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「Blestemat în numele lui Satana, a sosit timpul să ridicăm blestemul.」葛葉が言ったのは、サタンの名において呪われし者よ、呪いを解く時が来たですか?
「Thou shalt live again in my name and be of service to the Supreme Being.」これ汝は我が名において再び生を享け、至高の存在に奉仕するであろうですか?
うぐいす
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答えはもう決まっていた。
俺にとって一番都合のいい提案だ。
「叶と過ごす」
黒猫は、わかりきっていた顔で頷いた。
「そう言うと思いました。」
黒猫は数歩あるき
「では、ひと仕事致しますかね。」
大きく伸びをした。
「ラグーザ殿、少し離れていた方がいいかと」
黒猫は、俺が数歩後ろに下がったことを確認し、一言聞き取れない音色のような言葉を放った。
その瞬間、黒猫の胸のあたりに窓の外から浄化されるような眩い光が差し込んだ。
俺は、あまりの眩しさに目を細め腕を目元に寄せた。
やがて、数秒で光は収まり腕をゆっくりと下に降ろした。
「それでは、彼についた呪いを少しばかりときましょうかね。」
そこに立っていたのは、透き通るような白い肌に首元まである黒髪をを下ろした男だった。
黒い修道服に似た服を身にまとい、背中には、地面につくほどの大きさをした白い羽根がついていた。
状況がいまいち読み込めないが、この男が先刻前の黒猫の本当の姿ということは理解した。
「ラグーザ殿、少しばかり魔力を分けてくださいますか。」
青年が、髪を揺らしながら振り返ると俺に淡い金色の目を向けた。
色素が薄く透き通るような容姿をしていた。
実年齢的には、数百歳、数千歳程をゆうに超えていると思うが、声は若々しく、容姿も美しく青年のようだった。
さっきまで、声を荒らげたりしていた俺が恥ずかしくなるくらいだ。
「俺の力は、魔が元のものだが使えるのか」
「問題ありませんよ。少々手荒にですが浄化して変換致しますから」
俺に血の通っていないような手を差し出した。
俺は、素直にその手に今蓄えている4分の1程の魔力を注ぎ込んだ。
「協力ありがとうございます。」
魔力を注がれた黒猫の手は、一瞬全体が暗い紫に染まったが、数秒で白い光に変換された。
この様子だと、俺がこいつに勝負を挑んだとしても勝てる確率は低そうだな。
俺の魔力が変換されて、逆に利用されるだけだ。
「それでは、ラグーザ殿少し後ろに下がってください。その位置では、私の術が貴方にもかかってしまいます。」
俺は、素直に叶の傍を離れ元黒猫の数歩後ろに移動した。
「では、始めますのでそこから動かないでくださいね。動いた場合どうなっても知りませんから」
ぞくっと嫌な想像をして、身震いをした。
「Thou shalt live again in my name and be of service to the Supreme Being.」
黒猫、いや、天使は、ラテン語に似た言葉で何かを言った後、俺には音色のようにしか聞き取れない高次元の何かを歌うように唱え始めた。
たちまち叶と天使の回りに、結界に似た光の籠ができあがった。
今これに触れれば間違いなく、消されることを肌で感じる。
恐ろしい力を持ってるもんだな。
天使の足元に、魔法陣のような模様が3つ浮かびあがり、複雑な光の線の上に文字が浮かび上がっていく。
天使は、唱えるのをやめ両手を1度叩き、槍のようなものを空中に召喚した。
空中にある槍をより寄せ、叶に向けた。
本当に大丈夫なんだろうな。何を考えてるんだあいつは。
天使は、叶目掛けて槍を飛ばし、叶の心臓に刺した。
「おい、どういうつもりだ」
天使は、目を伏せ俺の質問には答えずそのまま続けた。
「Now, let’s finish up.」
天使は、槍のようなものに触れ、俺の変換した魔力を叶に注ぎ込んだ。
注ぎ込み終わると、そっと叶の体から離れ光の槍も散るように消えた。
「perfect」
天使は、魔法陣と光の籠を解き振り返った。
「久しぶりにしっかりとした神力を使いましたよ。」
ふぅっ、と疲れたような仕草をみせ、何も無い空中にすとんと座った。
「叶は、どうなった」
「心配しなくても数時間後には、目を覚ますでしょう。」
そうか、成功したのか。よかった。
内心ほっとして、胸をなでおろした。
「さて、次は、ラグーザ殿の番ですよ。
呪いを解いてください。何か細工でもしたら、承知しませんよ。」
そういうと、指を鳴らして部屋の外に結界をつくった。
「万が一の保険です」
そう言って天使は、魔法陣を自分の足元に出し、自分の周辺にも結界をつくった。
「はは、そんなに信用がないかよ」
「念には念をですよ」といい、天使は数歩下がった。
「どうぞ、はじめてください。」
俺は、魔力を解放し、本来の姿になった。
今蓄えているほぼの魔力を使い、呪いに使われた魔法陣を開きそっと叶の心臓に触れ、呪文を唱えた。
「Blestemat în numele lui Satana, a sosit timpul să ridicăm blestemul.」
すると、触れれば一瞬で滅びてしまうような禍々しさをもった黒い鍵が現れた。
「やはり、サタン様の力でしたか。」
天使がボソッと呟いた。
結界内のため、葛葉にその声は聞こえていない。
