もう、やめたかった。
セフレという関係を。
お互いに分かっている。
体目的だってことも。
そこに愛なんて1mmもないことも。
時計の音と外の車の通る音だけ聞こえる室内で、俺は一人、声を殺して涙を流していた。
好きだ。本当は。
俺の一方通行の片思いで、彼には全く届かない。
どこから間違ってしまったのだろうか。
机の上の写真。ステージの上で肩を組み、笑い合う俺とジェル。
あぁ。昔は良かったな。だなんて思う自分が居た。
もう、後戻りなんて出来やしないのに。
あの頃の彼を求めている。
幸せだった。
片思いでドキドキする毎日が。
幸せ?
…幸せって何だっけ。
恋する乙女のままが幸せか?
体を重ねるのが幸せか?
分からない。
もう、全く分からない。
そっか。彼が幸せと思うなら俺も幸せだ。
俺は思い立って、涙を拭き、勢いよく部屋を出た。
リビングでスマホをいじる彼に、質問をする。
『なぁ、ジェル』
『どした?』
『今って幸せ?』
『は?どした、まじでw』
『答えてほしい』
『さとみが居るから幸せやで』
『そっか』
『いや、まじで本当にどした?急に』
『なんでもない』
『えぇ…w』
良かった。幸せと思ってくれていた。
部屋に戻って、軽くガッツポーズをする。
さとみが居るから…か。
こんなにも嬉しいことあるだろうか。
ルンルン気分で机に向かって、編集を始めるためパソコンを立ち上げようとした時、気が付いた。
黒い画面に反射して写る俺の顔。
あれ。
なんで、泣いているんだろう。
コメント
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え、良きd(˙꒳˙* ) これからも活動頑張ってください!