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同テマコンテスト1作品目
魔法使いの水さん×シンデレラ姉妹の次女白さん
のお話となっております。
ほんの一部しか登場していませんが
シンデレラの王子はおとぎ話のグッズの方と
同じ方を想像して書いておりますので
ぜひ誰かご想像してお読みください!
ただいま、人魚姫と赤ずきんのお話も
書いております。
期間中に終わるでしょうか……。
ちなみに前置きも長いですが、
本編も長いです。
ずっと夢見てた白馬の王子様
いつの日か結ばれるんだってそう信じてた
でも、気づいてしまったの
私よりあの子のほうがお似合いだって
ねぇ、神様
私の王子様はどこにいますか?
きっと幸せになる魔法
「こちら、初兎。シンデレラは会場に到着して
無事王子とダンスを踊っているわ」
「こ、こちら、ほとけ!えと、ちゃんと魔法は
かけました!…12時までだけど」
「は、?え、いむくん、何してんねん!?」
「だ、だって、僕、
魔法そんなに上手じゃないもん…
初兎ちゃんこそ、素、出ちゃってるけど…」
「ん゛ん、そうね、
あなたに頼んだ私が悪かったわ、ごめんなさい」
「違う違う、僕が悪いから!!ごめんね!!
魔法の練習いっぱいするから!!」
はぁ…、これでシンデレラが王子と
結ばれなかったら、私の努力を返してほしい。
この魔法使いめ。
「おや?こちらで何をしていらっしゃるのです?
そんなところにいないで、ぜひ私と一曲」
げっ、なんで見つかったのよ。
こんな人通りの少ない道にわざわざ来たのに。
いむくんから借りていた魔道具を耳から外し、
ポケットに入れる。初兎ちゃん!?と
聞こえた気がしたが、この際無視だ。
こっちの紳士のほうが重要。
「あら、助かりましたわ。
実は道に迷ってしまい、困っておりましたの」
偶然を装って、紳士…いや、
40超えたおっさんの相手をする。
このおっさんと一曲…、やるしかないか…
これも、愛する妹――シンデレラを
幸せにするためっ!!
なぜこんなことが起きてるか
遡ること1週間前――
「あー!!ほんまにこれ重いなぁ!!
こんなんをお母様とお姉様は
シンデレラ1人にさせる気やったん!?」
ふんっ、と山ほどの衣服を持ちなおす。
この量を1人で洗濯しろなんていくらなんでも
無茶が過ぎる。しかも、理由がシンデレラが
美しくて優しいからって、どこの幼児だよ。
お姉様もお姉様。
お母様にならって、自分のほうが上って……。
そんな訳あるか!!
なんなら、後から来たうちらのほうが下だわ。
「はぁ……」
改めて、こんなやつらが血の繋がった家族とは
思えないほどの考え方をしていることに呆れて、
ため息が出る。
そんなことを考えてるのがいけなかった。
「っあ、やべっ」
前がしっかり見えていない状態で考えごとを
していたせいで、ドレスの裾に足が引っかかり、
見事に転んだ。もちろん手に持っていた衣服も
四方へと散った。
……隠れてシンデレラの仕事を減らすつもりが、
逆に増やしてしまった気がする。
こんなことでヘコんでてもしゃあない。
可愛いシンデレラは毎日やってるんや!!
ドレスについた土を払い、
衣服を集めようとすると衣服たちが動き出し、
自分の手元に集まり始めた。
「なっ、なんや、これ!?」
驚いて声を張り上げる。
直後、頭の上を奇妙な影が横切り、
その影はうちに大きな影を落とした。
「あの、驚かせたらごめんね……?
困ってそうだったから、つい魔法使っちゃった」
空飛ぶほうき、ほうきに乗って浮かぶ人。
それが、うちの上に影を作った正体。
そして、先程放たれた『魔法』という言葉。
「魔法使い!?」
それがうちの出した答えだ。
そして、その魔法使い(?)は、
うちの叫びの質問の答えだと言わんばかりに、
トンッとほうきから降り、うちの前に立った。
「うん!そうだよ!」
と、にっこり微笑んだ。
背格好や見た目はうちと変わらないぐらいだが、
えへへと笑う笑顔には純粋さが垣間見える男の子。
「なんで助けてくれたん?」
魔法使いはほとんど存在しないせいか、
あまり表立って活動していない。そんな存在が
うちなんかを助けるわけがあらへんし、
魔法を使うにも魔力が必要なはず。
わざわざ見ず知らずの人物に魔法を使うなんて
何か理由があるはずだ。
すると、彼はキョトンとした表情を浮かべた。
「?、さっきも言ったでしょ?
困ってそうだったから……」
本当に不思議そうな顔をするあたり、
事実なんだろう。
「……助けてくれてありがとうな」
優しさだけで動くなんて信じがたい。
お母様もお姉様も優しくしてくれた時には、
必ず裏があった。この子もそうなんちゃうの?
