「ねえ〜心中っ!しようよぉ〜…」
「いやです。」
なんて言っていたのに。君は私を置いて先に逝ってしまった。
目の前で肉が張り裂け、血が滴り、力なく倒れていく君の姿が今でも脳髄に張り付いて離れない。
どうか許して欲しい。愛する人を守れずに死なせてしまった私を。
「天国で一人ぼっちでは、寂しいだろう?」
君がいなくなった世界は永遠に夜のようだった。月の光も、星の光もなく、ただぼんやりと立ち止まったまま君の面影を眺めていた。
君の側は光に満ち溢れ、私を照らしてくれていた。まるで真昼のように。
今、君の元へ向かうとするよ。
高めの台の上に乗る。
ロープを天井にかける
頭が入る大きさの輪を作る
頭を入れる
「嗚呼、やっと…」
台から飛び降り、首に圧迫感を感じる。しかしそれは一瞬で終わり、ロープはちぎれてしまった。
しばらく思考が止まる。…また、失敗したのか。
「君が私の唯一の救いであるというのに、…どうして死なせてくれないのかい?」
君がいなくなってから、私は暗闇へ引き摺り込まれていっているというのに。
ふと顔を上げる。するとそこには愛してやまない人がいた。
「嗚呼、そこにいたのかい。…君の所へ連れて行ってくれないかい?」
『__________』
「…ははっ、非道いなぁ。でも、君らしいよ。」
暗闇へ飲み込まれそうな私を救ってくれる君はもういない。
手を伸ばしてももう届かない。
優しく頬を撫でる手の温もりはもう、無い。
そんなこと分かりきっている。でも願うことなら私から出て行った雫を拭って欲しい。
『あなたを忘れないよ』
「…嗚呼。私もさ。」
君がいた証を、忘れずにこの世に刻もう。
たとえ夜が明けなくとも。