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「明日は休みでしょ?一緒に買い物に行かない?」
「ごめん!明日は大事な用事があって…」
「そうだったの。それじゃあまた今度一緒に行こうね。」
*大事な用事*。彼は用事がある時はその内容を教えてくれる。大事ななんて曖昧な言葉は言わない。友達と遊ぶのならそう言うし、その中に女性がいたらアタシに確認してくれる。仕事の用事の時は事前に予定を教えてくれる。前日に言うなんてことは無かった。
それから彼がアタシとの時間をどんどん減らしていることにはすぐに気づいた。休みだと教えられていた日に一緒に過ごそうと言っても予定があるからと言われ、ついには今まで教えてくれていた予定内容も教えてくれなくなった。アタシ以外の女性がいることは気づいていた。他の人がいてもアタシのところに戻ってきてくれる、そう信じているから言及はしなかった。でも、その相手は彼にはアタシという存在がいることを知っている。彼が寝ている間に首に着けたキスの跡も、私の使う香水を彼に共有したことも全部知った上で、彼と親しい関係にいる。彼自身はアタシと浮気相手さんがお互い気づいていることを知らずに生きている。隠し通せていると思っている彼が気持ち悪くて仕方がない。だからアタシはこうしなければならない。
「楓、アタシたちもっかい引っ越そうよ。」
「どうして?」
「前みたいな暮らしに戻りたくなっちゃって。賑やかなのは大好きなんだけど2人きりの時間が最近少なく感じてしまって…」
「打ち明けてくれてありがとう。考えておくよ。」
あなたの方がアタシに打ち明けることが沢山あるでしょうね。でもきっと会社の人だろうから離れればまたアタシに振り向いてくれるだろうから。けれどいくら待っても彼が引っ越しを持ち出すことは無かった。その間彼はどんどん変わっていった。開けたことのなかったピアスを開けていたり、アタシの知らないネックレスや指輪を着けたりして。アタシへのプレゼントも増えた。それは浮気がバレないように遅くなった口実として何も考えずに買ったものたちだった。頭のいい彼が贈り物の意味を考えずアタシに渡すはずがなかったから。初めは一輪の花を、次は花瓶を。彼はアタシに対して感情のない道化のようだった。
1月後、彼は深夜まで家に帰らない日が多くなった。そして会社で失敗し、移動になってしまった。それを聞いた日の前日彼は朝まで帰ってこなかった。浮気相手に奉仕されていたのだろうか。どこかでやけ酒でもして眠ってしまったのだろうか。きっと前者なんだろう。彼の髪や服は乱れお酒の匂いがし、今まで以上にキツく女性の香水の香りをつけていたから。