「”ヤツ”は、もはや怪物というべき強さだった
ヤツらのような者はこう呼ばれる…
その名も…通称『神殺し』、巫(シャーマン)」
(いよいよだ…)
2人はついにエレノイアにたどり着いた。
そのまま中心部へと進んでいく。
が…、
「…えらく静かだな。人気(ひとけ)も感じない」
「住民は既に避難しているからな」
「「!?」」
建物の陰から何者かが現れた。
「ヴィレイ・アシュラ…!」
「もう『ヴィレイさん』とは呼んでくれないんだな…ティエラ」
ティエラはダイヤモンド・ソードを錬成する。
ヴィレイはスッ…と静かに構えた。
素手で戦うつもりだ。
「覚悟しろ…お前ら」
「覚悟するのはアンタだ。世界のために死んでもらう…!」
先手に出たのはN・ヤスヒロ。
Rappid Readingで接近する。
が、
「遅い」
「!?」
瞬間移動したその瞬間、N・ヤスヒロの顔面に拳が飛んできた。
「グッ!?」
間髪入れずにティエラが斬りかかる。
それを何度かかわした後、ヴィレイはトラックの荷台から鉄パイプを1本取り出し、ティエラの攻撃を防いだ。
「甘い」
そう言うと、ヴィレイはティエラを文字通り、弾き飛ばした。
「QUEST…stage5!!」
「5!?」
「ああ…!QUESTにおける最終段階だ!」
N・ヤスヒロを青白いオーラが包む。
「Rappid Reading!!」
直後、N・ヤスヒロとヴィレイの拳が激しくぶつかり合った。
(これでやっと互角か…?いや、ヤスヒロのほうがわずかに押している…!)
N・ヤスヒロはヴィレイの周囲の様々な場所でRappid Readingを繰り返し、攻撃を続ける。
そして…
ドゴォン!!
「ガハッ!?」
「さっきのお返しだ…!」
ついにN・ヤスヒロにより、ヴィレイにダメージを与えることに成功した。
さっきのパンチの衝撃波で周りの高層ビルの窓がガタガタと震えた。
次の瞬間、ティエラは”構えた”。
あの技を使うつもりだ。
(短期決戦で終わらせる…!)
数秒後、ヴィレイは飛んできた拳をつかむ。
「ヤスヒロ?だったか…。確かにお前は強い。だが…、カウンターが来ることも考えておいたほうがいいぞ」
そう言うと、ヴィレイはN・ヤスヒロを投げ飛ばした。
N・ヤスヒロはそのままの勢いで、ある高層ビルのオフィスの中に、窓ガラスを破壊しながら突入した。
(今だッ…!!)
ティエラは”消えた”。
「そしてティエラ」
「!!」
ヴィレイは向き直る。
直後、ダイヤモンド・ソードと鉄パイプがぶつかり合い、ティエラはヴィレイの背後に立った。
ヴィレイはゆっくりと振り返る。
「確かにその技は強い。だが…、その技を教えたのが誰かってこと…まさか忘れたわけじゃないだろうな」
ティエラも振り返る。
「記憶喪失は…とっくに直っているはずだが…?」
ティエラは背筋がゾクッとするのを感じた。
ヴィレイの血のように紅い瞳が冷酷にティエラを見下ろす。
漆黒の髪が、その瞳に影を落とす。
ティエラの剣を持つ手は、震えていた。
「『阿修羅天斬』。アシュラ一族のサムライが考案した技だ」
「…知っているさ…!アンタにそう教えてもらった…!」
「通用するとでも思っていたのか?俺もナメられたもんだな」
「ああ…思ったさ。アンタに”ダメージは入る”ってな!」
「!?」
ティエラはヴィレイにつかみかかる。
次の瞬間、大量の光弾が3人の元に飛んできた。
ティエラはN・ヤスヒロのRappid Readingにより、ギリギリのところでかわす。
ドッオオオオオオオオオン…!
