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第6話ー黒刀は、藤に堕ちる
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その後姉と私の攻防戦であの人たちは負けた。姉により深いトラウマを植え付けたので暫くは私たちの前に現れることは無いだろう。
これで平和な日々が少しの間は保証されたかな、と小さな期待を胸に傷だらけの二人で手を繋ぎ帰路へと急ぐ。
「⋯依織、お疲れ」
「お姉ちゃんこそ。」
疲れ切った姉の淡い笑み。私も柔らかく微笑みを返した。
「やっぱ俺たちは最強の相棒──いや、恋人、かな」
いつも通りの姉の様子に張り詰めた緊張感が解けた。
「──お姉ちゃん、ずっとそのままで居てね」
いつものように躱さなかったからか、姉は言葉が出ていないようだ。
「ん⋯?依織?」
「?どうしたの、別になんともないよ、?」
「ん、そっか。ちょっとこっち」
柔らかな表情でそう言った。繋がれた手は温かく、私を導いてくれる
✦ ✦ ✦
「⋯依織」
目の前に広がる藤の花。依織にどうしても見せたくて、強引にだが連れてきてしまった。
「すごい⋯綺麗⋯⋯!」
そう言ってどんどん先へと進んでいく。
想像以上に喜んでもらえて俺は幸福感でいっぱいだ。
「凄いねお姉ちゃん⋯!夢みたい!」なんて言ってはしゃぐ依織が可愛くて、愛おしくて。
依織の紫苑色の髪と藤が重なり光を帯びて、天使のような印象を与える。
「依織─」
「お姉ちゃん?」
そう、小首を傾げて振り向く彼女の虜になる。
過ごすたび、過ごすたびに依織に対する好きが更新されていく。それが幸せで。
「例え…俺が死んでも。依織のこと絶対守るから、」
そう言うと俺は依織の柔らかな唇にそっと触れるだけのキスをした。
藤のカーテンに隠れる俺たち。それは俺の秘密の恋心までも隠してはくれなかった。
「お姉ちゃん⋯?」
「あ、⋯⋯⋯ごめん。でも⋯俺は、本気だから」
「⋯うん」
依織の透る白肌がだんだんと赤く色づく。きっと、俺も同じなんだろうな、と思うと何とも言えない恥ずかしさと、それに負けない達成感が込み上げてきた。
もう一度、依織の手を取る。指を絡めると絡め返してくれた。それだけで幸せだった。
大好きだから。絶対護るから。だからどうか、ずっと一緒に居てほしい。
「⋯愛してるよ」
その声は空に浮かぶと直ぐに消えてしまった。だが依織の耳には届いているだろう。
「⋯うん」
依織が消え入るような声でそう云った──
別に恋が実って欲しいわけではない。でも二人で居る間は、どうかこのまま居させて。
完__
コメント
1件
美代ちゃんを貸して頂き…百合許可を出してくれたパーカーマン☆ニキに感謝を…そして佐藤姉妹に乾杯🥂