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コメント
2件
非常に素晴らしいです🐙💗次の話も楽しみにしてます✌🏻
⚠️注意⚠️こちらはnmmnです。
本人様とは一切関係ありません。
含まれる要素:rbさんの身体に宇宙が浮き出る描写、本番なし
以下本文
朝。重い腰を上げてカーテンを開き、太陽光を浴びてどうにか身体を起こす。鏡の前で部屋着を脱ぎ、いつものシャツを手に取った。ふと前を向くと自分の肌に煌めいている宇宙が目に入る。思考を巡らせ昨晩担当した任務の代償だと察した。指でなぞり、皮膚とは違う硬い感触を確認し、ひとつ溜息をついてそれを隠すように袖を通した。
いつの日か気付いたこれはどうやら蛸へ変身する時に決まって浮き出るものらしく、先程も述べたように勝手に代償と呼ぶことにしている。一応医療班に検査もしてもらったが原因は不明、心身共に悪影響は無さそうなため特に気にする事もないと伝えられた。まぁ、俺自身が宇宙と融合してしまっているし、分からないことが多いのは仕方がない。
それより今日は恋人とのお家デート。デートと言っても、ただ家へ行きただ遊んで帰るようなものだが。正直同じ時間を過ごせるのならなんだって嬉しいから関係ない。時計を確認し、朝食を食べた後は溜め込んでいる鑑定業の資料でもまとめようかと寝室の扉を開いた。
「よう、いらっしゃい」
「お邪魔しまーす。あ、オトモさんもお迎えですか」
脚へ擦り寄って来る彼のオトモに指を差し出すと頭をぐりぐり押し付けてくるのが可愛らしい。彼の後を追いリビングの二人がけソファーへ腰を下ろすと、しばらくして左肩にずしりと重みがのしかかった。
「ちょっとー?重いんですけど」
「重くねーわ」
いや重いです、重くない、なんてやり取りを数回繰り返し、無言の時が流れる。液晶を見つめていた彼は不意に机へスマホを置き、再度頭を肩へ預ける。流石にずっと肩ばかり貸していると疲れるため体勢を変えたい。小柳くん、と名を呼び自身の膝を叩いて膝枕を促すと、思いの外素直に従ってくれた彼は丸い頭を横にする。
触り心地のいい髪の毛をさらりと指で梳かす。ふんわり香る彼の匂いが安心して、自然と笑みがこぼれた。
「相変わらずサラサラですね、髪」
「そうか?」
お前のが綺麗だろ、とこちらに伸びる手が髪を梳く。横を向いていた顔も今は俺をしっかりと捉えていて、真っ直ぐに目の奥を見つめられる。
そのまま数秒見つめ合う。髪に伸ばされた手は頬に添えられ、互いに引かれ合って触れるだけのキスを交わした。閉じていた目を開ければ熱のこもった瞳が目に入って、思わず顔を上げて距離を取る。
「…星導?」
「…なんですか?」
努めて普段通りの穏やかな声色が出せたと思う。線を引いたのが伝わったのか、はたまた俺の意図に気付いていないのか、三秒ほど俺を見つめた彼はいや、と声をこぼしてまた横を向いた。
彼の目には確実に欲情が滲んでいた。それが嬉しくもあり怖かった。
ずっと隠してきたこの代償も、肌を重ねるとなると難しい。今でも医療班の医者に向けられた眼差しが忘れられない。化け物を前にしたような怯えを含んだ目を。
彼に嫌われたくないのだ。そして彼のことだから、それを悟られないように気を使うというのもさせたくない…なんて。
これは俺の我儘だろうか。
また別日。彼とカゲツと対応した任務後。
残党が居ないことを確認し、各々が変身を解く。
「はぁーもーほんまに疲れた…途中タコに無茶振りされてガチ焦ったわ」
「え、いやだって俺普通に囲まれて大ピンチでしたからね?」
「小柳くんが助けてくれなかったせいなんで、文句なら小柳くんにどうぞ」
「いや俺に来んのエグい。前線張ってたんだからしょうがねぇだろ」
やんややんやと言い合っていたら随分と歩いていたらしい。僕ここで良いわ、と立ち止まるカゲツを二人で見送る。
「オオカミもタコもまたな!」
「お疲れさまでした〜」
「うい、おつ」
変身を解いたにも関わらず身体能力が高いカゲツはすぐに暗闇に溶けて見えなくなる。戦闘後の熱を冷ます夜風と一緒に、カゲツが居たことによって早めになっていたテンポがゆっくりいつものペースへ戻っていく。
「お前この後どうすんの」