そう思ってしまうけど、
あのキョトンとした顔は計算じゃでけへん。
そう思って、お礼を言うけど、
うちがよほど訝しんだ表情をしていたのか
「あ、自己紹介がまだだったよね!?
僕、ほとけっていいます!
いむくんって呼んでね!
決して怪しい人じゃないから、ね!?
よろしくね、初兎ちゃん!」
と、とんでもなく慌てて自己紹介してきた。
「よろしく……?」
よろしくってことは、
これで終わりってわけやないんやな……?
というか、うち
「名前教えたっけ?」
そう呟くと、明らかに魔法使いではなく、
いむくんはビクッと肩を震わせた。
「あー、たまたま!?当たってたんだ!
すごいね!本当偶然って怖いな!!」
魔法使いの偶然ってすごい当たるんやな。
名前当てられるぐらいやもん。
さすが魔法使いって感じやな(?)。
……ん?魔法使いってことは何でもできる。
ということは……
「いむくん!!お願いがあるんやけど!」
「何?初兎ちゃんのお願いなら、
何でもかなえてあげる。魔法使いだからね!」
「ほんま!?それやったら……」
これが魔法使いいむくんとの出会いであり、
可愛い妹のシンデレラとお城の王子を
くっつけちゃおう作戦の始まりだ。
そして、今。
……やっとダンス終わった。
あのおっさん、ステップ下手やったし、
相手すんの大変やった……。
そして、いむくん
なんで12時までなんや、ほんまに。
今のところ王子とダンスってゆう
ええ所まで来たけど。
あと30分しかあらへんやん。
まぁ、でも。
「君、ダンス上手だったね。どこのご令嬢?」
「ほんとですか?こういう場所初めてで
緊張しました……。」
えへへと幸せそうに笑うシンデレラを
見られたのならそれでええのかもしれない。
あの時のシンデレラほんまに可愛かった。
数日経った今日でも思う。
今は、お母様があげたボロい服を着て、
せっせと家の掃除をしている。
こんなに近くにいるのに手伝えないのが
見ていてとても歯がゆい。
「お姉さま」
ふと、鈴を転がしたようなシンデレラの声が
うちを呼び、こちらにと外へ手招いた。
「何、シンデレラ。
用があるのなら早くしてちょうだい」
あー、こんな時に冷たい態度をとる理由が
分からへん。お母様が近くにいなければ、
もっと愛想よくしたんに……。
キョロっと周りを見たかと思うと、
シンデレラはこそっと話し始めた。
「ありがとうございます、お姉さま」
え……?うちなんかしたっけ。
「お姉さまですよね、魔法使いの方を呼んで
私を舞踏会へ連れて行かせてくれたのは」
あー…この感じ、いむくん話してもうたん?
うちがやったってバレへんようにって
言ったんやけどな。バレとるやん。
「いいのよ、シンデレラ。
逆に私もごめんなさいね。お母様とお姉様に
逆らえないとはいえ、こんなに仕事を
押し付け、虐めてしまって」
そう言うと、シンデレラは驚いた顔をした。
「何を言っているのですか。お姉さまだけは、
私の仕事を減らそうといつもこっそり
私の仕事をやってくださったり、
虐めをするふりをして私をフォローして
くださってくれているの知っていますよ」
もう、と頬を膨らますシンデレラ。眩しい……。
うちもこんな顔や性格で生まれたかった……。
結局バレてたんや、色々と。
この子は周りもよく見てんなぁ。
お母様たちにも爪の垢煎じて飲ましたい。
そう思っていると、だからと、
シンデレラが続けた。
「私の本当の名前をお姉さまには、
知っておいてほしいんです」
と。え、待って。シンデレラって本名じゃ
なかったん?お母様たちが呼んでいるから、
そう思っていたけど違ったらしい。
「私は、りうらと言います」
赤い髪をふわっと揺らして、
シンデレラ、いや、りうらが話してくれた。
りうら。シンデレラじゃなくてりうら。
ほんまに名は体を表すというけれどその通りや。
こんなに可愛らしい名前、この子にピッタリ。
愛でるような目を向けていると、初兎ー!!
と、お母様の声が聞こえた。
さらば癒やしの時間。
「それじゃあ、行くわね。りうちゃん」
りうらは、りうちゃんと呼ばれると
思っていなかったのか目を丸くしたが、
「はいっ!初兎お姉さま!」
とすぐに返してくれた。何、殺す気?
