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この世界には、「自由」という言葉が、ほとんど存在していなかった。
正確に言えば、完全に消えていたわけではない。
誰かが遠い昔に置き忘れたように、
概念だけが、うっすらと残っている。
それは辞書に載らない。
学校でも教えられない。
明確な意味を持たないまま、人から人へと曖昧に受け渡されてきた。
それは、まるで見つかっていない宝物だった。
存在するらしい。
価値があるらしい。
持てば人生が変わるらしい。
だが、誰も実物を見たことがない。
だから人々は、それぞれ勝手な像を結ぶ。
束縛がないこと。
命令されないこと。
責任を負わなくていいこと。
あるいはその逆。
何をしても許される、危険な状態。
秩序を壊すもの。
人を堕落させる概念。
自由は、常に語られる側だった。
決して、生きられる側ではなかった。
多くの人は自由を求めた。
なぜなら、正体が分からないものほど、人は夢を見るからだ。
けれど、ごく一部
自由を、明確に避ける人間もいた。
おんりーは、その一人だった。
自由は、信用できない。
理由は単純だった。
定義されていないものは、測れない。
測れないものは、管理できない。
管理できないものは、努力を裏切る。
おんりーにとって世界は、
積み上げることで形になるものだった。
考える。
練習する。
繰り返す。
失敗し、修正し、また前に進む。
そこには必ず、因果がある。
理由があり、結果がある。
自由という概念は、そのすべてを曖昧にする。
成功しても自由。
失敗しても自由。
逃げても自由。
何もしなくても自由。
そんな言葉を、
おんりーは信じなかった。
もしそれが本当に存在するなら、
それは努力を無意味にする。
選択を軽くする。
人間を、怠惰にする。
だから自由は、
「まだ見つかっていない宝物」であるべきだった。
見つからないからこそ、
誰もそれを証明しなくていい。
だがその日、
ドズル社の拠点で、
一つの問いが、何気なく投げられる。
それが、
止まっていた概念を、
静かに動かし始めることになるとも知らずに。
ドズル社の拠点は、いつも通り騒がしかった。
特別な出来事は何もない。
誰かが笑い、誰かが茶化し、誰かがため息をつく。
日常と呼ぶには、少しだけ騒がしすぎる日常。
おんりーはその中にいて、
自分の役割を、無意識のうちに果たしていた。
突っ込むところで突っ込み、
必要なところで動き、
余計なことはしない。
世界は、きちんと回っていた。
「なあ」
不意に、空気を切る声がした。
おおはらMENだった。
「自由って、何なんだと思う?」
一瞬、音が消えたように感じた。
ドズルが眉を上げる。
「急にどうしたの?」
ぼんじゅうるは苦笑いする。
「また哲学かー?」
おらふくんはニヤリと笑う。
「難しいこと考えすぎでしょ」
会話は軽い。
けれど、おんりーだけは違った。
その言葉は、
意図せずして、彼の中の触れてはいけない箱を叩いた。
「……知らない」
短く、硬い声。
「別に、知らなくていいでしょ」
明確な拒絶だった。
MENは意外そうに目を瞬かせる。
「そんなに嫌?」
「嫌だ」
即答だった。
「自由って言葉、
曖昧すぎるし」
おんりーは続ける。
「意味が定まってないものを、
ありがたがるのは嫌いだ」
ドズルが少し真面目な顔になる。
「おんりー、珍しいな。そこまで言うの」
「そりゃそうでしょ」
ぼんじゅうるが笑う。
「自由が嫌いって人、初めて見たかも」
おらふくんは首を傾げる。
「でもさ、自由って悪いもんじゃなくない?」
その言葉に、おんりーは目を伏せた。
「……悪いとか、良いとかじゃない」
「信用できないだけだ」
空気が、わずかに張る。
MENは黙っておんりーを見ていた。
からかうでも、否定するでもない。
その視線に、
