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八幡さんは強者側に置きたいよね
──────八幡宮視点──────
「よっ、こいせ──ッと。」
そんな思ってもいない言葉と共に、わたしは、その刀を受け止める。が、思ったよりも飛ばされてしまったらしい。強風が私の頬を叩く。
もう既にメテヲの姿を見ることは出来ない。まあ、めめさんがいるから大丈夫だろうが。まあ、みぞれさんの安否は確認するまでもなく、大丈夫だろう。そんなことを思いながら私は刀を振るった相手を見る。
「───ッッッ」
そいつ───ぐさおは無言で空を蹴り、勢いよく刀を水平に振るう。飛ぼうとしないのは、私の作戦を見透かされたからなのかもしれないな、なんて、勝手な憶測をたてる。ぐさおはそのまま無言で刀を正確に、そして、一撃一撃が重い連撃を繰り出してくる。その洗練されたその立ち振る舞いは、美しい。何億年も生きてきたが、ここまで完成された刀さばきは見たことがなかった。
「ぐさおさーん。話し合いましょ〜?みんな仲良くお手手繋いで平和ごっこしてた方が楽ですよ〜?」
「───黙れッ」
私の平和的提案はその一言で破綻する。まあ、平和ごっこしてた方が楽だが、面白くはない。それに、こんなにも戦いがいのある相手は久しぶりだった。───やってやろうじゃないか。
私は大きく羽を広げ、角を悠々と伸ばす。戦闘において、煌びやかな服装はいらない。必要なのは、洗練された技と手数だ。
私は思わず舌なめずりをする。今日のメインディッシュは神だと思っていたが。別に、ぐさおでも構わない。けれど、唯一、懸念点をあげるとすれば。
「私、めめ村の人を殺したくないんですよね〜」
私が、そう言う。しかし、この言葉には嘘偽りはないと、私自身が断言しよう。何故ならばめめ村はめめさんが愛した居場所で、私にも居心地が良かった。なら、お気に入りだ。私は、自らの手で、それを破壊しようとは思わない。結果的にめめさんが自分のものになるのはいいが、自らは動きたくない。だって、私はどちらも欲しいのだから。
「黙れ。───強欲の悪魔がッッッ!!!」
「へー。だから、さっきから怒ってるの?」
ぐさおさんの感情の籠った声を久しぶりに聞いた気がする。まあ、ぐさおさんが天使なのか、悪魔なのかは定かでは無いが、少なくとも、翼が生えていることを知らなかった時は正義感の強い人、というのは印象に残っていた。
しかし、強欲の悪魔と言われるのは些か間違いだと思う。
「それに、失礼だよ。私はただ、
「───ッッッ!!」
ぐさおさんの表情が、目付きが、そのオーラが。全てを語る。イカれてやがる、と。こんな反応されるのはもう、何億、いや、何兆回目だろうが…もう、慣れた。はぁ、それにしてもだ。たかが1匹悪魔を殺した程度で何になるというのだか。
「んまっ(それに)。私は別に殺す気はなかったよ?ただ、上から目線で指図するから。まあ、若気の至りってやつだよ。」
神から捨てられ、殺されかけたのを下界に堕ちることで生き残った私。他の龍は神の力として還元されていたのに、唯一、私だけが初代龍として生き残った。神に逆らい、居場所を失った私は。それだけでは許さないと。時間を奪われた。───死ぬという時間を。どれだけ苦しくても、餓死しそうでも、雷に打たれても、溺れても。一生死ぬことは無いくせに、痛みは感じる。
───最悪だった。
そんな時、強欲の悪魔が語りかける。
───「神に逆らうなんて。それに寿命すら捨てる。なんて強欲だ!俺様と契約するのに相応しいッ!!!」
「俺と契約しろ。そうすれば永遠のときを愉快に変えてやるよ。」
若かった私は。この言葉を聞いて、勝手に体が動いた。
───バチャンッ
汚い音ともにその悪魔の魂が砕けていた。そして、その魂が、私の体にしがみついた。そう思ったら、染み込み、私の体の一部へと変えていく。私の、下界を映す瞳が、強欲を象徴する金色へと変貌する。
───最悪の気分だった。
よく考えたら、私より後に生まれたその悪魔が礼儀を知らないなんて当たり前で。弱いのも当たり前で。今、考えればわかる。が、まあ、その時は神に捨てられた焦燥感に、死ぬ事が許されない絶望に心を悩ませていたから仕方がない。
今だからこそ言える、言い訳だった。
「まあ、過去のことなんてどーでもいいじゃん。今を楽しも?」
過去にもう、すがるのは嫌だから。神に愛されたぐさおさんのことを心底妬みたいのに、妬みきれない私が嫌いになりそうでどうしようもなかった。私の感情をぐちゃぐちゃにかき混ぜる彼女の手に、目に、怯えはなかった。
「今も、未来も、過去も。いつかは粉々に砕け散る。それならば、せめて、平等に、公平にありたい。」
そう言いながら、その刀は光り輝く。まるで、ぐさおさんが『正義』で、私が『悪』じゃないか。そう、ありもしない現実を突きつけられているような気がして、私の心をいっそう掻きむしる。
「八幡さん。あなたには、死という救済を与えましょう───!」
「───私を知った気になるな。生まれたてが。」
ひとつ、言えることがある。この戦いは、美しく、そして面白い。どちらかの最後の思い出になる瞬間であった──────
ここで切ります!はい!八幡さんの強欲になった原因と人間らしさを出せたと思います。あと、瞳に特別感を出したかったので少し描写を追加させてもらいました。八幡さん…元々狂人ってどう書けばいいか分からなくて、キャラもよく分からないし…みたいな割と扱いに困るキャラだったんですけど…キャラ崩壊してもいい!オリジナリティと個性を!と、思ってたらなかなかに…個性の強さが目立ちますね…。強くしたい、という思いで…というのは言い訳なので辞めます。
それでは!おつはる!