死因可愛さ。まぁりうちゃんによって
殺されるならええけどね。
その数時間後、街が途端に騒がしくなった。
どうやら王子と踊った娘を探しているらしい。
これは、りうちゃんのことやな……。
よほどあの王子はりうちゃんを気に入ったのか、
娘が落としたガラスの靴にぴったりだった人物と
結婚すると言いだしたらしい。
要するに、王子は娘を探しているということ。
それを耳に入れながら、そりゃそうよなと思う。
なんてったってりうちゃんやもん。
王子が惚れないわけがない。
そもそも惚れるという確証がないと先日の作戦
立ててすらいない。うちからすれば、
ようやく来たかという感じである。
家の中から、ヒョコッと顔をのぞかせている
りうちゃんが家の前で私ですわ!!と
ぶんぶん手を降っているお母様たちを
見つめている。そして、うちを見つけ
「お姉さま……」
と、心配そうな顔でこちらを見た。
せやんな、自分のことって分かっているからこそ
お姉様たちにどんな顔して出ていけば、
ええか分からへんよな。
やから、うちがすることはただ1つ。
「りうちゃん」
そっと背中を押すことだけや。
この子はきっと城でも上手くやっていける。
家のことなんて本人たちにやらせとけばええ。
りうちゃんが心配することはないんや。
その思いを胸に、うちは自分でできる
1番優しい笑顔をりうちゃんに向けた。
それを見たりうちゃんは、きゅっと口を結び
家から出てきた。そうして、兵の前まで出ていき
そっとガラスの靴に足を通した。
あー、この家から癒しが消えた……。
おかげでバンバン仕事が回ってくる。
自分のことぐらい自分でしろ。
りうちゃんは、よく文句も言わずこの状況に
耐えたな。年下やのに、尊敬するわ。
あの後、ガラスの靴の持ち主と判明した
りうちゃんは無事王子と結ばれ、
国全体で大々的に結婚式が挙げられ、
幸せハッピーエンドを迎えた。
お母様たちは、悔しそうに爪を噛んでいたが、
うちは幸せ。2人の前で頬がゆるむのを
抑えることに必死だった。
2人にはざまぁという言葉がお似合いだ。
これで、シンデレラ幸せ作戦は
終わったと思っていた。やのに、
「なんでおるんや!?」
「え……?だめだった?」
なぜかいむくんが毎日遊びに来るようになった。
「だめじゃないけど!え、ほんまに
何しに来たん……?」
ここ数日何しに来たのか聞いても、
暇だったからとか、近くを通ってとしか、
言うてくれへん。もしかして、
この間の作戦のお礼がなかった、とか……?
「いむくん」
「はーい、どしたの?」
ガバっと頭を下げる。
「この間のお礼してへんかったよな!?
あんなに手助けしてくれたんに遅くなってしもて
何でもするから言うてくれへん?」
その言葉にぴくりと反応が見えた。
絶対そのせいやったやん。
暇だったからとかやないやん。
ふぅ、といむくんが息をついた。
何を言うつもりや……?
「初兎ちゃん。僕ね、初兎ちゃんのお願いは、
できることならなんでも叶えるつもりなの。
この間のお願いもそう。
だから、お礼なんていらない。」
ん……?じゃあ、なんで反応したん。
「じゃあ、ここで初兎ちゃんに問題。
なんで、僕は初兎ちゃんのお願いを全部
叶えるのでしょうか」
確かに。それはうちも最初からずっと思っていた。なんで助けてくれるんやろって。
ただのお人好しだと思っていたけど……。
強いて、そこに理由があるとすれば
「友達やから……?」
それしかでてこうへん。
「ぶっぶー、違います」
あ、違った。え、じゃあ、何?
「正解は」
正解は?答えを待っていると、いむくんは
柔らかく微笑んだ。
「初兎ちゃんのことが好きだから」
……え?聞き間違いじゃあらへんよな。
「す、き……?」
戸惑いが隠しきれないうちに理解させるように
「そう、好きだから」
と、もう一度繰り返した。
「だから、お礼はいらないけど、
僕からのお願い。僕と結婚してくれない?」
けっこん……、血痕……、……結婚?
りうちゃんがこの間したやつ??
いや、ないないない。
「いむくん、さすがに行き過ぎな冗談やで」
と笑いながら返すと
「ううん、冗談なんかじゃないよ」
と真剣な表情で返り討ちにされた。
あかん、これ、マジなやつや。
いむくんには恩がある。それは嘘やない。
でも、結婚するってなったら、
いむくんと同じ気持ちやないと、いむくんに
失礼な気がする。だから
「ごめんなさい」
それが今のうちの答え。
いむくんは傷ついたような顔をして、俯いた。
それを見て、でも、とうちは続ける。
「いむくんのことは嫌いやない。
やから、いむくんのこと、好きにさせてや。
そしたら、結婚しよか」
うちが言い切ると、いむくんは顔を明るくさせた。
「分かった!僕、絶対好きにさせるから!!」
そして、その日からいむくんからの
猛烈なアプローチが始まった。
「初兎ちゃん、初兎ちゃん!はい!