立ち込める爆煙を2人は見つめる。
爆煙が消え始める。
「Rappid Reading!」
消えかかる爆煙の中、N・ヤスヒロがヴィレイの背後をとる。
十数秒後、爆煙が消えた。
(!?ノーダメージだと!?)
「Cutting Edge!!」
「おい、ヤスヒロ!!待て!!」
パァンという音が…鳴らない。
「何…!?確かに今…」
「クソッ…!」
ティエラはヴィレイに斬りかかる。
再びダイヤモンド・ソードと鉄パイプがぶつかり合った。
次の瞬間、2人の真横に現れたN・ヤスヒロが、ヴィレイの頭部に足をめり込ませ、蹴っ飛ばした。
ヴィレイは窓ガラスを破壊しながら高層ビルの中に突入した。
(完全に忘れていた…!)
「いいか、ヤスヒロ。アシュラ一族には特殊能力のうち、超常的な特殊攻撃が効かない…!」
「じゃあ逆に何が効く?」
「常識の範囲内の”個体”による物理攻撃だけ…つまり、俺のダイヤモンド・ソードは効く」
「…厄介だ」
2人が話しているうちに、ヴィレイが高層ビルから出てきた。
「今のは結構効いたぞ…」
口元の血をヴィレイは拭う。
(1人なら間違いなく勝てないだろうが、2人で連携をとれば勝てない相手ではない…!)
「気を引き締めろよ…ヤスヒロ…!」
「分かっている…!」
今度はヴィレイのほうから向かってきた。
(来る!)
「Rappid Reading!」
「無駄だ!」
「どうかな!?」
N・ヤスヒロはヴィレイの背後をとる。
直後、ティエラは例の技で襲い掛かる。
鉄パイプと剣がぶつかり合った後、ティエラはN・ヤスヒロの腕をつかみ、上に飛ばす。
N・ヤスヒロは蹴り下ろすような体勢をとる。
ヴィレイは即座に上に向かって防御の体勢に入った。
しかし、次の瞬間、N・ヤスヒロはRappid Readingで消えた。
「!?グハッ!?」
気づいた時にはN・ヤスヒロが目の前に現れ、ヴィレイの腹部に正拳突きをお見舞いしていた。
すかさず、背後に回っていたティエラは、ヴィレイの腕をつかむと、見事な背負い投げを決めた。
ヴィレイが叩きつけられた場所の地面がえぐれる。
その直後、N・ヤスヒロはまだ横たわっているヴィレイを蹴っ飛ばす。
しかし、ヴィレイは蹴っ飛ばされる直前、ギリギリではあったが、ガードを決めていた。
数m飛んだ先でヴィレイは起き上がる。
辺りはどこまでも静寂に包まれていた。
「「ハァ…ハァ…」」
「ハァ…ハァ…」
3人の吐息だけがそこにある。
ヴィレイのすぐ背後には、禍々しい紫色の文様を描く『ハイドポール』がそびえたっていた。
「ここまでやるとは…お前も成長したな、ティエラ」
「………」
「だが、これで終わりではない」
「!?」
ヴィレイは全身に力を加える。
「教えといてやる…。我々アシュラ一族の圧倒的な力の真理…。それはこの『神通力(ジンツウリキ)』にある!」
すると次の瞬間、ヴィレイから桜色のオーラが噴き出した。
炎のようなオーラは辺り一面を桜色の光で照らす。
その衝撃波は、数m先にいるティエラとN・ヤスヒロの元にまで及んでいた。
2人は腕で衝撃波をガードする。
「な…なんだ…この力はッ…!?」
「知らんッ…!俺も初めて見る…!アシュラ一族…とんでもないヤツらだ…!」
数十秒後、衝撃波が止んだ。
オーラも無くなっている。
その代わりに、ヴィレイの瞳が桜色に変化していた。
アシュラ一族は、この状態を『トランス』と呼ぶ。
全てのアシュラ一族がたどり着けるとされている境地だ。
その力の源は『神通力』。アシュラ一族のみが宿すことを許された力。
”神に授かりし力”である。
ヴィレイは再び拳を自身の顔の前に出し、構えた。
「さあ……第2ラウンドだ!」
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