おんりーは妙な居心地の悪さを覚えた。
「じゃあさ」
MENが、少しだけ声の調子を変えた。
「知ってから、嫌えばいいんじゃない?」
おんりーは顔を上げる。
「俺は、自由を知りたい」
その瞬間、
MENの口元が、ほんのわずかに歪んだ。
ニヤッ、とした笑み。
それは、誰にでも見せるものじゃない。
頼ると決めた相手にしか向けない、
あの表情。
おんりーは、それを知っていた。
「……やめて」
「何が?」
「その顔」
MENは楽しそうに笑った。
「やっぱ、分かる?」
分かるに決まっていた。
あの笑みは、
「お前なら大丈夫だろ」と
勝手に信じている時の顔だ。
「俺は行かない」
おんりーは言い切る。
「自由なんて、
調べる価値もない」
「調べるだけでいい」
MENは引かない。
「探すとか、
見つけるとか、
そういうのじゃなくてさ」
少し間を置いて、こう言った。
「一緒に考えてほしい」
おんりーは、何も言えなくなった。
頼られること自体は、嫌いじゃない。
むしろ、それを断る理由を、持っていなかった。
ドズルが口を挟む。
「二人で行ってみたらいいんじゃない?」
「そうそう」
ぼんじゅうるが頷く。
「おんりーが嫌がるってことは、
それだけ面白いってことだろ」
おらふくんも笑う。
「どうせすぐ帰ってくるかもだし」
逃げ道は、ゆっくりと塞がれていった。
おんりーは深く息を吐いた。
「……条件がある」
「なに?」
「答えは出さない」
MENは一瞬きょとんとして、
すぐに笑った。
「じゃあ、調べるだけだな」
おんりーは視線を逸らす。
「……二人で、ね」
「おう」
MENは即答した。
こうして、
定義されなかった概念は、
二人分の視点を得ることになる。
自由が嫌いな者と、
自由を知りたい者。
答えが見つかる保証は、どこにもなかった。
だが問いは、
確かに生まれてしまった。
二人の旅は、拍子抜けするほど静かに始まった。
特別な儀式も、宣言もない。
ただ、ドズル社の拠点を一歩出て、
「どこへ行くか」を決めないまま歩き出しただけだった。
「で、どうする?」
MENが軽い調子で聞く。
おんりーはすぐに答えなかった。
しばらく周囲を見回してから言う。
「……まず確認する」
「何を?」
「自由が“状態”なのか、
それとも“行為”なのか」
MENは一瞬考えて、笑った。
「いきなり難しいな」
「簡単にすると、こう」
おんりーは淡々と続ける。
「自由がある・ないで語れるものなら、
どこかに存在するはずだ」
「でもする・しないで変わるなら、
場所を探すのは間違ってる」
MENは頷いた。
「なるほど。じゃあ?」
「だから、いろんな“状態”を試す」
それは、探すというより、
条件を一つずつ潰していく作業だった。
最初に二人が向かったのは、
誰からも干渉されない場所だった。
指示はない。
役割もない。
時間制限も、成果の要求もない。
「ここならどうだ?」
MENは周囲を見渡す。
「誰も何も言わない。
やらなくても怒られない」
「確かに、制限はない」
おんりーはそう認めた。
だが、次の言葉は冷たかった。
「でも、これは“自由”じゃない」
「理由は?」
「何をしてもいい、って状況は
何をしても意味が変わらないってこと」
制限がないということは、
基準が存在しないということだった。
「評価されない行動は、
行動として成立しにくい」
MENは首を傾げる。
「評価されないとダメ?」
「少なくとも、
“自分が何を選んだか”が残らない」
自由とは選択の結果だ。
結果が残らないなら、それはただの空白だ。
おんりーは、
この仮説に静かに×を付けた。
次に二人は、
「やりたいことだけをやる」時間を作った。
面倒なことはしない。
気が向いたら動く。
飽きたらやめる。
MENは割と楽しそうだった。
「悪くないな」
おんりーは、少しずつ違和感を覚えていた。
「……疲れる」
「え?」
「楽なはずなのに、
