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スピンオフ リンゴ
もうひとりの物語
第8話の夜のお話
藤澤side
藤澤「ふふ……じゃあ、また明日ね、若井くん」
若井「元貴っ、なんで…………」
大森「…………」
元貴の手を引きながら、そのまま会社から出て駅の方へと大通りを歩く。
ふぅ……
あの若井って子……短気すぎでしょ
ちょっと揶揄うつもりが、凄い噛み付いてきてびっくり
まあ、俺もつい楽しくなっちゃってやりすぎた部分はあるけど……
でもそのせいで、どうやら俺が思ってたより大事になっちゃった
まあ、でも今の元貴のことは気になってたから元貴が俺に着いて来ることになって結果オーライ
さて……
とりあえず気になることを探ろっかな
藤澤「何年ぶりかな〜?元貴に涼ちゃんって呼ばれるのってさ」
大森「……」
藤澤「10年……12年くらい?懐かしいねぇ〜……って元貴聞いてる?」
会社を出てから元貴に問いかけても反応はない
まあ、無理もないよね……俺が脅して無理やり連れて来たし
あの若井って子と約束もしてたみたいだしね……
藤澤「ねーねーっ!元貴っ!なんか反応してくれなきゃ楽しくないじゃんっ」
大森「…………手」
藤澤「ん?て?てって何?」
大森「逃げたりしないから……手、離して」
藤澤「ん〜……じゃあ元貴のこと信じて離すね」
大森「……」
藤澤「え〜、言いたいこだけ言ったらまだ黙っちゃうの?僕、元貴と話したいんだけどなぁ〜?」
大森「……」
それでも反応なしか……
うーん
仕方ない……
藤澤「あーあー、唇は痛いしぃ、胸ぐら掴まれて何だか首も痛いなぁ〜……」
大森「っ!」
藤澤「あ、やっとこっち見た」
一瞬、俺と目が合ったと思ったら、元貴の目線が少し下がり、俺の唇を見ているのがわかる
大森「……お……俺は……悪くない……涼ちゃんが急に…………」
藤澤「なに?キスしたのが若井の前だったから、僕の唇噛むほどそんなに嫌だった?」
大森「っ?!ち、ちがっ」
元々、俺が元貴を誘っていたのは、今どうしてるのかを聞いてみたかったから。
廊下での若井の俺への敵意むき出しの目を見て、あの子の元貴への感情はその時に何となくわかった
でもあの時元貴は若井をどう思ってんのかはかわかんなくて、それを探るためにふたりを揶揄ったり元貴にキスしたけど……どうやらこの反応……やっぱり元貴も少なからず若井って子が気にはなってるんだ
それなら……
藤澤「やめときなよぉ、あんな見掛け倒しなやつなんてさ。あんなのと付き合ったら「また」元貴が捨てられるだけだよ?」
大森「っ、」
まあ
最初に俺が捨てたんだけどね
藤澤「それにあんなやつよりさ、ここで元貴と僕が出会ったことの方が何かの縁だと思うんだよねぇ……ね?元貴もそう思わない?」
大森「……涼ちゃん……何、言ってんの?」
藤澤「だって、僕たちなら既に色々知った仲だし……」
大森「……なんで」
藤澤「ん?」
大森「なんで……涼ちゃんは……俺を捨てたのに、そんなこと言うの?」
俺の目を見て言葉を発した元貴の表情は、12年前に別れを告げた時にしていた表情と似ていた
とても
悲しい顔
大森『は?別れようとか意味わかんない……責任……取るって言ったじゃんっ!』
藤澤『責任?そんなの知らないよ』
大森『……突然別れを切り出して無責任だよっ!』
藤澤『元貴が僕を好きになったんだから自業自得でしょ』
大森『自業自得だなんて……俺をコッチに引きずり込んだのは涼ちゃんじゃんっ!ちゃんと……ちゃんと責任取ってくんなきゃ……』
藤澤『責任取れだなんて重たすぎなんだよ』
大森『……………………もういい……帰る』
藤澤『じゃあね、元貴』
当時、今にも泣き出しそうな顔で俺の顔を見ながら怒って…………元貴は最後に諦めた……
あの頃俺は元貴が大好きだった
大好きだからこそ、元貴を手放そうと思った
理由は
コッチから普通へ戻ってほしかった
日が浅い分、まだ元貴を戻せると思っていた
それに……
元貴を戻すって理由をつけて俺は責任から逃れたかった
俺も若かった……
引きずり込んだ責任の重さに
耐えられなかった
今日元貴と会うまでは、あんな酷い別れ方をしたから、もう懲りてあれから普通に恋愛をして、もしかしたら結婚もしてるかも……なんて思っていた
でも
違った
会ってない年月の間、元貴がどんな恋愛をしてきたかはわからないけど、今はわかる。
若井が元貴を好いていて、元貴も若井に興味を持っている
多分、このままいけばふたりは付き合うだろう
