テラーノベル
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バスティンに縋り付いて泣いた翌日、主は腫れぼったい目を冷やしながら別邸に案内してもらっていた。
「こちらが別邸でございます。2日間ハナマルさんという方がお子様のお世話をしてくださっていましたので、何もお気になさることはありませんよ」
🌸『そんな・・・2日も寝ていた上に子供の世話までしてもらって・・・
私何もお礼できないのに・・・』
主は申し訳無さそうにベリアンを見上げては俯くのを繰り返していた。
別邸に到着すると、赤子を囲んでハナマル、ベレン、フルーレが言い争いをしているところだった。
「ぜーーったい俺のぬいぐるみが一番気に入ってるんです!!」
「いーや、おれの竹まりのほうが噛み心地がいいから気に入ってますー!」
「はあ?どうみても俺の抱き枕でしょ!」
どうやら誰のおもちゃを一番気に入っているかで揉めているらしい。
ベリアンはびっくりして固まってしまった主を見て、深々とため息を吐いた。
そして、パンッと1つ手を叩き執事達の視線を集めた。
「こらこら、主様がお見えですよ?ご挨拶はどうしたんですか?」
「「「す、すみません」」」
執事達は慌てて立ち上がり、主に頭を下げた。
🌸『あ、あの・・・この子のお世話をしていただいてありがとうございました』
主が執事達に頭を下げると、慌てて止められた。
「そんな!お顔をあげてください!」
「気にしなくて良いよ〜こっちが勝手に預かってたんだし」
「そうそう。俺達も何だかんだ楽しかったしね」
執事たちはベレンの言葉にうんうんと頷く。
🌸『で、でも・・・』
主はそれでも引け目を感じているらしく、ソワソワと落ち着きがない。
ハナマルは赤子を抱き上げ、主に渡した。
「ほら、母ちゃんだぞ〜」
🌸『え、あ、あの・・・』
主は戸惑いつつ我が子を抱きしめ、ハナマルを見上げた。
「ほらほら、そんなとこに立ってないでこっちおいでよ。
ちょうど美味しいあんまんがあるから出してあげよう」
ハナマルはニヤニヤしながらそう言うと、主の腕を掴んで小上がりに誘導した。
主は緑茶とあんまんを堪能して少し落ち着いたらしい。
きちっと正座しながら湯呑みを置くと、畳の上のおもちゃで遊ぶ我が子を見つめた。
「・・・それでさぁ、言いづらいなら無理にとは言わないけど、今まで何があったのか・・・聞かせてくれない?」
ハナマルがそう言うと、主は困ったような顔をした。
🌸『・・・』
「そっか、まぁ嫌なことを無理に思い出せとは言えないしねぇ」
ハナマルは主から情報を聞き出すのは諦めたが、そこにテディが入ってきた。
「あの、もしかしてですけど・・・家族関係でなにかあった感じですか?」
🌸『え・・・』
「ああ・・・やっぱり・・・
俺もそうだったから、何となくそうかなって思ってたんです」
🌸『あ、貴男も家族と何かあったのですか・・・?』
「はい・・・あ、俺の名前はテディと言います。テディ・ブラウン・・・よろしくお願いします。
俺には双子の兄が居たんですが・・・その兄貴がとても出来が良くて、落ちこぼれの俺はいつも家族に疎まれていたんです」
🌸『わ、私も・・・出来の良い兄が居て・・・私は何も出来ないからって、いつもごはんを貰えなかったり家に入れてもらえなかったりして・・・』
「あは、そんなところまで一緒なんですね・・・俺もそうでした。
でも、兄だけは俺の味方をしてくれてました・・・
まぁ・・・もう死んじゃったんですけどね」
🌸『・・・そう、なんですね・・・
私の兄は私に興味が無かったので、何もしてくれませんでした・・・
今生きているかも分かりませんが・・・
私はもう、あの家族には未練はありません・・・もともと家族ではなかったのですから・・・』
「そうですか・・・お辛かったですね・・・」
🌸『貴男も・・・
でも、貴方は双子だからもっと大変だったんじゃ・・・』
「う〜ん、まぁそうですね・・・
兄が死んだ時、兄のフリして家に戻ったら「死んだのがテディでよかった」と言われたのは堪えましたね・・・」
🌸『ひどい・・・』