これ、今日のお花!」
「あ、ありがとな。これなんていう花なん?」
「サギソウ!」
「へぇ、そんなのあるんやな」
「今日さむっ。上着持ってくればよかったわ……。
……あれ、暖かくなった?」
「やっほ、初兎ちゃん!」
「あ、いむくん!」
「ふぁ…、あ、おはよういむくん」
「おはよう初兎ちゃん!」
「最近、よく寝れるんよな……」
「そうなの?よかったね!」
「ヒックグス」
「あれ、初兎ちゃん、どうしたの?」
「昨日の、夜、悪夢見ても、て、
それ思い出し、てしもて…」
「そっか、でも、初兎ちゃんに
涙は似合わないから……、えいっ」
「……あ、すごい。宝石になった……」
「初兎ちゃんが泣いてたのは、僕らの秘密、ね?」
「初兎ちゃーん!」
「あ、いむくん、どうしたん?」
「今日さ、晴れてるじゃん?」
「うん、晴天やね」
「だから、外出にちょうどいいかな〜って」
「うん……?だから、どうしたん……?」
「最悪や、なんで雨降ってきたん。
お母様から頼まれたもの、
濡らしたらあかんのに…」
「初兎ちゃん、それ、僕持つよ」
「いむくん!?えぇよ、うちが持つから」
「いいの、いいの。それに、ほら傘もあるし。
一緒に帰ろ!」
「今から魔法のショーを初兎ちゃんに見せます!」
「おぉ、どんなの見せてくれるん?」
「んー……、あ、そうだ。それっ」
「すごいっ!花びらがハートになった!」
「あー……、これから雑巾掛けせんと……」
〜数分後〜
「あれ?この部屋も?なんでや?
雑巾掛け終わっとる……」
「初兎ちゃ〜ん!お掃除終わった〜?遊ぼ!」
「は、は〜い!今行く〜!
……え、なんで終わっとるん!?」
「はい!これ初兎ちゃん好きそうなやつ!」
「うさぎのポーチ!?可愛い!えぇの?」
「いいの!初兎ちゃんにあげたいんだから!」
「んふ、ありがとうな、いむくん」
「……初兎ちゃん。ちょっと向こう向いてて」
「……?はーい?」
「っほんとに不意打ちだめだって…
(小声+顔、耳真っ赤)」
最近……、いむくんにたくさん
甘やかされてる気がする……。お花とか、
最初は花瓶に飾ってたけど、量が多なって
花壇に移したし、うさぎのポーチももろたし。
好きにさせてと言うたのはうちやけど、
なんか申し訳ないなぁ……。
「初兎」
やば、お母様が呼んでる。
「はい!今行きます!」
お母様のもとへ行くと横にはお姉様もいた。
「どうされましたか?お母様」
買い物、とかだろうか。
「最近、初兎が会っているのは誰?」
「え……?」
いむくんのこと……?どうして、急に……。
「シンデレラが王子と結ばれ、
あなたは悔しがると思っていたの。
しかし、あなたは無表情だった。
もしかしたら、無表情で悔しがってるのかもと
思ったけれど、最近のあなたは心の底から
幸せそうに笑っているわ。まるでシンデレラが
結ばれて嬉しいとでも言うように」
紛れもなく、最近うちは心の底から笑えていた。
一体お母様は何が言いたいんや?
「それに、今まではシンデレラがしてきた仕事を
あなたに押し付けるようになったけれど。
あなた、1度も下人のような仕事はしたことが
ないはず。なのに、なぜあなたはそんなにも
手慣れて仕事が行えるのかしら?
まさか、隠れてシンデレラの手伝いをしていた
とかではないでしょうね?」
今まで全力で隠してきたつもりやった。
けれど、こんなことでバレるなんて……、
油断していた。
「そう。黙っているということは、
肯定ということね?」
しまった。考え事をしていたから、
黙ってしまっていた。
「違っ……、お母様、
そんなことあるわけないでしょう?」
慌てて答える。ここでバレたら、
何が起こるかわからない。
お母様は、実の娘には優しいはず。
そう願ったのに。
「そうね?これまでのあなただったら、
そう思ったかもしれないわ。最近、あなたが
会っているのは魔法使いの1人でしょう。
ずっと疑問だったの。
シンデレラがどうやってあの綺麗なドレスや
ガラスの靴を手に入れたのか。
それも、魔法使いなら魔法で出せるはずよね?
そして、魔法使いもシンデレラが結ばれてから
来るようになった。これって、
あなたが関係しているんじゃないの?」
すべて、すべてがバレている。
隠しようがない。隠したらどこかでボロが出る。
焦りからぎゅっと唇を噛む。
「それでね?初兎。私、思ったの」
突然、お姉様が話しだした。
「魔法使いは貴重な存在。
高貴な私にふさわしいって。だから、あんた。
私に魔法使いを紹介しなさいよ」
つまり、お姉様はいむくんと結婚したいってこと?
それは……
「い、やです」
それだけは嫌だ。
お姉様だと絶対優しいいむくんに迷惑をかける。
それに、いむくんの隣は――うちだけや。
この最悪な瞬間でうちはこの気持ちを自覚した。
「はぁ?ふざけないでよ。
あんたは私より下なのよ?
