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クリスマスイブ。
リビングにはケーキやチキンが並び、家族が賑やかに笑っていた。
母が微笑む。
「匠海はほんま頼りになるわぁ。生徒会の会長やし、家でも助けてくれるしね」
京介の胸にチクリと痛みが走る。
(……また匠海ばっかり。俺は結局、弟のままか)
フォークを握る手に力が入る。
「……ふん、どうせ俺なんか弟扱いだろ」
「京介?」
匠海が心配そうに声をかけるが、京介はぷいっと顔を背ける。
「別に」
夜。京介は「ちょっと散歩してくる」と言って家を飛び出した。
冷たい雪が頬を刺す。
(……やっぱり、匠海のこと、弟の俺が好きになってどうすんだよ。言えるわけねぇだろ……)
背後から声が響いた。
「京介!」
振り返れば、息を切らした匠海が追ってきていた。
「勝手に出て行ったらあかんやろ。心配すんねんで」
京介は俯いたまま吐き捨てる。
「……匠海に心配されんのが、一番苦しいんだよ」
匠海が立ちすくむ。
京介は唇を噛み、ついに口を開いた。
「俺……やっぱり匠海のことが好きだ。弟だからちゃんと言えなかった。でも……もう隠せねぇ…!」
雪の降る夜に、その声が響く。
「俺は、弟じゃなくて……匠海の特別になりたい!」
しばし沈黙が続く。
匠海はゆっくり歩み寄り、真剣な瞳で京介を見つめた。
「京介……俺も最初から、弟以上に見とった」
「……っ」
「弟やからアカンなんてない。俺にとって京介は……大事な人や」
京介の胸が熱くなる。
「……匠海……」
匠海は京介の頬に手を添え、柔らかく微笑む。
「なぁ、俺の弟であり、俺の”恋人”でいてくれるか?」
京介は震える声で答えた。
「……うん。俺も匠海が好きだ」
次の瞬間、匠海は京介を引き寄せ、雪の中でそっと唇を重ねた。
京介は目を閉じ、胸いっぱいの熱を感じる。
「……メリークリスマス、京介」
「……メリークリスマス、匠海」
白い雪が舞う夜、二人は兄弟を超えて恋人になった。