ずっと判断を迫られる」
今やるか、やらないか。
続けるか、やめるか。
選択肢が多すぎると、
選ぶ行為そのものが負担になる。
「それに」
おんりーは続けた。
「好きなことって、
本当に自分で選んでるのか分からない」
「どういう意味?」
「過去に楽しかったから、
褒められたから、
得意だから」
それは好みではなく、
慣性かもしれない。
「衝動に従うのは、
自由じゃなくて反射じゃない?」
MENは黙った。
この仮説も、
完全ではなかった。
次は、責任を持たない行動。
失敗しても謝らない。
結果を気にしない。
誰かに迷惑をかけても、引きずらない。
MENは途中で言った。
「……これ、楽だけど」
「うん」
「なんか、薄いな」
おんりーは小さく頷いた。
責任を手放すと、
行動の重さも消える。
重さがない選択は、
記憶にも残らない。
「自由が軽すぎると、
人は自分を実感できない」
自由が欲しいと言いながら、
人が恐れているのは
自分が空っぽだと気づくことなのかもしれない。
この仮説も、却下された。
次に試したのは、完全な選択だった。
行き先を決めない。
時間を決めない。
役割を決めない。
「全部自分で決めていい」
それは、多くの人が思い描く「自由」だった。
だが、おんりーの感想は冷淡だった。
「これは、思考の放棄だ」
選択肢が無限にあると、
人は判断をやめる。
やらない理由が、いくらでも作れる。
失敗しない代わりに、何も積み上がらない。
「選択できることと、
選択することは違う」
自由とは、前者を与えるだけでは成立しない。
おんりーは、そう結論づけた。
その後、衝動に従って行動してみた。
やりたいと思った瞬間に動く。
疲れたら休む。
飽きたらやめる。
一見、束縛はない。
だが、おんりーは次第に苛立ち始めた。
「これは……支配だ」
「何に?」
「感情に」
衝動は自由に見えて、
実際には最も原始的な命令だった。
腹が減ったから食べる。
楽しいから続ける。
怖いから逃げる。
それは選択ではなく、反射。
「これを自由と呼ぶなら、
人間は獣と変わらない」
おんりーは、そう切り捨てた。
次は、かつて楽しかったことを繰り返した。
成功体験。
評価された瞬間。
笑われた記憶。
確かに、心は温かくなった。
だが
「これは、逃避」
過去に戻ることは、
未来を選ばないという選択だった。
「自由が前に進むものだとしたら、
これは違う」
MENは黙って聞いていた。
一度、場所に行こう。
そんなMENの提案におんりーは頷いた。
彼らは色々な場所を巡った。
誰にも指示されずに進む道。
決められた役割のない仕事。
初めて触れる文化、初めて会う人。
MENは楽しそうだった。
おんりーは、常に一歩引いていた。
「なあ、今のどうだった?」
「……別に」
経験したことがないことに挑戦しても、胸は高鳴らなかった。
怖さもあったが、それ以上に―空虚だった。
次は、昔楽しかったことをもう一度やってみた。
勝手に走り回る日。
意味のない遊び。
誰にも評価されない時間。
確かに楽しい。
笑えもした。
それでも、おんりーの中で何かが噛み合わなかった。
「これ、自由か?」
MENの問いに、おんりーは答えられなかった。
夜、二人は焚き火の前にいた。
答えは出ていない。
むしろ、否定だけが増えていく。
「なあ」
MENがぽつりと聞く。
「自由ってさ、
見つからない前提なんじゃないか?」
おんりーは少し考えてから答えた。
「見つからないんじゃない
作られてない、んだと思う」
「……?」
「自由は、
最初から用意されてるものじゃない」
おんりーは火を見つめる。
「選択して、
責任を引き受けて、
それでも続けた結果にしか、
形を持たない」
MENは、ゆっくり息を吐いた。
「じゃあさ」
「うん」
「俺たち、
まだ入り口にも立ってない?」
おんりーは、否定しなかった。
次の日