年下は年上に譲って当然の存在。
身の程知らずって知ってる?」
お姉様に何を言われても、これだけは絶対に嫌や。
いむくんを他の人に譲るなんてしたくない。
はぁ……、とお母様がため息をつき立ち上がった。
なにが起こるんや……?
「初兎。私はこれが最後のチャンスだと
思っていたのだけれど、どうやらあなたは、
私たちに裏切っていたようね。関係ないのなら
魔法使いを姉に紹介できるものね?」
最初から、分かっていたんや、お母様は。
「ふんっ。さっさと私に紹介しとけば
よかったのに。ねぇ、お母様?」
うちは、はめられたんや。この2人に。
血の繋がった家族に。
「あんた、この裏切り者を奥の倉庫へ
連れて行ってちょうだい」
お姉様が使用人に命じ、
うちは、家の奥にある倉庫に閉じ込められた。
ごめんな、いむくん。
これからしばらく会えへんかもしれへん。
こんな最低なうちを好きになってくれて、
ありがとう。
「――!――?」
「――。――。」
倉庫に放置されてしばらく。
倉庫の中から微かに外で話している声が聞こえた。
誰や……?
「初兎ちゃんはどこ?」
「初兎なら、今、買い物中ですわ。
それより、私とお茶をいたしませんか?」
あ……、いむくんとお姉様や……。
2人が話しているの、なんか嫌やなぁ……。
そう思って耳を塞いでいても、声は入ってくる。
「ねぇ、初兎ちゃんはどこ?」
「っだから、買い物中ですわってさっきも言っ」
「僕は初兎ちゃんに会いに来てるの。
いないんだったら待ってるから、
いい加減そのうるさい口黙ってくんない?」
いつもと違う雰囲気だということが口調からでも
わかる。明らかに怒っているいむくん。
こんなこと今までなかった。どうして……。
「そ、それでは、待っているのでしたら、
ぜひ家の中で待ちませんか?家の中でしたら
あたたかいですし、それにお菓子も」
「いい。外で待ってる」
いむくん、お菓子好きやったよな……?
なんで、そこまで外で待っているんや……?
「……ねぇ、いい加減にしてくれない?
初兎ちゃんのお姉さんだかなんだか
知らないけど、その茶番いつになったら
やめんの?」
「っ舐めた口聞いて、
どうなるか分かっているんでしょうね!?」
「それはあんたのことじゃない?」
「何言って……、っきゃぁあ!!?」
何が起きてるんや……?
声だけじゃ何もわからない。
外で何が起こっているのか、
お姉様が叫んだ理由も、何もかも。
突然、倉庫の扉がガタンッと大きな音を鳴らした。
今度は何や!?
「ッチ、鍵かかってるし」
い、今のいむくん!?舌打ちしてた!?
「初兎ちゃん?ここいる?」
今度はコンコンと扉が鳴った。
いむくんの声はさっきと打って変わって、
いつもの優しい声。
「いむくん?うち、ここにおるで」
「おっけ。初兎ちゃん少し下がってて」
訳が分からないけど、とりあえずいむくんの
言う通りに倉庫の1番奥まで下がった。
瞬間、ドカンッとさっきの音よりも大きな音を
出して扉が爆破した。
「ひゃあっ!?」
「っあ、ごめんね!?勢いに任せて
やっちゃったから大きい音だしちゃったね!?
