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えのきのこ
67
屯所へ帰宅した頃には、もう空は紺色で塗りつぶされていた。
風も少し冷たい。
三人はぽつぽつと会話を交わしながら、やがてそれぞれ別の場所へと足を進めていった。
晩食時、隊員達がゾロゾロと食堂へ移動していく。
そんな中、山崎は向かう途中で一人の女性を発見した。
今日入隊した子じゃないか!
そう気付き、山崎はパァァと顔を輝かせた。
今日はどこの隊もあの女性の話でいっぱいだった。可愛いだの、美人だのと隊員達は盛り上がっていた。
まあそれもそのはず、真選組には今までむさ苦しい男共しかいなかったもので、”女”というのはもはや女神の領域に達する。
隊員達が湧き上がるのも当然なのである。
しかし、と山崎は小さくため息をついた。
あのような女性と我らが釣り合うわけがない。
ましてや、ジミーの俺に…
「すみません」
「うわあああああ!!」
突然声をかけられたもので、山崎はとんでもない悲鳴を上げてしまった。
いや、まてよ、この声には聞き覚えが…
声がした方へと視線を向ける。
「あっ、すみません。急に」
彼女の髪がとぅるん、となびいた。
紛れもなくあの女性である。
山崎はまた悲鳴を上げそうになった。一生関わる事なんて無いと思ってたのに!!
コホン、と気持ちを立て直し、笑顔で彼女に聞いた。
「いいよいいよ、それよりどうしたの?」
「あの、ぼっちは嫌なので、一緒に食べませんか?」
「ああ、なるほど……って えぇ!?」
思わず耳を疑った。彼女と?一緒に?ご飯を…?
自分は前世でどんな偉業を果たしたんだ、と無意味に心の中で問いかける。
「迷惑でしたら一人で…」
「いやいや全然いいよ!じゃあ行こうか!」
これをきっかけに仲が深まるかもしれない。
山崎は今にも天へと舞い上がりそうだった。周りの隊員が、いいなあ、と羨ましそうに此方を見る。優越感に浸らずにはいられなかった。
「よォ雌豚、どうせぼっちだろうと思ってきてやったぜィ」
この声が耳に入るまでは。
「お、沖田さん……!?」
「あぁ?なんでザキがここにいるんでィ」
沖田が面倒くさそうに山崎へと目を向けた。
山崎が困惑していると、彼女が口を開いた。
「すみませんがぼっちじゃありません」
そう言って山崎の手を握る。
「この人と一緒に食べるので」
山崎は爆発しそうになった。
手が!手が思いっきり触られてる!!
バクバクバクと心臓が思いっきり鼓動し始める。顔が熱くなっていくのが分かった。
「はァ?」
沖田の低い声で山崎は我に返った。
「じゃあ俺もついていく。いいよなァ?ザキ」
沖田の言葉に底知れない圧を感じた山崎は、yes以外の返答ができなかった。
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