二人は、ドズル社の拠点から少し離れた場所に腰を下ろしていた。
距離としては、ほんのわずかだ。
歩けばすぐ戻れる。
それでも、おんりーには
そこがまるで別の世界のように見えた。
遠くから聞こえてくる声。
笑い声。
少し大きすぎるリアクション。
「……変だな」
MENが言う。
「何が?」
「俺たち、あの中にいた時より、
今の方が“見えてる”」
おんりーは黙って頷いた。
中にいるとき、
それを「環境」だと思っていた。
外に出て初めて、
それが選択の結果だと分かる。
「誰も、あそこにいろって言ってない」
MENは続ける。
「出ていくこともできる。
戻らないこともできる」
「……そうだな」
おんりーは、胸の奥に
小さな違和感が芽生えるのを感じていた。
強制されていない。
それなのに、戻りたいと思っている。
その事実が、
今までの仮説と、少しだけ噛み合わなかった。
おんりーの脳裏に、
ドズルの姿が浮かんだ。
大きな声。
豪快な笑い。
リーダーとしての立ち位置。
一見すると、
責任と制約の塊みたいな存在。
だが
「ドズルさんってさ」
MENが言う。
「一番“やめられる人”じゃない?」
おんりーは、はっとした。
確かにそうだった。
ドズルは、
続けることもできるし、
やめることもできる。
誰よりも選択肢を持っている。
それでも、
あの人は毎日ここに立っている。
「やめない理由を、
他人のせいにしない」
それは、
自由がない人間にはできない態度だった。
次に浮かんだのは、ぼんじゅうる。
軽口。
冗談。
場の空気を和らげる役割。
だが、
彼はいつでも一歩引ける。
無理に前に出ない。
背負いすぎない。
「ぼんさんは、
“選ばない自由”を持ってる」
MENが言った。
選ばない、という選択。
それもまた、自由だった。
おらふくんはどうか。
優しくて、天然。
流されない。
けれど、
孤立しないことを選んでいる。
おんりーが口を開く
「”周りと合わせる自由”かな、それとも——」
「”選ぶ自由”」
おんりーの言葉に続けるようにMENが言う。
MENは知っていた。
それでも、人に合わせることを選んでいるんだと。
世間に合わせるんじゃない。
ドズル社のメンバーと合わせている。
義務じゃない。
惰性でもない。
ただ、
“ここにいることを選んでいる”。
「……俺は?」
思わず、口に出た。
MENはすぐに答えなかった。
「おんりーはさ」
少し間を置いてから言う。
「一番、自由を行使してるんじゃね?」
「は?」
「やることも、
やり方も、
続けるかどうかも」
「全部、自分で決めてる」
おんりーは反論しようとして、
言葉を失った。
確かにそうだった。
期待されている。
頼られている。
でも、それを
“断れない命令”だと思ったことはない。
やっているのは、
自分が選んだ結果だった。
「……分かったかもしれない」
しばらく黙り込んでいたおんりーが言った。
「俺が、
自由を嫌ってた理由」
MENは何も言わず、待った。
「自由そのものが、
嫌いだったんじゃない」
おんりーは、言葉を探す。
「自由を持ってる自分を、
信用できなかった」
選んでしまったら、
逃げられない。
決めてしまったら、
失敗は言い訳できない。
自由は、
自分の未熟さを
真正面から突きつけてくる。
「だから」
おんりーは、静かに続けた。
「自由は、
努力を裏切るものに見えた」
でも、違った。
努力は、
自由があるからこそ意味を持つ。
やらなくてもいいのに、やる。
逃げられるのに、続ける。
その選択こそが、
積み上げになる。
「……じゃあ、自由って何なんだ?」
MENが聞く。
おんりーは、すぐには答えなかった。
「まだ、名前はつけない」
「お?」
「多分、
名前をつけた瞬間、
小さくなる」
自由は、
定義した途端に、枠になる。
「でも」
おんりーは、遠くの拠点を見る。
「少なくとも、
嫌いじゃなくなった」
