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バルーン 「ダーリン」
『言ちゃんは好きな人とかいないの?』
『…いるけど、絶対教えない』
幼い頃から何でも話してきたから、所謂恋バナもしたことがある。
大人になってからはしなくなったけど、好きな人を相手にすると口数が減る言の癖は変わっていない。
それを見る度に、いつも思ってしまう。
「誰よりも言をわかってるのは、僕だけなのに」
僕じゃ駄目なの、なんて口が裂けても言えない。
そんなことを言ったところで、心は奪えない。
それでも、いつかこの気持ちに気付いてくれるのを期待してしまう。
もし受け止めてくれたら、その時は僕の全部を貴方にあげよう。
そうして、僕も貴方からの愛を貰うんだ。
“恋人”としてのふたりで居られる日々は、どれだけ幸せだろう。
互いの心と身体に触れて、相手に夢中になって。
本当にそうなったら、僕は慌ててしまうかもしれないけど。
叶わないのは分かってる。
素晴らしいシナリオも、ひとりで考えていては意味が無い。実現しない。全部分かってるんだ。
でも現実は苦くて暗くて到底直視できたものではないから、今日も知らん振りを突き通す。
ねえ、言ちゃん。
僕は死ぬまでこの想いを隠し通すつもりだけど、もしかしたら溢れてしまうことがあるかもしれない。
そしたら、その時は聞こえない振りで笑ってよ。
それか、もし受け止めてくれると言うなら。
その日が来るのを待っているね、“ダーリン”。