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side藤澤
俺は、同じバンドのメンバーに監禁された。
いつからだろう、元貴が頻繁に家に誘ってくるようになったのは。
いつの間にかどんどん距離が近くなってきていて、最終的には素肌や腹、ごくたまに普通の人や若井なら絶対に触らないところに触ってくるようになった。
少し元貴に違和感を覚えて若井に相談などしていたけど、若井はいつも通りだよ、と促すだけだった。
マネージャーになんて相談出来るわけないから、1人で家で頭を抱えていた時に元貴から連絡が来た。
その連絡は、『今から家来ない?作曲困ってて』と来ていた。少し疑いながらも流石に作曲はと思い家に向かうと、待ってた、と優しく微笑む元貴がいた。その時の俺はホッとして家に上がった。
暫くここはこうじゃないか、とかここはこれでいいと思う、など作曲をしているうちに歌詞が完成した。ミセスにしては久しぶりの重い内容の歌詞でビックリしたけどまああるよな、と思いつつソファで休んでいると、元貴が喉乾いたでしょ、と紅茶を出してくれた。
ありがとー、と言って紅茶を1口飲んで暫くソファでスマホを弄っていると、元貴が隣に腰をかけて背もたれに体を沈めた。
すると急に天井を向いた元貴が、
「…涼ちゃん、眠くない?」
「たしかに眠いかも…」
たしかに言われてみれば眠い。10時間以上寝てきたはずなのに。ていうかなんで分かるんだろう。元貴の勘かな…。
そう思いながらもスマホを弄っていたら急に瞼が重くなった。
首をカクカクさせながら眠気に耐えていると元貴が寝てもいいよ、と笑った。お言葉に甘えて、とソファに寝っ転がさせてもらって、元貴に膝枕をされる。そのまま俺は眠りについた
薄暗い部屋で目を覚ました。
家なのかと言わんばかりに床と壁がコンクリートで、家らしく感じなかった。だけど、1つ分かるのはここは絶対元貴の家だ。
とにかく元貴と話したいからベッドから降りてドアに向かった。
ドアを開けようとしても鍵が掛かっていて開かなく、一瞬諦めそうになったけどなんでこうなったのか元貴と話したいからドアをドンドンと叩く。すると、ドアが急に勢いよく開き、ドアに体当たりをされる。いっ、と声が漏れて、結構な痛みで涙が出そうになる。グッと堪えて、元貴になんで閉じ込めたの?と聞くと元貴は頭を抱えて悩んでいるだけ。
何を考えているんだろうか。
「….おれなんか悪いことした?」
痛みと涙を堪えて言う。すると元貴が抱きついてきて何かを話そうとしている。
「してないけど、盗られたくないから。涼ちゃんって可愛いじゃん。だから変な虫に目付けられるのが嫌なんだよね。それに、俺以外見て欲しくないというか」
元貴が俺から体を離して冷静な顔で話し出した。 そんな元貴に少し引き気味になりながらもなにそれ、と言うと、元貴は俺の顔をふわっと撫でて立ち上がった。
「もう行くね」
元貴がドアを閉めてこの部屋から出ようとする。そういえばミセスはどうするんだろうと思い、急いで元貴にミセスはどうするのと声をかける。
「休止までは行かないけど、暫く収録とかレコーディングは無し。それでいい?」
「…….まあ」
そう相槌を打つ。でも、一応部屋にはキーボードや俺が担当している楽器が並んで置かれているから、腕が落ちることは無い。練習すればだけど。
薄暗い中元貴の顔を見上げていると、静かにドアの取っ手を持って、静かに部屋から出ていった。
…若井に会えなくなっちゃうのかな。色んな外部の人とも連絡取れないし、あの純粋な元貴もどこかに行ってしまったし。色々なことを思っていると涙が出てくる。
暫く泣いていると、ふと思いついたことがあった。覚えている限りのスケジュールだと、今日元貴は収録だ。だから、その時に逃げれるかもしれない。どうやって逃げるのかとかを考えていると、身支度を済ませた元貴がドアを開けて入ってきた。怯えながらもなに?と聞くと
「なんでもないよ」
と優しく微笑みながらもの足をガッと掴んでベッドまで引き摺ってきた。
「いっ..た、ッあ、!!」
そのまま持ち上げられてベッド上に乗らされる。バタバタ抵抗しても元貴の力に敵わず、足を押さえられて固定器具のようなものを足に付けられた。なにこれ、と引き気味で聞くと、
「逃げないようにするための。逃げられたら困る」
「逃げないよ」
真っ直ぐ元貴を見つめると、眉を傾げて黙り込んだ。そんなに信用ないかな、俺。まあ逃げるけどね。
元貴が部屋を出そうになったところで
「…俺ってそんなに信用ない、、? 」
そう声をかけると、
「そういう訳では無いけど、心配なの。」
元貴が悲しそうに俺を見て言う。
俺は少し黙ってそっか、と声を漏らす。
「いってらっしゃい、」
一声かけると、元貴は振り返らずにうん、とだけ言ってドアも鍵も閉めた。
足音が消えて元貴が絶対に家を出たと分かったから、まずは想定外だった足の固定器具をどうするかを考える。片方しかついていないのが不幸中の幸いだけど、本当にどうしようか。
これのせいでベッド周辺から逃げれないし、手で引きちぎろうとしても鉄だから絶対に無理だ。部屋になにか重たいものがあれば良かったんだけど、部屋にあるのはキーボードやヘッドホンなどしかない。あるとしても遠くにあって届かないのが困る。
..いいこと思いついた。
壁とか床に打ち付ければ壊れて取れてくれないかな。そう思って何度も試してみると、何回か打ち付けてみれば意外とすんなり壊れて足首が開放された。
取れた….?