「În numele lui Ragusa, ridică blestemul acestui om.」
叶の心臓から黒い魔界語の文字が螺旋状に浮き上がってくる。
「Dacă încalc contractul, te blestem, pieri」
唱えた瞬間黒い闇が吹き飛び、鍵穴に似たものが現れた。
「ラグーザ殿はかなりあのお方に気に入られているようですね。」
天使は、指を鳴らし自分自身の結界と周辺にかけた結界を二重にした。
「叶、戻ってこい」
そう言いながら、鍵を差し込み目を伏せた。
次の瞬間、結界内に充満していた黒い闇が鍵穴に一気に吸い寄せられオルゴールのような音を鳴らしながら溶けた。
サーシャが手を離すと鍵も溶け虚空に消えた。
儀式が終わり、部屋に静かな時間が流れた。
目を開き、叶から1歩離れる。
天使がもう一度指を鳴らし結界を全て消した。
「終わりましたか」
サーシャの横に立ち叶の姿を確認する。
「ラグーザ殿は、サタン様になんという呪いをかけて頂いたのでしょうかね。彼一人にかけるには勿体ない位のものに見えましたが」
「さぁな」
「教えては頂けないようですね」
「答える義理はないだろ」
「それもそうですねぇ」
そういうと、天使はそっと窓に近づき空気を入れ替えるように窓を開けた。
「彼が目覚めるまで時間がかかりそうですし、お茶でもしませんか」
「悪くない提案だな」
天使は、羽根を消し、アンティーク調の椅子に腰掛けた。
ぎぃ、と椅子の軋む音と共にティーセットを作り出し、2人分のティーカップに赤茶色の液体を注いだ。
「あんたも羽根消せるんだな」
そういいながら、赤い羽根をしまい尖った爪を戻した。
「ラグーザ殿ができることは、私にも簡単にできますよ。」
鼻につくことを涼しい顔で話す天使は悪魔にも思える。
「天使サマもそういう言い方するんだな」
椅子に腰掛けティーカップを持ち上げる。
どこかで嗅いだことのある懐かしい香りがする。
「天使といえども、生きていますから。
さぁ、雑談はこれくらいにしてお茶を飲んでください。淹れたてのお茶が冷めてしまいますよ。」
ふっと、鼻で笑いながらお茶を流し込むと微かに甘い上品な味がした。
天使もそっとティーカップを持ち上げて口元に運び、ふぅと息を吐いた。
「懐かしい味でしょう。」
天使がティーカップに入った赤茶色の液体を軽く揺らしながら、目元を緩ませた。
「わざとだな」
天使は「さぁ」と言い茶菓子を口にした。
天使の言った通り、俺にとっちゃ懐かしい味だった。
つまり、1回目の叶、俺と叶が初めて会い初めて共にお茶をした時に飲んだものと全く同じ種類の茶葉だった。
でも、感じた味は違った。
天使のいれたものは、叶のいれたときのような、優しい味はしなかった。
ただ、飲むという行為のためにいれたというような感じがした。
「そろそろですかね。」
かれこれ、1時間ほど時間が経過し、天使が用意した茶菓子の大半を食べ終え、お茶も最後の一杯といったところだった。
俺は、魔力を使ったことによる疲れで、全身を椅子に寄りかけ、貴族出身とは思えない姿勢をしていた。
対して、天使は一時とも姿勢を崩さず、背中に定規を入れているかのように真っ直ぐと背筋を伸ばし叶の方を見ていた。
「その姿勢で疲れないのか」
「慣れですよ」
慣れるもんか。と思いながらも姿勢を直し、最後の一杯を飲みきった。
「おや」
と天使が一瞬少し目を見開き、瞬く間に姿を黒猫に変化させた。
察して、叶を見ると心臓の辺りから白い光を放っていた。
瞬きをした瞬間、叶の背中から天使と似た少し小さな白い羽根が生え、バサッと風を起こした。
同タイミングで、頭の上に光の輪が現れた。
「何が起こってるんだ」
「まぁ、見ていてくださいよ」
また次の瞬間、叶は元の姿に戻りゆっくりと息をした。
俺は、叶の元に足早に近づいた。
叶は、深く息を吸いゆっくりと目を開き、眩しそうに細め、俺に気づき微笑んだ。
「おはよう、サーシャ。僕は、どのくらい眠ってたのかな。体がまだ重いや。」
叶の優しい声を聞いた瞬間に張っていた糸が緩んだ気がした。
「おはよう、叶。」
叶は、ゆっくりと体を起こした。
黒猫の存在を思い出し、後ろを振り返ると黒猫はもういなくなっていた。
いや、違う、確かにいる、存在は感覚で感じ取れている。
ただ、透明になったように、見えなくなった。
「その様子だと随分待ったみたいだね」
叶が、机の上に残されたティーセットと残った茶菓子を見ている。
「あれ、2人分あるけど、誰かさっきまでサーシャと居たの?」
「あぁ、知り合いがな」
「そっか、その人にも挨拶したかったな」
叶は、眠たそうに目を擦り目を細めた。
「また、会う時にすればいい。」
「それもそうだね」
叶は、窓の外に視線を移して景色を見た瞬間、手で口を抑え、全てを悟ったように目を大きくした。
俺は、叶の目元を手で覆った。
これが、断片的に思い出したのではなく、全てを思い出した場合であれば、数秒後叶は、消える。相当まずいことになった。
頼むから全てを思い出さないでくれ。
「サーシャ、もしかしてさ、僕が思っているよりも僕の帰りを待ってた?」
叶な、俺の手首を掴み、覆っていた震えている手を下げ、俺の顔を見上げた。
俺は、黙って叶を見た。
叶は、消えない。
廃人になってもいない。
ということは。
「ただいま、サーシャ」
「おせーよ、叶、どんだけ待たせんだ」
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作者 黒猫🐈⬛
「目を覚まして」
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