2人は家族から疎まれた過去を抱えた者同士で痛みを共有できたらしく、テディはいつもより素に近い表情や話し方をしていた。
主も自分のことを積極的に話し、ずいぶんと緊張が解けているのが分かった。
MAKO
しばらく主とテディが話し込んでいると、赤子がぐずりだした。
🌸『あ・・・すみません』
「いえいえ・・・オムツかな?ミルクかな?」
🌸『多分お腹が空いているんだと思います』
主は服の胸元を寛げて胸を出そうとする。
「わーーーッ!ダメです!隠して隠して!!」
真正面から膨らみを見てしまったテディは真っ赤になって狼狽える。
他の執事たちも悲鳴を上げて顔を隠したり、毛布を取りに走ったりする。
主は何がいけなかったのかよく分かっておらず、きょとんとしている。
🌸『あ、あの・・・?』
「主様!!人前で!肌をさらすなんて!!ダメです!!」
ベリアンが主の肩を掴んで叫んだ。
🌸『ご、ごめんなさい・・・』
結局、誰も居ない2階で授乳してもらうことになり、ベレンに案内されて主が階段を上がっていった。
「いや〜、びっくりしたぁ」
「まさかあんなことをなさるとは・・・」
「///」
テディは赤みの引かない頬を押さえながら、主が戻るのを待っていた。
2階では扉越しにベレンと主が話していた。
「ねぇ、主様・・・もしよかったら、ずっとここで暮らさない?」
🌸『え・・・?』
「俺達は主様が居ないと悪魔の力が使えないし、魔導服の穢れも処理できない。
主様が居ないと死んじゃうかもしれないんだ。
だから、主様さえ良ければここで暮らしてほしい」
🌸『で、でも・・・迷惑じゃ・・・』
「迷惑!?とんでもない!
俺達は主様達のお世話ができることが一番の喜びなんだよ?」
🌸『う、う〜ん・・・』
「あはは、今すぐに決めなくてもいいけど・・・考えておいてほしいな」
🌸『は、はい・・・』
「あ、そうだ!主様の名前を教えてくれないかな?あと、その子の名前も」
🌸『はい・・・私は🌸と言います・・・この子は🌼です・・・』
「可愛い名前だね・・・主様達にぴったりだよ」
🌸『そんな・・・名前負けしてます・・・』
そんな会話をしているうちに授乳が終わり、主は部屋から出てきた。
🌸『お、お待たせしました・・・』
「大丈夫だよ。さ、戻ろうか」
ベレンにエスコートされ、階段を下った。
🌼をベレンに預けた🌸はベリアンに向き直り、頭を下げた。
🌸『勝手なお願いではありますが・・・私達をここにおいてください・・・』
「!?主様!?」
🌸『私にはもう行くところがなくて・・・ここはすごく居心地が良くて・・・ベレンさんもここに居ていいって言ってくれたし・・・ここに居たいって思ったんです・・・』
ベリアンは感動のあまり涙を零しそうになりながら主を抱きしめた。
「あぁ!なんという喜びでしょう!!
・・・主様、そのお言葉に偽りはありませんよね!?」
🌸『は、はい・・・』
主はベリアンの胸に顔を埋められたままもごもごと返事をする。
「ありがとうございます、主様・・・
では早速、もうあちらの世界に帰れないように細工をさせていただきますね♡」
ベリアンは主を押さえつけ、いつの間にか背後に立っていたミヤジに目配せする。
ミヤジは主の左手を取ると薬指の指輪に触れ、魔力を送り込んだ。
これで主が指輪を外しても、心から帰りたいと思っていなければ帰れないようになった。
「主様・・・ずーっと一緒に居てくださいね?」
主は旦那とまったく違う意味で悪い男たちに捕まってしまったことを悟ったが、もう後戻りが出来ない所まで来てしまった。
主は小さくため息を吐き、体の力を抜いてベリアンに身体を預けたのだった。
コメント
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うわー、第6話もすごく温かい気持ちになりました…!主が少しずつ心を開いて、テディさんと過去を共有するシーンが特に印象的でした。お互いの傷を分かち合える人がいるって、本当に救われますよね。そして最後のベリアンさんの「ずーっと一緒にいてくださいね」が、甘くてちょっとヤンデレっぽくてドキドキしました!主が少しずつ居場所を見つけていく感じ、じんわりきますね🌸