鳥取は砂を蹴り、兵庫へと突進した。
何度倒されても、何度打ちのめされても、立ち上がる。
(負けてたまるか……!)
砂丘での修行で得た「流れるような動き」を駆使し、兵庫の懐へ潜り込もうとする。だが——
「……悪くない。」
兵庫は鳥取の動きに合わせるように、最小限の動きでかわしていく。
(やっぱり……この人には、普通の攻撃は通用しない!)
鳥取はすぐに方向転換し、兵庫の横へ回り込もうとする。しかし——
スッ——!
兵庫の動きはすでに鳥取の先を読んでいた。鳥取が動いた瞬間、すでに兵庫の手刀が振り下ろされていた。
「しまっ——」
ドンッ!!
鋭い一撃が肩口に入り、鳥取の体が傾ぐ。バランスを崩し、そのまま砂の上に膝をついた。
「……また読まれた……!」
悔しさが込み上げる。確かに大阪との修行で成長はした。だが、兵庫の相手となるには、まだまだ力不足だった。
「どうした?終わりか?」
兵庫は冷たい目で問いかける。
「……まだ、終わりじゃないです!」
鳥取はすぐに立ち上がり、拳を握った。
(考えろ……!どうすれば、この人に攻撃を当てられる……!?)
兵庫の戦い方は、完全に「相手の動きを読む」ことに長けている。こちらが何かしようとする前に、すでに対処法を見つけている。
(なら……読めない攻撃をすれば……!?)
鳥取の脳裏に、一つの作戦が浮かんだ。
「……もう一度、お願いします。」
「……ほう?」
兵庫は少し興味深そうに鳥取を見つめる。
鳥取は拳を構え、ゆっくりと足を動かし始めた。
「また同じことをするつもりか?」
兵庫は淡々と言う。しかし、鳥取の狙いは違った。
(確かに、普通の動きでは読まれる。でも……!)
鳥取はわざと「直線的な動き」を見せる。何度も失敗した、兵庫にとっては見飽きたはずの攻撃の仕方。
「……また同じか。」
兵庫が冷静に対処しようとした、その瞬間——
バッ!!
鳥取は地面の砂を思い切り蹴り上げた!
「……っ!」
舞い上がる砂が兵庫の視界を一瞬遮る。
(今だ!!)
鳥取は迷わず兵庫の懐に飛び込み、拳を突き出した。
「——甘い。」
しかし——兵庫の拳が、鳥取の腹に深く突き刺さった。
ドゴッ!!
「ぐはっ……!」
鳥取は苦しげに口を開き、そのまま地面に崩れ落ちる。
「……っ、くそ……!」
砂を蹴り上げた作戦も、結局は読まれていた。
兵庫はため息をつき、腕を組んだ。
「悪くはない。だが、その程度の奇策では俺には勝てん。」
「くっ……!」
鳥取は悔しさで唇を噛む。
(何かが足りない……!俺には、まだ何かが……!)
拳を握りしめたその時、大阪の笑い声が響いた。
「おもろいなぁ、鳥取!でも、お前はまだ『あるもん』を使えてへんわ。」
「『あるもん』……?」
鳥取は息を切らしながら、大阪を見上げた。
「せや。お前にはな、まだ“武器”があるんやで?」
「“武器”……?」
大阪はニヤリと笑いながら、指をさした。
「お前の地元や。」
「——!」
鳥取の目が大きく見開かれる。
俺の……地元……!?
その言葉が、鳥取の中で何かを弾けさせた——!
〈続く〉
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