夜ご飯がてら久々のお酒を楽しんでいる。
そもそも彼が飲酒しているところを片手で数えられる程度にしか見たことがないのだが、本人の言う通りお酒には強いようだ。覚えている限りでは、いつもより少し陽気になり、滑舌が甘くなるという酔い方だったはず。自分自身はお酒に強い方ではないため、慎重に飲まなければならない。酔った彼の姿は貴重なのだから、きちんと目に焼き付けておかなければ。
「テキトーに頼んでいいよって言ったけどさ、これはどうなん」
『たこ焼きですけど、気分じゃなかった?』
「お前自分から共食いしにいってるやん」
『この世は弱肉強食だから。弱いタコは強いタコに食われる運命なんだよ』
「この世の摂理ってやつか」
『そゆこと』
「残酷な世界だな」
話している内容はいつもの通話越しの会話と変わらない。だからこそ、彼が目の前にいるのが変な気分だった。浮わついている、と言うのが1番合っている気がする。仕方のないことだ。これから彼との2人暮らしが始まるのだから。
だらだらと贅沢に時間を消費していれば、気が付いたときには時計が23時を示していた。そろそろお開きにする時間だ。明日も荷解きをしなければならないし、午後からではあるが仕事が入っている。
『こやなぎくん』
「ん?」
俺は床に正座をして、膝の上をぽんぽんと叩く。
「なに?」
『おいで。膝枕してあげる』
彼は驚いた顔をして数度瞬きをした。あまりのあほ面に笑いが込み上げる。
別に、普段のスキンシップが少ないからという理由で、彼がこの反応を示した訳ではない。付き合ってからは、不意に隣に座った時の位置や、資料を見る際の距離は確実に近くなった。というより、彼の中で距離を測る必要がなくなったのだろう。彼はスキンシップを求められることが嫌という訳ではないようで、俺が求めれば大抵応じてくれる。彼から求めてくることも増えてきた、というのが最近の嬉しい話だ。しかし、意外にも膝枕は今までしたことがなかった。
『顔まぬけすぎ。はやくおいでよ』
彼は心なしか嬉しそうにしながら俺の膝の上に頭を乗せる。
「ほしるべ?」
『なぁに』
「酔ってるだろ。かおちょっと赤いぞ」
『そうだね、いい感じかも』
「先に風呂入れよ。ダブルで広いとはいえ身体も洗ってない、酒臭いやつの隣で寝たくない」
『ひどぉい!この状況でそれいう!?』
「大事なことだろ」
『ムードのかけらもないな。小柳くん酔ってないの?』
「そりゃちょっとは酔ってるけど、おまえほどじゃない」
『そこは「酔ってきちゃったあ…///」からのイチャイチャパターンじゃないの?』
「だるすぎおまえ」
『なんか今日辛辣じゃない?』
「すみませんね可愛くなくて」
『えぇ、どうしたの。かわいいよ、大好き』
そう言いながら彼の額にキスを落とす。彼の発言には少し驚いた。普段は絶対にそんなこと言わないのに。やはりお酒は偉大だ。
「もっかい」
その言葉に応えて、今度は彼の口にキスをする。
「はっ、かおまっか」
『うそぉ、明日やばいかなぁ』
さらさらと流れる彼の髪を梳きながら、何度も口を重ねる。明日も彼がこの家に居てくれるという幸せを噛み締めながら。
「はい、おわり。マジで風呂入らないとやばいから入れよ」
『おれ1人じゃふらついて入れないかもぉ』
「そこまで酔ってねぇだろ」
『ええー、むりぃ。いっしょに入ろうよー』
「だまれお前」
『おねがい!新しい家記念にはいろうよ!』
膝枕をしているから彼の顔がよく見える。じっくり見ないとわからないが、僅かに頬が染まっていた。酔った彼が特に押しに弱いのは知っている。得意の可愛い顔を作っておねだりすれば、彼は3回目で了承してくれた。
「ほら、早く準備しろよ」
『やったぁ!』
彼と一緒に入った新居のお風呂はとても心地よかった。お試しに買った柚子の香りがするバスボムはなかなかにいい仕事をしたと思う。
面倒見の良い彼は、酔っている俺に小言を溢しながらも髪を乾かしてくれた。幸せだな、というひとりごとは、ドライヤーの音にかき消されて彼の耳には届いていないだろう。それで構わない。ただ、この気持ちを声に出したかっただけだ。自分で思っている以上に俺は浮かれていたらしい。彼と暮らせる喜びを、声に出して自慢したくてたまらなかったのだ。
「おれも幸せだよ」
『え?なんかいった?』
「いや、何も言ってない。乾かせたよ」
『ありがとー』
「ほらはやく、寝るんだろ」
『たてなぁーい。手かしてー』
「お前は…」
そういいながらも彼は俺の手を引いて立ち上がらせると、そのまま寝室へと連れて行く。
「電気消すぞ」
『うん。おやすみ』
「おやすみ」
明日からの生活に胸を膨らませ、向かい合って眠りにつく。腕の中にいる彼からは、俺と同じ匂いがした。
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