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向日葵達のカウントダウン
ゴールデンウィーク一日目
咲いている向日葵はまだ0本。
あと三本。
季節外れの蝉の声が響く朝。
「宿題済ませてからにしなさい!」
「うるせえ!!」
母親の制止を振り切って自転車にまたがり、目的地へと急ぐ。
ーーったく、まだ五月だっていうのに。
俺は暑さに耐えかねて天を仰ぐ。
目に映るのは限りなく広がる青空。
最近は異常気象だかなんだか知らんが、例年より気温がとてつもなく高い。
今日はそんな中迎えたゴールデンウィークのニ日目だ。
今年のゴールデンウィークは四日間。
ーー貴重な休みは大事に使わないとな。
俺はペダルを漕ぐ力を強める。
十分ほど自転車を走らせ、到着したのは家の庭の、小さな向日葵の花壇。
別に、植物が好きなわけでもないし、こんな暑い中自転車を漕ぐくらいなら、家でゲームをしていたい。
ーーきのうの塾の帰りここを通りかかったときに、目に留まったーー
ただそれだけの理由で今日も、
ーー明日もその次の日もーー
俺はきっとここに来る。
昨日来たときには、全部で三本の向日葵が小さなつぼみをつけていた。
今日はどうだろうか。
花壇に目を向ける。
そこには、太陽に向かって力強く咲く一輪の向日葵があった。
俺はたちまち、その向日葵に目を奪われた。
何秒、いや何分経っただろうか。
ふと視線を外すと、家の窓からこちらを見つめる一人の女の人がいることに気が付く。
目が合うと、急いでカーテンを閉めてしまった。
ーー庭を見つめる不審者だと思われたんじゃないか?それはヤバイな……。
ーー年齢は同じくらいか。
なぜか俺の中で、あの子への興味が湧いた。
ーー下心とかそういうんじゃなくて、もっとこう、純粋な……というかなんというか……よくわかんないけど。
あとニ本。
ゴールデンウィーク三日目
咲いている向日葵は二本に増えた。
あの子は出てこなかった。
あと一本。
ゴールデンウィーク四日目
咲いている向日葵は三本に増えた。
あの子が出てきた。
あと0本。
ーー向日葵、綺麗だね
ーーそうでしょう?私が植えて育ててきたの
ーーそうだったんだ
ーー俺、君に言いたい事があってさ
俺は、三本の向日葵を背にして、君に言葉を告げた。
向日葵の花言葉
一本 一目惚れ
三本 愛の告白