嬉しくて思わず声が出る。すぐ様にドアに向かって走って、ドアの取っ手を握って引いてみるも空くわけがない。きっと外側からしか鍵が開け閉めできなく、どうしようと考える。
鍵穴はあるから、さっき壊した細い鉄の破片を使って開けてみるか、どうしよう。
一か八かで体当たりをしてみても、肩に痛みが走るだけでドアはビクともしていない。さっき考えた方法で破片で鍵穴を指してみると、入るは入ったけど回せるかどうかだ。運に任せて回してみると、ガチャ、と音が鳴る。もしかして、とドアの取っ手を握って下に引いてみると、広いリビングが目に入る。こんな簡単に開けられるもんなのか。
財布とスマホを探すために周りを見渡す。見渡す限りはどこにもなく、諦めて玄関へと走る。
急いで靴を履いてマンションから飛び出る。
生憎雨が降っていて、なるべく急いで足を動かす。ここから若井のマンションはまあまあ近い方で、走って約5分では着く。
焦りながらも走り続けて若井のマンションに飛び込む勢いで入る。そのままエレベーターに乗り込んで、若井の部屋がある階の数字を押す。ここまで来ればもう安心だ。
安心したせいか、開放されたおかげかか不意涙が出てくる。泣きながらもエレベーターから降りて、若井の部屋まで歩く。前まで来たからインターホンを押して若井が出てくれるまで待っていると、涼ちゃん!?と驚いている若井の声が聞こえた。
「待って、すぐ鍵開ける。寒いよね」
「ごめん..ありがとう」
ドアがガチャ、と開いて若井の顔が出てくる。びしょ濡れの俺を見た若井は
「なんでそんな濡れてんの!?とりあえず入って! 」
「うん….ありがとう、ごめん」
「謝らなくていいから、早く、寒いでしょ!」
若井に手を握られ靴を脱いで部屋に上がる。部屋に入った途端、暖かい空気、安心に涙が出そうになる。それをグッと抑えて手で涙を拭う。バスタオルを持ってきた若井が雨で濡れた俺の頭をバスタオルで包んでわしゃわしゃと大雑把に頭を拭いて、ついでにと着替えの服を貸してくれた。服は洗濯しておくから、と俺に微笑みかける。
その後、若井に話を聞いてもらった。さっき元貴と合ったことを話すと、若井はええ、と引き気味に相槌を打ったり、慰めたりしてくれた。若井はいつもより優しくて、頼りになった。色々と話してとりあえず今日は若井の家に泊まらせてもらうことにした。
「本っ当にありがとう…」
「いいよそんな言わなくて。流石に元貴でも鳥肌たったわ」
若井が口角を上げて笑う。流石にそうだ、あの元貴がこんなことするなんて思いもしなかったし、まさか俺とは。
暫くソファに腰をかけて休んでると、若井が俺の名前を呼んだ。
「どうしたの?」
首を傾げて聞くと、聞くより見た方が早いかも…と俺にスマホを寄越す。画面を見てみると、元貴からメッセージが来ていた。
「は….なにこれ」
スマホの画面を除くと、元貴から「涼ちゃんお前の部屋に居るだろ」と来ていた。
なんで、なんでバレた?なんでこんなに早く収録が終わったのか。
疑問は沢山あるけど、とりあえず若井に涼ちゃんは隠れてて、と俺を若井の部屋にグイグイと無理やり入れて来た。
「中から鍵閉めれるでしょ?閉めて」
「ん、分かった」
若井の声がドア越しに聞こえる。
「とりあえずなんて返せばいいかな」
「…返信しないのは絶対だめ」
ドアに頬をピッタリつけて若井に話しかける。若井がじゃあ居ないみたいな感じで返信しとくから、と言いながらも来そうだけどな…と呟く声が聞こえた。
多分、元貴なら来るだろう
そう思いながらも床に座り込む。
暫く若井とドア越しに話していると、ピンポンと言うインターホンの音が耳に入る。
元貴だ。絶対に。
「…涼ちゃん絶対にドア開けちゃだめだからね」
「え、いくの?」
うん、と若井が相槌を打つ。立ち上がる音が聞こえて、気をつけてねとすぐ声をかける。
そっから行っちゃったのか返答はなかった。
暫く待っていると、どけよ、という元貴が怒鳴る声と同時にドン、と言う鈍い音が家全体に走った。もしかして、若井が、
嘘だ、嘘だ…
たしかに若井と元貴の話し声は聞こえたけど、そんな言い合いをしている感じではなかった。それで急に元貴がどけよなんて、何があったの?
若井が無事じゃないなら、とドアを開けると、リビングの床で蹲った若井と、それをゴミを見るような目で見ている元貴が目に入った。
え….
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長くなった気がしたのでとりあえず切らせていただきます…!!
上手くいかなすぎてやばいです😇