「ねえ、テレビ見た?」
「ごめん、見てないわ。どんな内容?」
20XX年。僕は机に肘をついて頬に手を当てたまま、空を眺めていた。少しどんよりとした黒い雲がかかっていて、雨が降りそうな気候だ。
天気予報によれば、午後16時頃から雨の予報で土砂降りになると予想している。傘を持ってきてよかったなと心の中で思う。
そんなことを一人で考えていたら、同じクラスの女子高生二人の会話が聞こえてきた。耳を傾ける。
「あのねー、ゾンビウイルスが研究室から漏れて人間に感染したらしいのよ」
「ええ!?そんなこと、ある!?」
「ねー。ゾンビウイルスなんて、漫画とかアニメの話じゃん。そんな事実、信じられないよね」
「もしそれが本当だったらまずいんじゃない!私たちも感染して、ゾンビになったりして……」
「まさかー、そんなわけないじゃん!」
そんな会話を聞いて、目を見開いた。しかし声をかけることはしない。友達でもなんでもないから。
二人はその後、他の話に移ったので聞き耳をやめた。どうでもいい話や愚痴話しなど聞きたくはない。
ゾンビウイルス……。それは身体が不死身になり、弱肉強食と言わんばかりに人間を食べるという奇行に走ってしまうやばいウイルスだ。
唯一の弱点は頭で、頭を撃ち抜くと確実的に死ぬと漫画で読んだことがある。もし感染して仕舞えば自分もゾンビになってしまう。
身体全身が震え上がり恐怖に陥っていたら、後ろから声をかけられる。驚きすぎて、肩が激しく揺れた。
「ひっ!」
「よぉ!顔青ざめてるけどさ。大丈夫?」
「あ、ああ……大丈夫」
彼は柊誠。僕の唯一の友達で、頭が良くいつも成績は二位をキープしている優等生。彼によく勉強を教えてもらっている。
顔も眉目秀麗のイケメンで、女性にモテる。
そのため、かなりのラブレターを貰っているところを見たことがある。とても悔しいが、本人はあまり気にしていないようだ。
彼は困った顔で、話しかけてくる。
「なんかゾンビウイルスっていうやべえーウイルスが繁栄したんだってね。この世界が終わりそうで怖いよ。終末世界がやってきそう」
「それは言い過ぎだろ!大丈夫だって。ここにはどうせ感染者なんて出ないだろ」
「そうかな……早めに避難したほうがいい気が……」
「そんなのただの噂だよ。気にすることはないって」
首を振って否定したが、頭のいい誠は一人で考え込んでしまう。
しかしこの考え方は誤りだったんだ。この学校にもゾンビウイルスが繁栄し、壮大な戦いが始まってしまうのだから。
雨が勢いよく降る中、傘をさしたまま学校へ向かう。途中誠と出会って、二人並んでたわいのない話をした。
誠の家は学校の近くなので、余裕を持って家から出られるが僕は電車通い。一度乗り遅れると、確実に遅刻してしまう。
出てくる時間が違うので、誠と二人で通うことは珍しい出来事だ。何かが起きそうな……そんな予感がする。
学校に着いた頃には、二人のカバンが濡れていた。傘をさしているが、全てカバーできなかったらしい。制服のズボンの裾も濡れている。水溜まりを踏んだせい。
内履きから外履きに靴を変えながら話をする。
「相変わらず、雨すごいな」
「だな。つーか、明日も雨らしいな。最近天気悪くね?」
「だよなー。天候が悪い時って、嫌なことが起こりそうだよね」
「そんなの迷信だろ?ありえないって」
二人は笑い合いながら階段へ進もうとしたら、真ん中の平らな場所で男子高校生が一人蹲っていた。
どうしたのだろうか?
「あのー、大丈夫ですか?」
誠が肩を叩いて声をかけた瞬間、その男の子が振り向いた。口の周りが赤くなっている。人間を食べているのだ。しかも肌が腐っているのか緑色で、ゾンビの容姿に似ている。
二人は叫び声をあげた。
「誠!」
なんとか誠が襲われないように階段から降り、逃げることにした。あいつに襲われたらゾンビになり、喰われたら人間を襲ってしまう。そんなことは絶対嫌だ!
彼の手を引いて、玄関に向かう。そしたら、誠にこっぴどく叱られた。
「おい!どこへ逃げるつもりだ!学校から出ると、雨に濡れるだろ!それに外の方がたくさんゾンビがいるだろ!大変なことになる」
「確かにそうだな。教室に行くぞ!」
ゾンビに襲われないようになんとか回避して、一階の廊下を走る。階段にいるゾンビをまくためだ。
ここは学生がいないのでなんとか安全であると思いたいが、教員室は危ない。先生がウイルスにかかっていたら襲われる。急いで教員室の前を通った。
教員室の奥にある階段に向かおうとした時、教員室の扉が壊れてそこから三体のゾンビが現れる。足が遅いので、なんとか撒くことができた。二階の廊下を走る。
自分の教室に向かって走り、自室の前に着いた瞬間誠が扉を開ける。そこは地獄絵図と化していた。
早めに着いた生徒たちがゾンビに食われていて、喰われた男女もゾンビに成り果てている。逃げる場所はない。
扉から出ようとしたが、扉の前にもゾンビが徘徊している。挟まれた。
「どうするつもりだよ!まだ登校してない奴らも巻き添えになるぞ!」
「くっ!ここは戦うしかない」
「戦うってどうやって?」
誠は近くにある机を持ち上げて、ゾンビにぶん投げる。しかし、それでもゾンビにはダメージがない。ゾンビたちがこちらに襲ってきた。絶体絶命のピンチだ!
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