MENは、あのニヤッとした笑みを浮かべた。
今度は、誇らしげに。
二人は、まだ戻らない。
けれど、
戻る場所を失ったわけでもない。
自由は、
もう宝物じゃなかった。
選び続ける限り、
手の中にあるものだった。
「……なあ」
MENが口を開いた。
「もしさ」
「うん」
「俺たち、
もう自由を“持ってる側”だったとしたら」
おんりーは、即座に否定しなかった。
それが、これまでと決定的に違っていた。
「その可能性は、
否定できない」
「だよな」
MENは軽く笑う。
「でもさ、
持ってるのに気づいてないなら、
それって本当に自由なのか?」
その問いは鋭かった。
自由は、
自覚されなければ成立しないのか。
それとも、
自覚がなくても成立するのか。
「……だから、次は」
おんりーが言う。
「“持ってない人”を見に行く」
MENは目を瞬かせた。
「比較か」
「そうだ」
自由がある状態を定義できないなら、
ない状態を観測する。
それは、
消去法としては正しい進み方だった。
二人が訪れたのは、
すべてがあらかじめ決められている場所だった。
起きる時間。
やる作業。
休む時間。
話していい内容。
「効率はいいな」
MENが言う。
「無駄がない」
「その代わり」
おんりーは静かに答える。
「考える必要がない」
選択肢がない世界では、
失敗という概念も薄れる。
だが同時に、
成功も個人のものではなくなる。
「ここで暮らす人は、
楽だと思う」
「でも」
MENが続ける。
「楽しそうでは、ない」
おんりーは頷いた。
自由がないと、
人は苦しむとは限らない。
ただ、
自分である必要がなくなる。
「これは、
自由が“ない”状態だ」
おんりーは、
はっきりとそう認識した。
次に二人が見たのは、
「自由がある」とされている場所だった。
選択肢は多い。
だが、そのすべてに
“正解”と“評価”が紐づいている。
「自由に選んでいい」
そう言われながら、
間違った選択をすると、
露骨に扱いが変わる。
「……これ」
MENが低く言う。
「自由の皮を被った、誘導だな」
「うん」
おんりーは目を伏せる。
「選んでいるようで、
選ばされている」
これは、
最も自由に見えて、
最も息苦しい形だった。
「失敗が許されない自由は、
自由じゃない」
おんりーは、
その言葉を自分に刻むように呟いた。
さらに進むと、
自由を“拒否する”人々にも出会った。
「決めたくない」
「選びたくない」
「責任を持ちたくない」
彼らは、
自由を恐れていた。
「……分かる」
おんりーは、
かつての自分を見ている気がした。
自由は、
人を甘やかす概念じゃない。
むしろ、
最も厳しい。
「だから嫌われる」
MENが言う。
「宝物みたいに語られるのに、
実物は誰も触りたがらない」
おんりーは、
小さく息を吐いた。
旅は続く。
観測は増えた。
否定も、理解も増えた。
それでも、
何かが足りない。
「……俺さ」
おんりーが言う。
「自由を、
“個人の問題”として見すぎてたかもしれない」
MENが視線を向ける。
「どういうこと?」
「自由って、
一人で完結するものじゃない可能性がある」
誰かと関わる。
期待される。
影響を与える。
その中で選ぶからこそ、
自由は輪郭を持つ。
「完全な孤独の中にある自由は、
観測できない」
MENは、ゆっくり頷いた。
「じゃあ、次は?」
おんりーは、少し考えてから言った。
「関係性だ」
「人と人の間で、
自由がどう振る舞うかを見る」
それは、
最も厄介で、
最も避けてきた領域だった。
まだ、答えは出ない。
自由は、
宝物でも、状態でも、
単純な権利でもなかった。
それでも一つだけ、
はっきりしてきたことがある。
自由は、
嫌われる理由を内包している。
そして――
それを嫌う自分を、
否定しなくていいということ。
「なあ」
MENが、
あの笑みを浮かべずに言う。
「この旅、
