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「芽衣はさ。攻撃スキルに苦手意識があるんじゃなくて、敵に接近する事が嫌なんだよね?」
「み゛っ!? そ、そぉー、そんなことー。ないですー?」
六駆の中には、チーム莉子の乙女たちを対象にした「考えていることが分かりやすいランキング」と言うものがある。
ちなみに、1位が莉子で2位がクララ。最も分からないのが芽衣。
その順位に変動が起きようとしていた。
「要するに、だよ。例えば、芽衣が近づくんじゃなくて、『幻想身』みたいに分身体が近づいて攻撃するのならどうだろう? それなら怖くないんじゃないかな?」
「みっ……。そんな夢のようなスキルがあるです?」
「ないよ!」
「……今、芽衣は初めて師匠にイラっとしてしまったです」
芽衣の中の六駆おじさん好感度が急降下した。
だが、安心して欲しい。
六駆は「ない」ものを「ある」とは言わない男だが、「ない」ものを「創り出す」事を造作もなくこなす男でもある。
こう表現すると、六駆が途端に理想の上司みたいになるので困る。
「ないから、作ろうか! とにかく芽衣は敵に近づかずに、なおかつ芽衣の意志で攻撃ができて、ついでに煌気消費もそれなりに抑えられたものがいいなぁ」
「六駆師匠。そんな、クレープのトッピングみたいな事ができるです?」
「うん。まあ、割と簡単にできるね!!」
「今、芽衣は初めて莉子さんの気持ちが分かった気がするです! これは落ちるです!! みみっ!!」
芽衣ちゃん、危険な位置に自ら足を踏み入れようとする。
そっちの水はドロドロしているから、行かない方が良いと思う。
諸君も「帰って来い」と叫んでもらえるだろうか。多分、まだ間に合う。
「それじゃ、リングを貸してごらん?」
「はいです。みみっ」
六駆の頭の中では、ほわかぱっぱな思念がいくつも発生して、合体、そして更に発生して合体が繰り返されていた。
スキルを創る時のコツは、強いイメージ。この1点に尽きる。
そして、逆神家の一族は代々その能力に長けている。
「ふぅぅぅんっ。……まあ、こんなものかな」
平野レミの料理くらいおおざっぱな作業工程で、何やらスキルが構築されたらしかった。
「ふぅぅぅんっ」でスキルが誕生するのだから、そりゃあもう、その存在を隠そうと奔走する南雲の気持ちも分かると言うもの。
「ちょっと待ってね、芽衣。まず僕が試してみるから」
「はいです。試験走行されていない車には絶対に乗りたくないです! みみっ!」
安全マージンは常にマックス取るのが木原芽衣のスタイル。
こればっかりは喩え相手が師匠でも譲れない。
「では……。ふぅぅぅんっ! 『分体身』!! おっ! イケる、イケる!!」
「六駆師匠が増えたです! でも、『幻想身』と何が違うです?」
「見ててごらん。まず、この分体は煌気を練って作ってあるから、『幻想身』と違って、物に触れられる。でも、『幻想身』と同じで、思う通りに動く」
「みみっ」
六駆の煌気で作り出した分体が、静かにアンモギラースへと歩み寄る。
「ちょちょ、六駆くん、危ないにゃー!」
「あ、すみません! でも大丈夫です! それ、僕の分体なので!!」
クララはすぐに理解した。
「あ、六駆くんがまた変なスキル生み出したにゃ」と。
続けて「ちょっと実験するんで、残りのアンモナイトもらってもいいですか?」と言う六駆に「あいあいにゃー。了解にゃー」と答えるクララ。
アンモギラースはまだ3匹残っている。
「まず、煌気を練って作った分体だから、ただの打突でもそれなりの力がある。見ててね。ふんっ!」
バゴッと言う音と一緒に、アンモギラースの殻が割れた。
六駆の煌気で作った分体だから強いのは当然と思われることなかれ。
このおじさんの反則スキルを舐めてはいけない。
だいたい誰が使っても強い分体が生み出される。