付き合うなら付き合うでいい
俺が口出す事じゃない
でも
俺は
元貴にもう、捨てられてほしくない
でも
俺には悲しい顔しかさせてあげれない……
だから俺は
決めた
藤澤「それは…………秘密」
大森「は……はぁ?!!」
あの時、責任逃れをした罰を今から取ろう
藤澤「ふふ、そのうち話すよぉ」
嘘、話さないけどね
大森「またそうやって逃げんのかよっ!」
少し前の悲しい顔とは打って変わって怒りの表情
それでいい
今の俺には怒りや憎しみを持ってくれれはいい
藤澤「僕は逃げたりしないよ〜。それに今じゃないんだよねぇ、僕の話をするのは……だからまた今度」
大森「…………意味がわかんないし……今言えよ」
藤澤「大丈夫、心配しなくても近々…………あっ、きた」
元貴には曖昧な答えしか言わずに、のらりくらりとかわす
これ以上話するのはマズイかもって思っていたら、タイミング良く空車のタクシーが来た
大森「タクシー……」
藤澤「ほら、元貴乗って……元貴って今どこに住んでるの?」
大森「え?今は……〇〇区のあたり……」
先に元貴をタクシーに乗せ、俺は半分タクシーに身体を入れて運転手に話しかける
藤澤「運転手さんこの人を〇〇区方面へお願いします」
大森「え、は?」
戸惑う元貴を尻目に、俺は財布を取り出し運転手に1万円を渡した
藤澤「運転手さんこれで……おつりは彼に渡してください」
大森「ちょ、涼ちゃん、意味がわか」
元貴は俺ん家に連れて行かれると思っていたからびっくりしているんであろう
藤澤「明日また僕も元貴の会社に朝から行くからよろしくねぇ。8時に会社近くの〇〇店のロー〇ンで待ち合わせして一緒に行こうねっ。あっ、今日の怪我の埋め合わせにカフェラテ奢ってね。……じゃ、運転手さんドア閉めて出発してください」
大森「ま、待って、涼ちゃ」
バタンッ(タクシーの扉が閉まる音)
俺が身を引いたら扉が閉まり、元貴を乗せたタクシーは走って行った
藤澤「ふぅ……」
多分明日の朝、元貴は律儀に時間より前に来て本当にカフェラテを奢ってくれて、出した1万円も返してくるんだろうな……って想像する
藤澤「さーてっ、頑張りますかっ」
ぐっと背伸びをして、駅へと歩き出す
俺には時間は限られている
プロジェクトが終わるまでがタイムリミット
俺は元貴を
今度こそ幸せにする
END
─────
りんご(林檎)花言葉
「誘惑」「後悔」「最も美しい人へ」「選ばれた恋」
【あとがき】
本編最後で涼ちゃんの行動の真相に大森さんも気がついてはいましが、涼ちゃんは最初から考えて行動してたんです。
自分はもう一度元貴と恋愛は出来ないけど、元貴の幸せを願いたい、償いをしたい、そんな気持ちからのあんな一連の行動でした。
書いたのは私ですが、私の妄想はある程度キャラが頭の中で勝手に動く部分がありまして…………大人涼ちゃん……ちょっとは、本当に元貴とやり直せば今度は上手くいくって気持ちがあっただろうなぁ……って添削中に思っていました。
そう思わせてくれるくらい、今回の涼ちゃんはいいキャラだったなって思います。
これにて、ヘリオトロープ完結です。
ここまで付き合ってくださった皆さんありがとうございましたっ!!
また次のお話でもよろしくお願いいたしますっ。
2026.9.1 kurara
コメント
9件
藤澤さん…… 全て最初から大森さんを幸せにするために 悪者になってまで人を幸せにしようとするなんて…… 本当に、素晴らしいです。。そして、これを思いつくkuraraさんも素晴らしいです。 最高でした!ありがとうございます!!
とっても………楽しみにしていて良かったです 烏滸がましいですが、期待を裏切らない それどころか、藤澤さんの粋を極めた行動に 思わず微笑んでいました 若井さんが不甲斐なければ、自分が…とは少しも思っておらず 大森さんと若井さんの関係を見極めた上での行動だったんですね 惚れました(。・・。)

お、お、大人涼さま....! やはり良澤さんは....イケメソっ!! 好きな人の幸せを願って....悪澤になって....優しいお方です。 涼ちゃん視点のお話....良すぎて私逆立ちからブリッジへと....。(((←腰なくなりました✌️ このような作品が書けるkuraraさんの脳内に尊敬します。 私の語彙力とお花畑な脳内じゃあ無理ですね(^o^) 素敵なお話をありがとうございました🤟
#fjsw受け
ころろん
409
kurara
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