びっくりしたよね!?」
「だ、大丈夫や……」
思わず腰が抜けてしまったけど
「立てる?」
そう言って、いむくんはうちに手を
伸ばしてくれるけれど、腰が抜けているうち。
立つことができない……。
「あー…、腰抜けちゃった感じ……?」
そんなうちをみて、小さく苦笑した。
「もう、しょうがないなぁ」
そう言っていむくんはヒョイッとうちを抱えた。
横抱きで。言い換えればお姫様抱っこ。
「ひゃあっ!?」
今度は別の意味で声が出た。
「ちょ、いむくん!?何してるんや!?」
いむくんの上でバタバタ暴れると、
しーっといむくんは笑った。
「そんなことしてたら、落ちちゃうよ?」
その言葉を聞いてピタッと動きを止めた私に
いむくんはさらに笑った。
「……うわぁ、いむくん派手にやったなぁ」
「ごめん、つい……」
「つい……でやる量ちゃうわっ!」
倉庫を出てみると、いむくんの魔法によって、
まるで戦場になった庭が広がっていた。
花壇は花がぐちゃぐちゃに荒れ、
たまにお茶をしていた机と椅子は
バキッと折れている。
お姉様はどこから出てきたかわからない蔓で
口や体を縛られている。
「んー!!んー!!」
顔だけでもこの蔓外しなさいよ!!と
聞こえるあたりお姉様は元気らしい。
それよりも、使用人のほうがバタバタと
倒れていて心配になる。
いむくんに聞くと、どうやら催眠魔法らしい。
数分前までうるさかったお姉様も、
先程いむくんがかけた魔法で今ではぐっすりだ。
「あ、そうや、いむくん」
ふと、伝えとかなきゃいけないことを思い出した。
「どうしたの?初兎ちゃん。また何かあっ」
「いむくん、大好きやで」
「……へっ?」
喋っていたいむくんの言葉を遮り、
愛の言葉を伝える。最悪な方法で自覚したが、
この気持ちが大切なことには変わらない。
真っ赤な顔したいむくんが可愛くて、
ふふっ、と笑うと
「っあー!ほんっと初兎ちゃんには敵わないや」
と、いむくんはしゃがみ込んだ。
シンデレラ――りうちゃんの王子様はお城にいた。
うちの王子様はずっとそばにいて、
見守ってくれた。そばにいたからこそ
気づくのに遅くなってしもうたけど。
それがうちの大好きな王子様や。
「なぇ、いむくん、顔見せてや」
「ねぇー、もう、ちょっと待って。
ほんっとに、今見せたくないんだけど」
「初兎ちゃん。ほんとによかったの?」
「えぇよって言っとるやん。それとも、
うちと一緒に暮らすの嫌?」
「全然!むしろ嬉しいです!!」
「じゃあ、決まりやね。今日からうちも
この家の住人や」
あれから数日。
うちは、あの家から出ることを決めた。
それから、住む家なかったら僕の家に住む?
といういむくんに甘えて
いむくんの家で一緒に住むことにした。
今日は初めていむくんのお家にお邪魔する日。
「なぁ、いむくん」
「どうしたの?初兎ちゃん」
うちが呼ぶと必ず反応してくれるいむくん。
そんな彼にうちは言葉を続ける。
「うちと一緒に住むってなったら、うちは
いむくんを離す気がないってことやけど、
覚悟はえぇ?」
にやっといたずらっぽく笑うと、
いむくんは目を見張った後、
ふはっと吹き出した。
え?うちなんかおかしなこと言った?
「初兎ちゃんが僕を離す気がないのは、
分かったけど。それは初兎ちゃんだけ
じゃなくて、僕もだって分かってる?」
そんなこと言わなくてもわかってるでしょ〜?
と、いむくんはこちらをみる。
「何〜?僕が離れていくとでも思ったの?」
そんなことあるわけないのに、そう言いながら
ふふっと笑ってうちをぎゅ~と抱きしめる。
そんなことをしてくるから、ぽつりぽつりと
心の声が溢れ出てくる。
「やって……、うち、めんどくさいで?
寂しい時は構ってほしいし、
眠くなったらいむくんに抱きつくかもしれん。
朝起きたらハイテンションで疲れさせるかも。
いむくんは、さっきうちに、
『ほんとにいいの?』って聞いたけど、
逆にいむくんは、ほんまにえぇの?」
自分で言ってるくせに、どんどん自分の言葉で
落ち込んでいく。
「だーかーら!!僕は、初兎ちゃんがいいの!!」
抱きしめていた腕を離し、肩を掴んだ。
「誰が何と言おうと、仮にそれが初兎ちゃん本人
だったとしても、僕が好きになったのは、
初兎ちゃんで、それは絶対変わらないの!!」
ぷくーっと頬を膨らませているいむくんは、
「見てて」
そう言って杖を取り出た。
ふぅ…と息をついたかと思うと、空中に
杖で何かを描き始めた。何をしてるんや?
「……できた」
小さく呟くいむくんの手には、
金属の輪っかがあった。
「シンデレラに12時までしか
魔法がかけれなかったことが悔しくて、
あの後いろんな魔法をたくさん練習したんだ」
うちが言ったの引きずってたんかな。
そうだったら、そんなつもりで言ってへんから。
ごめんな。
「その時に習得した魔法で」
するりとうちの左手を持ち上げる。
「空中に描いた絵が現実になる魔法。
時間制限とかなくて、
ちゃんと在り続けるから安心してね」
金属の輪っかは、薬指にぴったりとはまった。
金属の輪っかの中心には、
きらきらとした石が輝いている。
これ、もしかして指輪……?