「と、まあ、こんな感じで体術を覚えて分体をコントロールすれば、それなりに戦えるね。あと、こんなのも付けておいたよ。ふんっ! 『煌気弾』!!」
六駆の分体の手の平が光ると、振り抜かれた拳から煌気の塊が高速で撃ち出された。
その貫通力は凄まじく、クララが『ヘビースパイラルアロー』でやっとダメージを与えたアンモギラースの体のど真ん中を纏めてぶっこ抜いた。
「これなら、分体だけで近距離とやや近距離の格闘ができるよ。ちなみに、この『煌気弾』は久坂さんが使ってたのを見て真似したから、怒られたらごめんね」
こうして、この世にまた新たなスキルが誕生した。
トロレイリングにしっかりと情報を刻み込み、芽衣に手渡す六駆。
南雲の日頃の努力と苦労がよく分かる、六駆おじさんの簡単スキルクッキングのお時間でした。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「ありがとうです、師匠! 芽衣はこの『分体身』で天下を取るです!!」
「うんうん。その意気だよ。発動の感覚は『幻想身』にかなり寄せてあるから、その調子でまずは分体を維持できるようにするところから始めよう!」
「みみっ! 『分体身』!!」
呆気なく芽衣の分体が出現した。
これにはさすがの六駆おじさんもビックリ。
「やっぱり血筋ってあるのかもねぇ。すごいセンスだ」と手を叩いた。
「師匠! 芽衣はこっちで壁をフルボッコにしてるので、お気になさらずです!!」
「うん、分かった。じゃあ、莉子のところへ行こうかな」
莉子の『復水』の効力も確認しておきたい六駆。
普段は適当なくせに、師匠としては割と有能なのだから困る。
「おおーい! 大丈夫ですかー?」
「むぅーっ! 六駆くん、また芽衣ちゃんだけ特別扱いしたでしょ! 見てたんだからね!!」
「いや、だって芽衣にも攻撃スキルを創ってあげないと」
「もぉぉ! わたしの方が姉弟子なんだよぉ! ズルい、ズルいっ!!」
「莉子には『苺光閃』があるじゃない。芽衣の『分体身』は15分で考えたけど、莉子の必殺技は3日もかけて考えたんだよ?」
「あっ、そっかぁ! えへへへへへ。そうだったよぉ! もぉ、六駆くん、早く言ってよね! もぉぉ!!」
莉子さんはいつも通り、既に手遅れ。
六駆は当初の目的通り、負傷者のダメージ具合を見る。
しっかりと傷が癒えており、『復水』は効果を発揮していた。
これで莉子は風、火に続いて水スキルの適正も得たことになる。
「ホント、マジで助かりました! あざっす!!」
「ああ、いえいえ。僕たちこそ、戦闘中にお邪魔してすみません」
六駆にとって戦闘は邪魔されると腹の立つもの。
だが、おじさん。自分の価値観を相手に押し付けてはいけない。
普通の探索員は戦闘に加勢して貰えると嬉しいものなのだ。
彼らも「最近このダンジョン荒れてるんすよ」とホームグラウンドの異変を嘆いて、地上へと戻って行った。
それも連絡を絶った異世界・スカレグラーナが関係しているのだろうか。
「みみみみみっ! みみみみみみっ!! みみみみみみみみぃっ!!!」
「六駆くん? 芽衣ちゃんがあっちの壁をすごい勢いで削ってるけどー?」
「順調ですね!」
「ダンジョンの壁って便利だよねっ!」
常識外れなパーティーに、またしても常識を無視したスキルを与えた六駆おじさん。
南雲がコーヒーを噴く姿が今から容易に想像できる。
おいたわしや、監察官殿。
コメント
1件
第147話読んだよ〜!!😭💕 六駆おじさん、「ないから作ろう!」のノリで平野レミばりにスキル調合してて草🌱✨芽衣の「初めてイラっときたです」からの好感度急降下→即「今、莉子さんの気持ちが分かった気がする」の流れ、芸術点高すぎるっしょww でも一番ぐっときたのは、分体を一発で出せた芽衣のセンスと、それに「やっぱり血筋かもね」って目を細める六駆の師匠愛…😭🔥莉子の姉弟子アピールからの手のひら返しも最高だったよ! 次も楽しみにしてるね〜!!🌸