「んー…じゃあ、家行ってもいいですか」
いいよ、と二つ返事で了承する彼。このまま家に帰っても良かったのだが、なんとなく気分で行きたくなってしまったからしょうがない。彼も彼で嬉しそうにしているしWinWinだろう。
任務後というのもあってシャワーを借り、すっかり綺麗になったところであの日と同じソファーへ座って寛ぐ。最近はこのアニメが気になっているだの、他愛もない話をして時間を過ごした。
ふと時計に目を向ければいい時間になっている。そのまま視線を動かし、ローテーブルに置いてあるココア入りのマグカップが空になっているのに気付き、そろそろ帰る支度でもしようかと考えながらそれを手に取ろうとした。寛がせてもらった代わりに後片付けくらいはしなければ。
「いいよ後で」
持ち上げようとしたところで、優しく手を包むようにしてやんわりと阻止される。驚いて視線を彼へ向けると細められた金色と目が合う。するりと手を絡ませてくると満足そうに鼻から抜けた笑い声が聞こえた。
マグカップからは手を離され、恋人繋ぎのまま引き寄せられる。胸にぽすんと寄りかかる体勢になり、彼の手がゆっくり腰へ回ろうとして…。
すかさず空いている手で強く掴む。
先程とは一転、顔を顰める彼を見てハッとする。慌てて手を離し耐えられなくなって目を逸らした。
「…ごめん、なさい」
俺の謝罪に彼は何も言ってこない。今のは流石にあからさま…だっただろうか。無意識に自分の腕を摩る。
ああ、こんな事になるのならいっそ大人しく家へ帰っていたら良かったのかも。
永久にも感じられる無言の時が続くも、それを破ったのは彼の方だった。
「…なぁ、やっぱり避けてるよな」
「お前、俺とそういう事したくねーの」
彼の虹彩が不安定に揺れ動くのがよく見えた。何も言えないでいると視界がぐるりと回り、押し倒されたことに遅れて気が付く。そのまま近付いた顔は首元へ沈み、リップ音を上げながら吸い付かれる。
「っ、こやなぎく…、やめ、」
「…」
焦る気持ちと甘い快感に邪魔をされて上手く力が入らない。押し返していた手を恋人繋ぎにされたせいで抵抗する術さえなくなってしまった。時折舌が這う感覚に変に意識が持っていかれて、段々と頭がぼーっとしてくる。
「ん…、ぅ、む…」
顔を上げたと思えば次は唇を奪われた。舌をねじ込まれ、深くまで口腔内を犯される。己の口から漏れ出す意味の無い声に顔が熱くなるのが分かった。
まずい、このまま流されてしまっては最悪の事態になる。頭ではそう分かっていても身体は言う事を聞いてくれない。もどかしさを感じていると彼の少し冷たい手が服の下へ伸びてくる。
「はぁ、やだ…ぃや、……」
「……これ…」
手を止めた彼の目線の先には腹部に煌めく銀河。
ああ、見られてしまった。だから嫌だと言ったのに。
彼もまた、恐怖を含んだ瞳を向けるのだろうか。化け物扱いをして俺を捨ててしまうのだろうか。次々浮かぶそんな思考に酷く悲しくなって、我慢できずに涙が溢れる。
「…こういうの、気持ち悪いですよね」
自嘲気味にそう言って顔を背けるように横に倒す。もう何も聞きたくない。いっそ意識が無くなってしまえば楽なのにと思う。
「…いや、綺麗。これ痛くないん?」
「……へ、」
「俺思いっ切り触ったけど」
心配そうに眉を寄せる彼に慌てて大丈夫、と返す。指先で優しく触れながら観察している彼を見下ろして、ああ、この人がそんなことをする訳なかったのだと安心してまた涙が伝う。それを温かい手で拭うものだから更に溢れてしまった。
「…んな泣いたら目腫れるぞ」
「っ、わかってます、けどぉ…」
ずっと怖かったと本音がこぼれる。嫌われてしまわないか不安だったこと、したくない訳ではないということ。最中頭を優しく撫でてくれる彼に想いが積もる。
体調に影響が無いことを確認できて安心したのか、そのままこちらへ倒れるものだから体重が乗って少し苦しい。ぐえ、と思わず出た声にひとしきり笑った彼は改めて向き直り、身体中に小さくキスを落として回る。
「じゃあ…してもいいってことだよな?」
俺を捉え、そして捕える満月のような瞳。今までとは違って、不安なんて微塵も感じなかった。甘い甘いその声に答えるのはまだ恥ずかしいから、今は首に手を回すことで許してくださいね。