「結婚指輪。好きになったら結婚してくれる
約束だったもんね?」
『好きになったら結婚する』
そんな口任せな約束だった。
けれど、その約束は果たされた。
「僕の気持ちも、言葉も、魔法も
全部全部初兎ちゃんにあげる」
この魔法使いによって。
「初兎ちゃんは、僕の隣で
ずっと笑顔を見せてくれませんか?」
あの時と同じ見返りを求めない。
いむくんらしいプロポーズ。
頬を壊れ物のように手で包んだと思うと、
額にそっと唇を寄せたあと、
「返事は?」
と言って愛おしそうに微笑んだ。
いむくんの言葉から、行動からの愛に
直接触れて、愛しさが込み上げてくる。
それによって視界は滲んだけれど、
返事なんかとっくに決まっている。
「うんっ……!」
返事をすると、いむくんは今度は
おでこではなくうちのそれに唇を寄せた。
「初兎ちゃん見てて!」
杖から水が噴水のように溢れ出し、
庭の花は水を浴びていく。
あれから不安なことも恐ろしいことも
起こっていない。
もし起こったとしていても、
いむくんと2人一緒にいられるなら大丈夫。
お母様やお姉様にも会っていないから、
どうなっているかわからないけれど、
うちはいむくんと幸せに暮らしています。
『困ってそうだったから』
そう言って、洗濯物を手に集めてくれた時から
いむくんは、きっとうちが幸せになる魔法を
かけてくれていた。
今でもそれは続いている。
いむくんの隣にいる限り、
あなたを大好きでいる限り、
うちの王子様は魔法をかけてくれるだろう。
「初兎ちゃん、ぼーっとしてどうしたの?」
「んーん、今日も幸せやなぁって」
「ふふ、僕も!」
優しくて愛しい笑顔を向けて、
「いむくん、大好きやで」
「初兎ちゃん、大好きだよ」
きっと幸せになる魔法を。
〜きっと幸せになる魔法 end
おまけ1(プロポーズのあと)
S.side
「初兎ちゃん、顔真っ赤だね」
そりゃそうだ。
いろんな箇所にキスを落とし、ハグをして、
たくさんの過激なスキンシップを
いきなり受けたうちは顔が真っ赤。
ほんのりと耳が赤かったいむくんには、
気づかなかったけれど。それでも、
その言葉はうちの闘争心に火をつけた。
「いむくんってさ、魔法の練習したんよな?」
突如そんな質問をしてきたうちを
不思議そうに見ていたが
「うん……?ある程度はできるはず。
初兎ちゃんにまた魔法のことで、
がっかりさせたくなかったからね」
いむくんはそう返した。
その返事を聞いて、
あ、やっぱり気にしてたんや。とも思ったが
1つやってみてほしい魔法を思いついていた
うちはもう1つ質問をした。
「性別転換の魔法ってできる?」
「……え?」
『性別転換の魔法』
そう言ったうちにいむくんは息を飲んでいる。
「ちょ、初兎ちゃん?もっかい言って」
「やから、性別転換の魔法」
聞き間違いかと思い、もう1度聞いたが、
結局聞き間違いでないと分かったいむくんは
深く息を吸い込み、
自分に言い聞かせようとしていた。
そない驚くことかなぁ?
「一応……、できるとは思うけど……」
「ほんま!?それ、うちにかけてや!」
その言葉を言われるのが嫌でしたと
言わんばかりの顔をするいむくんに、
期待に満ちた顔で懇願するうちは、
傍から見ればカオスだろう。
「いむくんの魔法、うちにくれるんちゃうの?」
先程のプロポーズの言葉を復唱すると、
あー…と、いむくんは遠い目をした。
「言ったね、うん、言った。僕の負けです。
よし、魔法かけますねー」
明らかに渋々いむくんはうちに魔法をかけた。
「おぉ…、いむくん、すごいな!
ありがとう!」
「……男の初兎ちゃんに言われるの複雑……」
長かった髪は短くなったが、
サイドのピョコンとした髪はそのまま。
心なしか身長も伸びた気がする。
声も当然だが低くなった。
これですること。
「ベット行こや、いむくん」
「えぇ……」
嫌がるいむくんをすっと抱き上げた。
これも男のうちじゃなきゃできなかったこと。
そっと近くにあったベットに
いむくんを下ろし、その勢いのまま押し倒す。
そして、いむくんの手首を片手で掴み、
頭の上に持ってくる。
最後に勝ち誇ったように笑い、
「これで、いむくんのこと攻められるな」
と、一言。いむくんをみると、
眉間にしわを寄せていた。
「初兎ちゃんなら、こんなこと
しそうと思ったんだよねぇ…」
はぁ、と諦めたようなため息をした。
なんや、バレてたんや。
「だからね?」
いむくんがそう言うと、
ポンッとうちの身体はもとに戻った。
「5分でもとに戻るように、
魔力調節しといたんだ」
これも練習のおかげ、といむくんは笑った。
いむくんのほうが一枚上手やん。
なんやの、ほんまに。
むっと拗ねていると、ところでさと
いむくんが声をかけた。
「この状況、わかってる?」
え?と声を出す前に視界が反転した。
上を見上げればいむくんの顔がすぐそばに。
さっきまでうちがいた場所にあった。
「僕にそういうことしたってことは、
初兎ちゃんにも大丈夫ってことだよね」
ドレスの裾から手を入れ、足を一撫でされる。
「ち、違っ……ふぁっ……」
やば、変な声出たと思って口を覆うと、
どこからでてきたかわからないリボンが
頭の上で手首を結び、
途端に身体が動かなくなった。
「ふあっ、って初兎ちゃん、
そんなにかわいい反応してくれるの?
