雪解けの兆しが見える東北某所。
宮城は一人、仙台の街を見下ろす高台にいた。穏やかな風が、彼の前髪を揺らす。
「鳥取……? ふふ、あの子、ついに表に出てくるんだね。」
隣でリンゴをかじる青森が、面倒くさそうに口を開く。
「まあ、ワイら……じゃなくて俺ら(※東北は共通語)には関係ねぇけどな……ま、もし当たったら、叩き潰すだけだべ?」
「怖いこと言うねぇ。……でも、青森、ちょっと嬉しそうじゃん?」
「うっせ」
商店街のど真ん中、博多ラーメンの屋台。福岡がずずっと麺をすすりながら、何やらスマホを見てニヤついている。
「……へぇ〜? 鳥取が仮出場? へぇ〜〜〜〜? 面白いやん。やっぱあいつ、来るんやな。」
隣で焼酎を飲んでいた鹿児島が鼻を鳴らす。
「来るがよ。こげな小僧に負けとる場合じゃなか。」
「てかウチらも、そろそろ動かんと置いてかれるんちゃう?」
「……よかろ。鍛え直すかい、薩摩流でのォ。」
うどん屋の店先、香川が真剣な顔でうどんの湯切りをしている。
テレビで流れていた大会予選の話題を、高知がくつろぎながら聞いていた。
「鳥取やて? あの細っこい子が?」
「うん、でも……あの目は、本気やった。」
「はぁ〜ん。ええやん、熱いなァ〜。……ほな、ウチらもそろそろ準備する?」
「うどん打ってからな。」
「真剣やな、おい」
湘南の海岸。サーフボードを抱えた神奈川が、サングラス越しに空を見上げた。
「鳥取ってさ……あの昔の“砂の子”でしょ? マジで出てくんの?」
千葉はイヤホンを外して、頷く。
「まぁ、別に興味はないけど……東京の兄貴が珍しく反応してた。」
「へぇ〜……あの人が? やば。こっちも波に乗らないと、ダサいよね。」
海にボードを投げ込みながら、神奈川は呟いた。
「……ま、面白くなりそうじゃん?」
雪の大地。空気は澄んでいて、静寂が支配していた。
その中心に、ただ一人立つ少年——北海道。
「鳥取……?」
呟いたその声は、すぐに吹雪にかき消された。
だが、確かに彼は目を細め、遥か西の地を見つめていた。
「雪解けとともに、面白い風が吹くかもな。」
コメント
2件
まじで最高‼️です‼️福岡と一緒にラーメン食べてぇ、、