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「絵を、描いてくれませんか?」
おかしい。僕が絵を描いていたのは、小学校の間だけだったはずだ。それも、休み時間に学校で書いていただけ。そんな事をひとつ下の花本が、知っているはずがない。
「断る。なぜ、僕が絵を描かないといけないのか、それも分からない。」
そう。なぜ、初対面の人にそんなこと言われて、やめたものをもう一度しなきゃいけないのだ。意味がわからない。
「分かりました。では、少し、行きたいところがあるんです。」
「付き合ってくださいね?」
最悪だ。
「嫌だと言ったら?」
「無理やり連れていきますね!」
にこにこでそれを言われると、少し怖い。
「分かった。いつ行けばいい。」
「今からです。」
「分かった。」
今からか、じゃぁ家に帰って、ゆっくりして、って
「今から!?」
思わず大きな声を出してしまった。
「はい、そう言ったじゃないですか。」
そんな不思議そうな顔されても。
「そうは言っても、お昼ごはんもまだだぞ?」
「途中で食べればいいです。」
馬鹿なのか?ったく。
ここまで来たら仕方がない。
「近くのファミレスにでも寄ろう。奢ってやるからさっさと食べろ。」
「やったぁ!奢ってくれるんですかっ?」
そんな明らかに喜んでくれるのは嬉しいが、
「嘘は言わない。」
「ありがとうございますっ」
元気だな。素直に喜び、お礼を言う彼女は、子どものように無邪気な女の子だった。
「はら、さっさと行くぞ。」
「あ、先輩ちょっと待ってくださいっ」
「無理」
「え〜、私と先輩の中じゃないですか!」
「ばっっ!それは勘違いになるから、誤解を生むからやめろ。」
「嘘ですって!」
「ほんとか?」
そういって彼女の頬をつねる。
「いたっ!痛いですっ!痛いですから!やめてくださいぃ」
「ごめんごめん。さ、行くぞ。」