隠さないでもっと聞かせてよ」
妖艶に笑ういむくんの手には杖が握られていた。
動かなくなった身体では、抵抗できず、
いむくんに身体を触られ、
自分でも聞いたことのない甘い声が
静かな部屋に響き渡る。
「やぁっ……、いむ、くん、止めてやぁ」
涙目でそう訴えても、手が止まることはない。
ふと、いむくんがピタッと手を止めた。
その隙にうちは息を整える。
「初兎ちゃん、外見て」
何を思ったのかいむくんはそう言ってきた。
いむくんは窓を指差し、口角を上げた。
「きれいな青空。夜が明けるまで
たっぷり時間があるね。
朝までたっぷり愛してあげるから」
軽はずみであんなことやっちゃいけない。
そう思っても、もう遅い。
口の端から舌をのぞかせ、愛おしそうに
うちをみているいむくんからは、
狼の耳が見えた気がした。
その後も媚薬魔法や指示に従う魔法で
散々な目にあったのは言うまでもない。
おまけ2(いむくんの好きになったきっかけ)
H.side
なんか面白いことやってないかなぁ…
そんな淡い期待を胸に、
ほうきに乗って街へ出掛ける。
ふと、市場の上を通ると街の中でも
一段と目立つ赤色の髪が目に入った。
あの子、いつも忙しそうに仕事してる。
なんでだろ。
最初はそんな些細な好奇心だった。
そんな思いから、家についてきてしまった。
……うわぁ、あの子可哀想。
お母さんとお姉さんたちに嫌われてんの?
それで仕事押し付けてるわけ?やばすぎ。
……あれ?
あの子だけこの子をみている目が違う?
白髪の女の子だけは、赤髪の子を
とても心配そうに見ていた。
それでも他2人の目は蔑んだように見ているから
きっとこの子も逆らえなかったのだろう。
すごい複雑な家庭環境だな、この子たち。
その日から、その家をよく見るようになった。
その数日後だった。異変に気付いたのは。
この白髪の子……、たしか初兎ちゃん、だっけ?
お母さんやお姉さんがそう呼んでいた。
この子のほうが赤髪のシンデレラ?って子より
仕事やってない?それもこの子、シンデレラが
押し付けられた仕事の半分以上を……。
まるでシンデレラの負担を減らすように。
その日からは、白髪の子――初兎ちゃんに
興味が向くようになっていた。
それで分かったこと。
初兎ちゃんはシンデレラのことを大切な妹、
なんならほか2人と違って大好き。
でも、2人に逆らえない様子。
だから、2人にもシンデレラにも隠れて、
シンデレラの負担を減らすため、
日々家事などを行っている。
時々でちゃうおっちょこちょいで
逆に仕事を増やしてしまいそうになる時も
あるみたいだけど。
そのおっちょこちょいで、シンデレラは
初兎ちゃんが仕事をやってくれているのを
薄々気づき始めているみたい。
うさぎが大好きで、甘いものも好き。
お肉も好きだけれど、本人は女の子なのにと
気にしているらしい。
別に女の子でもお肉好きなのはいいでしょ。
と、見る感じで分かったこと。
これだけ見ているけど、
僕は決してストーカーなんかじゃない。
ただ心配で見ているだけ。ただそれだけ。
ある日。初兎ちゃんがシンデレラを
部屋に呼んでいる場面に遭遇した。
どうやらたくさんもらったお菓子を
シンデレラにも分けてあげようとしている
みたいだった。
あれは、チョコかな?
銀包みの個包装されたチョコを
シンデレラの手に持たせる。
シンデレラは初兎ちゃんを見て、
目を輝かせていた。
何か喋っているが、外からでは何も聞こえない。
とはいっても、2人に流れる雰囲気は
仲が良さそうに話している姉妹だ。
あ、シンデレラがチョコ食べてる。
チョコを食べ、顔をほころばせている
シンデレラに初兎ちゃんは頭を撫で、
幸せそうに笑った。
その笑顔を見て、胸が高鳴るのが分かった。
顔が徐々に熱くなり、
横にいるシンデレラが目に入らないほど
初兎ちゃんだけの視界になった。
これが一目惚れ……?
そう自覚するのも遅くはなかった。
本当はその日のうちに話しかけに
行きたかったけど、いきなり話しかけるのは
あまりにも不審すぎてやめた。
だから、タイミングを計り、
外に誰もいない、初兎ちゃんが洗濯物を
落とした時に偶然を装って話しに行った。
思わず名前を初兎ちゃんから
自己紹介される前に言っちゃったのは、
話せたのが嬉しすぎて気分が
高くなっちゃったからかな。
これが一目惚れしてから2、3ヶ月後の話。
そして、この半月後。
僕の長い長い片思いが結ばれるのを
僕はまだ知らない。
〜Fin