まだ続けるよな」
おんりーは、迷わず頷いた。
「途中でやめる自由もある」
「でも?」
「今は、
進む方を選ぶ」
答えは、
まだ先にある。
あるいは、
最後まで定義されないままかもしれない。
それでも、
問いはもう、
止まらなかった。
旅の途中で、おんりーは一つの結論に近づいていた。
自由は、
一人で考えている限り、どこまでも抽象になる。
選ぶのも、責任を負うのも、
自分だけなら簡単だ。
だが
そこに他者が介入した瞬間、
自由は形を持ち始める。
「一回、戻る?」
おんりーがそう言った時、
MENは少し驚いた顔をした。
「ドズル社?」
「……うん」
自由、という定義を見つけてから帰りたいと思っていた。
関係性の中でしか観測できないものがある。
そう分かってしまった以上、
戻らないという選択は、
もう“自由な判断”ではなかった。
ドズル社は、何も変わっていなかった。
声の大きさも、
空気の軽さも、
いつもの距離感も。
「お、帰ってきたじゃん」
ドズルが笑う。
「自由、見つかったか?」
冗談めいた問い。
けれど、おんりーは答えに詰まった。
「……まだ」
その一言に、
一瞬だけ空気が止まる。
ぼんじゅうるが肩をすくめた。
「相変わらず真面目だな」
おらふくんは静かに観察している。
MENは、何も言わなかった。
その沈黙が、
逆におんりーの中の思考を刺激した。
ここは、
“自由を語らなくても回る場所”だ。
だからこそ、
今の自分がここで何を感じるかが、
重要だった。
ドズル社は、何も変わっていなかった。
声の大きさも、
空気の軽さも、
いつもの距離感も。
「お、帰ってきたじゃん」
ドズルが笑う。
「自由、見つかった?」
冗談めいた問い。
けれど、おんりーは答えに詰まった。
「……まだ」
その一言に、
一瞬だけ空気が止まる。
ぼんじゅうるが肩をすくめた。
「相変わらず真面目だな」
おらふくんは静かに観察している。
MENは、何も言わなかった。
その沈黙が、
逆におんりーの中の思考を刺激した。
ここは、
“自由を語らなくても回る場所”だ。
だからこそ、
今の自分がここで何を感じるかが、
重要だった。
数日後、
小さなズレが起きた。
進行の仕方。
役割分担。
判断のタイミング。
以前なら、
おんりーは即座に最適解を選んでいた。
だが今回は、
一瞬、立ち止まった。
「……別のやり方もあるよ」
その言葉に、
ドズルが眉を上げる。
「あるけど、
今はこっちでいいんじゃない?」
「理由はある?」
空気が、わずかに張る。
「理由ってほどでもないよ」
「でも、選んでるし」
おんりーの声は、冷静だった。
だが、その冷静さが、
逆に場を刺激した。
ぼんじゅうるが割って入る。
「おんりー、今日どうした?」
「いつもより、
引っかかるな」
その言葉に、
おんりーの中で何かが軋んだ。
「引っかかるのは、
ちゃんと考えてるからだよ」
おんりーは、珍しく強く言った。
「流れで決めるのは、
楽だけどそれって、
誰の選択?」
ドズルの表情が変わる。
「僕たちのでしょ?」
「全員の?」
一瞬の沈黙。
おらふくんが口を開く。
「おんりー、
今までだってそうだったよ?」
「今までは、
疑問に思わなかっただけ」
空気が、
はっきりと重くなった。
MENは口を挟まない。
意図的に、
見守る側に回っていた。
「自由にやっていいって言うなら」
おんりーは続ける。
「選び方について、
考える自由もあるはずだ」
ドズルは腕を組んだ。
「じゃあ聞く」
「今のやり方が気に入らないなら、
代案は?」
その問いは、
おんりーにとって正面からの衝突だった。
「ある」
おんりーは、即答した。
それは、
自分で自分を驚かせるほど、
迷いのない返事だった。
「でも」
少し間を置く。
「それを選んで、
失敗したら」
視線を上げて、
はっきりと言った。
「俺が責任を持つ」
場が静まり返る。
