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【side尚人】
今もあの頃を思い出すと胸が痛む。都希、本当にお前の事が苦しくなる程好きだったよ…。
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高二の時、都希からの突然の告白には正直驚いた。でも普段から物静かで不思議な雰囲気の都希を目で追いかけてしまっていた。だから恥ずかしそうに、でも真っ直ぐに告白してくれた事が嬉しかった。
付き合ってすぐに都希に誘われて身体の関係を持った。都希があんなに大胆だとは知らなかったから、初めての自分以外の身体の快感にどっぷりハマってしまった。都希は麻薬みたいだった。都希と繋がり合う気持ち良さに夢中になって、大学の受験の時も急に成績を落としてしまい両親からとても心配された。
大学生になり、相変わらず周囲からの期待が大きいの中、暇さえあれば都希の元へ行く。そんなある時、大学の同級生に都希とキスしているところを見られてしまった。そいつにも女の子だと思われるくらいだったし、構内でからかわれるくらいのものだったけど、何故か悪い事をしている罪悪感みたいなものがあった。
程なく飽きたのか、からかわれなくなった。地元のやつ以外、都希の事を知っている人間はいなかったけど、その出来事以来噂話しや周りからの視線を気にしてしまう事が増えた。周りの目が気になり、外へ行く事も無く、会えばツキとドロドロに繋がり続ける。
俺が大学へ入る時には両親の不仲はもう修復不可能な状態になってしまっていた。だけど相変わらずニ人の俺への期待は大きい。
貴方達の大好きな息子は、いつもいつも家に居ない時には男とセックスしまくっているのに、何をそんなに必死に期待しているんですか…。そう言ってやりたかった。
周りの噂話しも、仲が良かった筈なのに歪み合う両親も、都希と一緒に居る時の他人の視線も、全てが嫌で嫌でしょうがない。都希に会えばひたすら溺れている事が不安になり、都希はどう思っているのか聞いてみた。
「俺たち付き合ってから、本当にいつもセックスしかしてないけど、都希はそれで良いの?」
「僕は尚人と抱き合うと幸せだよ。周りなんてどうだって良いよ。僕は尚人さえいてくれたら何もいらない。いつも繋がっていたいんだ。」
前だったら求めてくれる事がとても嬉しかった。でま今の都希は俺の身体だけが好きなんだ。そう思ってしまった。でも都希に会えば引き寄せられて結局溺れてしまう。このままじゃダメなのに…。
親はもうすぐ離婚してしまうと思う。そうなったらまだ小さい千景を守ってやりたい。俺がこのままだと都希も俺もお互いにダメになってしまうと思う。距離を置かないと…でももし都希と別れてしまう事になったら?…考えただけで辛くて涙が出て来た。
普通に気持ちを伝えても都希が離れてくれない事を分かっていたからこそ、自分からなかなか話せずにいた。理由をつけては都希からの誘いを断り続けた。きっと都希は怒って泣いていると思う。分かっていたけど、どうする事も出来なかった。
もう俺も限界だった。
結局自分から都希と向き合う事も出来ずに女友達に頼んで都希を傷付けて嫌われる事を選んでしまった。
都希を大好きな気持ちと、自分との葛藤の中、別れる事しか選択肢が無かった。
別れてからも都希に会いたくて、会いたくて、もっと別の方法があったんじゃないか。とか、話せば理解してくれるんじゃないか。とか…でも何を話すんだ?都希が傷付く事しか話題に出来ない。どんなに考えても都希の泣き顔しか思い出せなくなっていた。
都希と別れてから両親は離婚した。俺は父親を心配させたくない気持ちと都希を忘れる為に一心不乱に勉強をして大学を優秀な成績で卒業した。
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俺は就職した後に出会った人と結婚した。可愛い子どもも生まれて、これからも家族を守りながら幸せに生きていきたいと思っている。
でも、千景から都希の名前を聞いた時心臓が飛び跳ねた。「あいつ元気にしてた?」その言葉が精一杯で、それ以上何も聞けなかった。いや、聞きたくなかったのかもしれない。
今の俺には愛する家族がいる。あの頃の息が出来ない程に都希と俺だけの世界に溺れてしまう感覚ではなく、穏やかに呼吸をしている気持ちになる。家族を大切にしたい。今はあの頃の様な毎日がドキドキする感覚は無くなってしまったけど、だけど、呼吸が楽なんだ。