それは、
今までのおんりーが
あまり口にしなかった言葉だった。
「……重いな」
ぼんじゅうるが、冗談めかして言う。
「自由って、
そんな重いもんだったっけ?」
「重い」
おんりーは、譲らなかった。
「でも、
重いから選べる」
その瞬間、
衝突は形を変えた。
対立ではなく、
判断の分岐点に。
結果は、
成功でも失敗でもなかった。
完璧ではないが、
崩れもしない。
「……悪くないね」
ドズルが、素直に言った。
それだけで、
おんりーの胸に
小さな熱が灯った。
「でも」
ドズルは続ける。
「毎回これだと、
しんどいよね」
「分かってる」
おんりーは頷く。
「だから、
全部を変えたいわけじゃない」
「選べる余地があることを、
確認したかっただけだ」
その言葉に、
おらふくんが小さく笑った。
「それ、
自由っぽいな」
おんりーは、
その言葉を否定せず、小さく笑った。
夜、
MENと二人になった時。
「結構、ぶつかったな」
「……ああ」
「後悔は?」
おんりーは、少し考えた。
「ないよ」
即答だった。
「初めて」
「何が?」
「自由が、
ちゃんと“他人に影響した”」
選択が、
関係性を揺らした。
でも壊れなかった。
それは、
自由が
わがままではない証明だった。
MENは、
あのニヤッとした笑みを浮かべた。
「進んでるな」
おんりーは、
視線を逸らしながら言った。
「……まだ途中だ」
自由は、
一人で完結しない。
だからこそ、
面倒で、
衝突して、
それでも価値がある。
この旅は、
まだ終わらない。
衝突のあと、
MENはしばらく一人になる時間が増えた。
誰かと喋っていないわけじゃない。
笑っていないわけでもない。
ただ、
考える時間が増えた。
「なあ」
ある夜、
MENはおんりーに声をかけた。
「俺さ」
言いかけて、止まる。
おんりーは急かさなかった。
「自由を知りたいって言い出したの、
正直、理由あったんだ」
「……うん」
「このままでいいのか、
分かんなくなった」
MENは笑う。
でも、いつもの軽さはなかった。
「ドズル社ってさ、
楽しいし、好きだし、
居場所でもある」
「でも」
言葉が、少し詰まる。
「それに甘えてるだけなんじゃないかって、
思った時があった」
おんりーは、初めてその話を聞いた。
「自由って聞くとさ」
MENは続ける。
「どっか行くことだと思ってた」
「縛られてる場所から離れるとか、
役割を捨てるとか」
「選ばないって決めることが、
自由なんじゃないかって」
焚き火の音が、
一定のリズムで鳴っている。
「だから、
“自由を探す旅”なんて言い出した」
MENは自嘲気味に笑った。
「本当は、
離れる理由が欲しかっただけかもしれない」
その言葉は、
弱さだった。
おんりーは、
それを軽く扱わなかった。
「……俺は」
おんりーが、ゆっくり口を開く。
「逆だった」
MENが顔を上げる。
「自由は、
離れた先にあるものだと思ってたから、
嫌いだった」
「逃げの言葉に見えた」
おんりーは、
ドズル社の拠点がある方向を見る。
「でも、探して分かった」
「自由は、
“いなくてもいい場所に、
自分で残ること”でもある」
MENは、息を呑んだ。
「ドズル社で活動してる時」
おんりーは続ける。
「俺たち、
誰にも縛られてない」
「やめる自由もある。
離れる自由もある」
「それでも、
ここでやることを選んでる」
その選択は、
毎日更新されている。
惰性じゃない。
義務でもない。
「……じゃあさ」
MENの声が、少し震えた。
「俺が感じてた“このままでいいのか”って、
間違ってたのかな」
おんりーは、首を振る。
「違う」
「問いを持つのは、
自由だからできる」
「疑う自由がある場所じゃないと、
ああいう不安は生まれない」
MENは、しばらく黙った。
自由を探しに行ったつもりで、
実は自由だからこそ不安になっていた。
その事実が、
胸の奥に静かに落ちていく。
「……逃げたかったわけじゃないんだな、俺」
「うん」
「ちゃんと、
選び続けたいだけだった」
朝は、いつも通りにやってきた。
特別な光でも、
象徴的な沈黙でもない。
誰かが少し寝坊して、
誰かが先に笑っていて、
誰かが変わらず騒がしい。
ドズル社は、
何一つ変わっていなかった。
それなのにおんりーの視界だけが、
少し違って見えた。
「なあ、おんりー」
MENが、いつもの調子で声をかける。
「結局さ」
「自由って、何だったんだと思う?」
おんりーは、すぐには答えなかった。
この旅で、何度も問い続けてきた言葉。
定義しようとすれば、
すり抜けていく概念。
けれど今は、
焦る必要がなかった。
「……自由は」
ゆっくり、言葉を置く。
「どこかに行って
見つけるものじゃなかった」
MENは黙って聞いている。
「ドズル社で活動してる時」
おんりーは、周囲を見渡した。
ドズルの声。
ぼんじゅうるの軽口。
おらふくんの笑顔。
「俺たち、何かに縛られてるわけじゃない」
「やめることもできる。離れることもできる」
それでも、
ここにいる。
「それを毎日、自分で選んでる」
おんりーは、静かに言った。
「それが、自由だった」
MENは、少しだけ目を伏せてから笑った。
「……なんだよ
最初から、宝物は足元にあったってことか」
「そうだね」
「でもさ」
MENは顔を上げる。
「気づかなきゃ、
宝物じゃないよな」
その言葉に二人で顔を見合わせて笑った。
ドズルが、ふと問いかける。
「二人とも、
難しい顔して何の話?」
「自由」
MENが即答する。
ドズルは一瞬きょとんとして、
それから大きく笑った。
「よく分かんないけど」
「やりたいこと、
やれてるならいいんじゃない?」
その言葉は、
あまりにも単純で、
あまりにも正しかった。
ぼんじゅうるが続ける。
「選べるってのが、
一番強いんだよな」
おらふくんは、大きく頷いた。
「続けるのも、変えるのも
その都度、自分で決められる」
誰も「自由」という言葉を
大げさに扱わない。
それが、この場所らしかった。
夜。
一日の終わりに、
おんりーは一人、少しだけ立ち止まった。
旅の始まりを思い出す。
自由は、
努力を裏切るものだと思っていた。
逃げるための言葉だと、
思っていた。
でも今は違う。
自由は、
努力を「自分のもの」にするための条件だった。
やらなくてもいい。
それでも、やる。
続けなくてもいい。
それでも、続ける。
その選択を、
誰のせいにもできないからこそ
誇れる。
「……嫌いじゃなくなったな」
おんりーは、独り言のように呟いた。
自由という言葉を、
初めてそのまま受け入れながら。
宝物は、
見つけた瞬間に輝くものじゃない。
毎日、
選び続けた分だけ、
少しずつ価値を増していく。
ドズル社のこれからも、
きっと同じだ。
変わる日が来るかもしれない。
揺らぐ時もある。
それでも
選び続けられる限り、自由はここにある。
おんりーは、
その事実を胸にしまって、
いつもの輪の中へ戻っていった。
終わりは、
始まりと同じ場所だった。
ただ一つ違うのは、
もう「自由」を探す必要がない、
ということだけだった。
以上で完結です!
少し難しくなってしまった…
感動系では、なさそうだな
リクエスト本当にありがとうー!!
まだまだリクエスト募集中だから
何か思いついたら案ください!!
よければハートコメント
よろしくお願いします!!
コメント
11件

自由への解釈深すぎてびっくりっす
きゃー!天才ですね!また神作品が生まれました!笑 リクエストしてる人も凄いですね!! 色んなリク楽しみにしてます!
すごい考えさせられる話です… リクエストなんですけど、おんりーチャンが過去のトラウマを思い出して記憶と感情を無くして、メンバーが助ける的なのどうですかね? 今唐突に降ってきました